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酢豚

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By: yoppy

「酢豚」という料理を語る際、
どうしても外せない要素というものがある。
それがパイナップルである。

「酢豚」というキーワードで検索をかけてみれば、
どういうわけか、半分くらいが
「どうして酢豚にパイナップルを入れるのか?」
という感じの記事になってしまう。
友人などと「酢豚」について話す場合、
「パイナップルを入れるのは、是か非か?」なんていうことを
深刻そうな顔で話してくることもあるが、
個人的な意見としては、
入っていてもいなくても構わないというのが、
昔からの自分のスタンスである。

実際に「酢豚」を食べてみると、
パイナップルが入っているか、いないかというのは、
ほぼ半々くらいである。
これは全くの自分の経験から来る体感なのだが、
世の中には暇な人がいて、
パイナップルの入っている「酢豚」が多いのか、
入っていない「酢豚」が多いのか、調べた人がおり、
それによれば、50%をわずかに上回る確率で、
入っている「酢豚」の方が多かった。
さらにパイナップルが入っている「酢豚」を
認めるという人は、全体の48%ほどで、
認めないという人は、39%であった。
あれ、残りの13%は?と思われるだろうが、
残り13%の人は、気にしたこともなかったという意見であった。
自分自身、48%の方なのか、13%の方なのか悩む所だが、
まあ、いずれにしても、
パイナップルが入っている「酢豚」を
美味しく食べることの出来る自分は、
39%の人よりかは、楽しい「酢豚」ライフを
送れているということだろう。

「酢豚」というのは、下味をつけた豚肉に衣をつけて油で揚げ、
これに甘酢あんを絡ませた料理である。
こう書くと、とんでもなくシンプルな料理のように思えてしまうが、
実際にはタケノコ、タマネギ、ピーマン、ニンジン、シイタケ、
パイナップル、ジャガイモなども具材として一緒に入っており、
中華料理店などで販売されている「酢豚」は、
かなりカラフルな仕上がりになっているものが多い。
「酢豚」というのは、日本でつけられた名前で、
恐らくは「豚肉の甘酢あんかけ」辺りから、
適当に文字を抜き出した結果が「酢豚」だったのだろう。
ちなみに古くから中国と繋がりのあった長崎では
「酢排骨(スーパイコ)」と呼ばれることもある。
「排骨」というのは、豚の肋肉、いわゆるスペアリブを指している。
つまり「酢豚」も「酢排骨」も、同じような意味なのだが、
長崎の「酢豚」は豚バラ肉を使っている、ということだろうか。
本場中国では「古老肉」とか、「糖醋肉」と呼ばれる。
この2つはどちらも下味をつけた豚肉に甘酢あんを絡めた料理だが、
「古老肉」は豚肉以外にも、野菜や果物を炒めたもの、
「糖醋肉」は豚肉のみか、具材の非常に少ないものを指している。
ここから考えてみるに「古老肉」こそが、
現在、世界中で食べられている「酢豚」の
元になっているようである。
英語圏では「酢豚」のことを、
「スウィート・アンド・サワー・ポーク」と呼ぶ。
直訳すれば、「甘酸っぱい豚」だろうか。
ネーミングセンスの本質的な所は、
日本人も西洋人も、それほど変わらないようである。

この「酢豚」が、いつごろ作られたか?ということについては、
ほとんど情報がなかった。
ただ「糖醋肉」が、昔からの伝統的な肉料理であるのに対し、
「古老肉」は、すでに本来のものとは
かけ離れた料理になってしまっているらしい。
衣をつけて油で揚げた豚肉に、甘酢あんを絡める「糖醋肉」は、
かなり古い時代から作ることが出来ただろうが、
タマネギやピーマン、パイナップルなどは
中国にとっても比較的新しい野菜・果物であるので、
これらを使った「古老肉」が作られたのは、
西洋人達によって、これらの新野菜が
中国にもたらされてからのことだろう。
特にパイナップルを入れるようになったのは、
当時、ヨーロッパから入ってきたばかりの
パイナップルを入れることにより、
西洋人たちに「酢豚」をハイカラな食べ物と、
印象づけるためだったという。
実際に「酢豚」にパイナップルを入れてみると、
豚肉との相性も良く、酢の酸味との相乗効果で
味に深みも出たことから、定番化したという。
これらのことを考えてみると、
本場中国で、「酢豚」が現在のような形になったのは、
清朝の時代のことのようである。

この「酢豚」が、いつ日本に入ってきたのかについては、
はっきりとしたことは分かっていない。
恐らくは明治維新以後、開国した後に各国の料理店が
日本へと入ってきた際に、
中華料理店のメニューの1つとして持ち込まれたのだろうが、
江戸時代、中国との貿易を続けていた長崎で、
「酢排骨」という独特の名前が用いられていることを考えると、
長崎では、江戸時代中に「酢豚」が持ち込まれた可能性も高い。
ただ面白いことに、日本の中華料理店の中にも、
「日本で一番最初にパイナップル入りの「酢豚」を作ったのは、
 うちの店である」ということを、主張している店がある。
「酢豚」にパイナップルを入れ始めたのは、
先に書いたように本場中国でのことなので、
日本での「初めて」には、それほど大きな意味はないのだが、
それを強く主張しているというところに、
「酢豚」とパイナップルのただならぬ関係が伺える。

さて、この「酢豚」だが、
自分の記憶が確かならば、小学校の給食には度々登場していたが、
逆に家庭の献立としては、全く出てくることはなかった。
だから自分がこれまでに食べた「酢豚」の半分ほどが、
小学生時代の給食によって、口にしたものである。
どうしてうちの母親が、「酢豚」を作らなかったのかだが、
恐らくは、一度油で揚げた豚肉を、
さらに野菜と一緒に炒めて甘酢と絡めるという、
いわば二度手間ともいえる調理行程を
嫌ったのではないだろうか?
油で揚げるというのも、炒めるというのも、
メニューによっては、それだけで1品を仕上げることが出来る。
揚げて、炒めても「酢豚」なら1品にしかならないが、
例えば、唐揚げと野菜炒めという風にすれば、
同じような行程で、メニューを1つ多く作ることが出来る。
効率がいいことを好むというか、
手抜きを好む所のあったうちの母親にとって、
手間のかかる「酢豚」は、好ましくない料理だったに違いない。

そういう経緯もあって、自分の「酢豚」観は
小学生時代の給食による所が大きい。
そして給食の「酢豚」にはパイナップルが入っていた。

なんのことはない。
自分が「酢豚の中のパイナップルがOK」なのは、
学校給食による刷り込みの結果だったわけである。

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