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みょうがの宿

投稿日:

By: yoppy

「夏野菜」とよばれるものがある。
夏に採れる野菜のことである。
一般的に知られているものとしては、トマトやキュウリナスなどが
それにあたるわけだが、自分がもっとも好きな「夏野菜」は
ズバリ言って「ミョウガ」である。

正直、自分自身でさえ、マニアックだなぁと思うことがある。
「通」好みと言ってしまえばそれまでだが、実際、
「ミョウガ」が一番好きなんていう人間は、
やはり少ないのではないだろうか?
この「ミョウガ」好み、自分が子供のころからの話であり、
自分が「ミョウガ」に興味を持つようになったのには、
あるきっかけがあった。

そのきっかけというのが、TVアニメ「まんが日本むかしばなし」である。

この「むかしばなし」の中に、「みょうがの宿」という話がある。
ストーリーはザッとこんな感じだ。

昔、安芸の宮島の厳島神社へと続く街道筋で、
とても欲深い夫婦が、一件の宿屋を営んでいた。
この夫婦の強欲ぶりは知れ渡っており、
泊まり客もほとんどいない有様だった。

そんな宿屋に、景気の良さそうなお客がやって来た。
強欲な夫婦は、何とかこの客からカネを搾り取ろうとあれこれ策を巡らし、
この客に「食べると物忘れをする」といわれる
「ミョウガ」をタップリと食べさせて、財布を忘れさせようとする。
ちょうど季節は夏。
「ミョウガ」は裏の畑の隅にいくらでも生えており、
元手は全くかからない。
亭主は女中と共にたっぷりの「ミョウガ」を使い、
「ミョウガの串焼き」「ミョウガの浅漬け」「ミョウガの三杯酢」
「ミョウガの煮付け」「ミョウガのみそ汁」「ミョウガごはん」と、
「ミョウガの重ね食い」と名付けた「ミョウガ」料理のフルコースを用意する。

夕食、そして次の日の朝食と、この「ミョウガの重ね食い」を
腹一杯食べさせられた客は、何やらフワフワとした足取りで旅立っていった。

亭主は客が泊まっていた部屋の中に忘れ物が無いかと探しまわるが、
結局、客は何も忘れ物はしていなかった。
それどころか気がついてみれば、財布に気を取られるあまり
宿賃をもらい忘れてしまっていた。

「ミョウガ」を食べて、忘れることは忘れたが、
財布ではなく、宿賃を払うのを忘れてしまったというオチである。

ただ、この一件があった後、客が「ミョウガ」料理のウマさだけは忘れず、
あちこちでウマかった、ウマかったと吹聴して回ったおかげで、
それからこの宿は「みょうがの宿」と呼ばれ、たいそう繁盛したらしい。

主人公である強欲な夫婦が、コミカルに描かれていて、
思わず笑ってしまう楽しい一編である。

こうやってストーリーを書き出してみれば、
どうして自分が「ミョウガ」に関心を持ったかが一発でわかる。
この作中に登場した「ミョウガ」料理のフルコース、
「ミョウガの重ね食い」が本当にウマそうだったからである。

この「みょうがの宿」を見て、
自分も「ミョウガ」を食べてみたいと母親に頼んでみた。
幸いというかなんというか、「ミョウガ」は婆さんの畑の隅にも
たくさん生えていた。
さすがに「ミョウガの重ね食い」は無理だったが、
母親は息子の要望に応えるべく、
畑からたくさんの「ミョウガ」をとってきて、
これを天ぷらにして食べさせてくれた。
作中には出てこなかった「ミョウガの天ぷら」である。

これがめちゃくちゃにウマかった。
独特の爽やかな芳香に、ちょっとしたほろ苦さ。
こんなにうまい天ぷらがこの世の中にあるのかと思ったくらいである。
当然、自分は「ミョウガ」が大好物ということになったわけである。

さて、この「みょうがの宿」の昔話、
この「まんが日本むかしばなし」版では、
安芸の宮島への道中のどこかの宿場町が舞台ということになっているのだが、
そこら辺、細かいことについては全く言及されていない。
恐らくは、どこか山陽道沿い、広島県付近の話ではないかと思われる。

調べてみた所、落語にもストーリーの良く似通った
「茗荷宿」という演目があった。
客に「ミョウガ」料理をたらふく食わせ、財布を忘れさせようとするなど
まさに「みょうがの宿」そのものといっていいストーリー展開である。
オチも、宿賃を払い忘れて行ってしまうと、全く同じである。
こちらの落語版では、舞台が東海道の神奈川になっていたり、
あるいは江戸から京までの間の、どこかの宿場町になっていたりする。
こちらは東海地方から関東にかけてのどこか、と考えて良さそうだ。

「ミョウガ」自体、本州から九州にかけて分布しており、
「みょうがの宿」の舞台となっている江戸時代では
ほぼ日本中で食べられていたと考えていいだろう。
だとすれば、広島、神奈川、東海・関東だけに留まらず、
日本中に似たような昔話があったとしてもおかしくない。
ただ、調べてみても「みょうがの宿」で出てきた
「ミョウガの重ね食い」のような「ミョウガ」尽くしの料理は、
どうやら一般的なものではないようだ。
世間一般では、「ミョウガ」はあくまでも
「薬味」として用いられるのが第一で、
それ自体を、1つの食材としてバリバリ食べるというのは少ない。
何故だろうか?

ここからは推測になるのだが、やはりこれは「ミョウガ」の値段が
大きく関わってきているのではないか。
「みょうがの宿」の中では、「ミョウガ」は畑の隅にいくらでも生えており、
「ミョウガ」尽くしの「重ね食い」を作ったとしても
全く元手はかからなかったわけだが、
最近では「ミョウガ」を買おうとすると、結構良い値段である。
小さなパックに2〜3個入っていて、100〜200円ほどの値段だ。
薬味としてこれを用いるのならともかく、
「重ね食い」のように、丸のままの「ミョウガ」をゴロゴロ入れて
「ミョウガ」尽くしの料理を作ろうとすれば、
それこそ、どれだけ原材料費が膨れ上がるかわからない。
なんといっても「重ね食い」の「ミョウガご飯」にすら
1粒の「ミョウガ」をそのまま炊き込んでいるのだ。
正直、食べにくいだろうと思うし、刻んで混ぜ込む方が絶対にウマいはずだ。
(ちなみに自分の作る「ミョウガご飯」は、
 刻んだ「ミョウガ」を炊きたてのご飯に混ぜて作る)
しかし、そこはアニメスタッフの画力の賜物なのか
ゴロゴロと粒のままの「ミョウガご飯」は非常にウマそうに見える。
まさに映像のマジックだ。

いつか我が家の裏庭で、食べ切れないほどの量の
「ミョウガ」が採れるようになれば、
「ミョウガの重ね食い」も、1度くらいは再現してみたいものである。

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