先日、友人から
「会社の倉庫を整理するので、手伝ってくれ」
と、頼まれた。
情報管理とか、社外秘的なものがあったりとかしないのか、
少々気になったが、「焼き肉を奢る」という言葉に釣られて、
フラフラと手伝いに出かけた。
手伝ってくれと連絡が来たのが、お昼ごろで、
友人の会社に行ってみると、
倉庫から持ち出された段ボールが、
フロア内に所狭しと並べられている。
どうやら、休日の朝から取りかかったが、思うように捗らず、
このままでは片付きそうにない、ということで、
自分に連絡を入れて来たようである。
どうやら友人の会社では、普段、邪魔なものを全て
倉庫の中に押し込んで来たらしいが、
ついに倉庫のキャパシティを越えたため、
整理しなければならなくなったらしい。
辺りには、様々な書類の綴りが散乱しており、
それらが散々に入り乱れて大変な状況だ。
これらを整理して、改めて段ボール箱の中に詰め直し、
それを保管するか、廃棄するかに選り分ける。
まあ、その辺の細かいことは
友人が判断しないといけないことなのだが、
こちらは友人が詰め直した段ボール箱を台車で運んだり、
さらに倉庫の中の棚を整理したりと、
忙しく立ち働くこととなった。
友人の会社の人間は、友人を含めてズボラな人間が多いのか、
相当に古いものが次々に発掘されてくる。
ひどいものになると、昭和45年ごろの帳面が出てきたりした。
自分の生まれる前の時代の物だ。
半世紀近く前の帳面である。
それが変わらず棚の隅に転がっていたということは、
半世紀近く、その一画には誰も手を付けなかったということだろうか?
そんなものが転がっている倉庫の中を整理していると、
こちらも年代の感覚が麻痺し始めてくる。
帳面でも書類でも、
「平成」と日付の入っているものを見つけても、
ああ、これは新しいな、としか思わなくなった。
「平成」と日付が入っていても、それが一桁ならば、
もう20年も前のことになるのだが、
感覚的にいえば、「平成」というのは
つい最近のことと、思ってしまう。
そんな倉庫の中から、1つの箱が発掘された。
箱には、地元の酒造会社が作っている日本酒の銘が印刷されている。
友人は気軽に「これ、やるよ」と、渡してくれた。
友人は普段、酒を飲まないらしい。
正直にいえば、自分も飲まないのだが、
せっかくなので、頂くことにした。
中身の確認、ということで箱から中身を取り出してみると、
銀色の保温紙に包まれた一升瓶が出てきた。
随分と厳重に包装されている。
ひょっとしたら、かなりいい酒ではないのか?
しかし残念なことに、普段、日本酒も含め
酒類をほとんど飲まないので、その善し悪しを図ることが出来ない。
箱を見ると、製造年月日は2014年となっている。
2年前である。
日本酒に消費期限、賞味期限があるのかは知らないが、
半世紀前の帳面を見つけた後では、
まるで昨日造った酒の様に感じてしまう。
ただ、改めて一升瓶を手に持ってみると、かなりの量である。
一升というのは、ℓ表示に直せば1.8ℓになる。
スポーツ飲料や炭酸飲料、お茶などならば、
1.8ℓくらいはあっという間に飲み切ってしまうことが出来るが、
これはアルコールである。
自分がたまに飲むのは、地区の清掃作業の際に配られる
350mlのビールが精々で、これを1本飲んだけで
充分な酔っぱらい状態になる。
ビールのアルコール度数は、精々が4~5度程度である。
手の中にある一升瓶のラベルを見てみると、
「アルコール度数 19度」と書いてある。
いつも(年3~4回)飲んでいるものの、4~5倍である。
つまり、ビール感覚で350mlほど飲むと、
実際には、350ml缶4~5本分のアルコールを
摂取することになる。
これでは、酩酊必至である。
さらにラベルを良く見てみると、
「10度前後の冷暗所にて保存してください」とある。
友人の会社の倉庫は、光こそ入ってこないものの、
エアコンなどは入っておらず、この2年間は
全くの常温保存だったものと思われる。
条件的に考えてみれば、品質が変貌していると考えるのが普通だが、
もともと日本酒を全くといっていいほど飲まないので、
元々の品質すら、どういうものなのかわからない。
実際、家に帰って栓を抜き、ぐい飲みで飲んでみたのだが、
特におかしな味や臭いはなかったので、
傷んではいないようである。
だが、過去に飲んだ日本酒と、どこがどう違うか?と聞かれても、
ここがこう違う、といえるほどの経験もない。
ただ、19度というアルコール度数のせいか、
他の酒に比べてみても、やはり酔いの回りは早いようである。
さて、このような事情があって、現在、
我が家の冷蔵庫の中には、一升瓶が1本、横たわっている。
ラベルを良く読んでみると、その中に
「冷やしてお飲み下さい」という一文があった。
なるほど、そういうことであれば、これから暑くなる
この季節向きの日本酒であるといえる。
「晩酌」というものとは、全く縁のない生活をして来たのだが、
さすがにこれだけの日本酒を消費するには、
毎日少しずつでも、飲み続けるしかない。
そんなわけで、友人にこの酒を貰ってからは、
毎日、夜に1杯ずつ、冷えた日本酒を飲む生活を送っている。
ただ、問題が1つ。
もともと酒を飲み慣れていない所に、
さらに飲み慣れていない日本酒である。
これだけを、ただガブガブと飲み続けられるほど、
自分は酒好きなわけではない。
ずっと、アルコール度数の低いビールを飲むときでさえ、
なんらかの「おつまみ」を用意して、
それを食べながら飲んでいるのである。
ビールより強い日本酒を飲む以上、
「おつまみ」を用意するのは絶対条件といっていい。
そんなわけで、コンビニやスーパーに行くたびに、
「おつまみ」を物色する日々が続いているのだが、
ビールと同じようなものを選んでも、イマイチしっくりと来ない。
ビールの場合は、フライものなどの揚げ物や、
柿ピーなどでもどうにかなるのだが、
どうもこれらと日本酒はしっくりこない。
イメージでいえば、やはり日本酒には海産物ということになるのだが、
そうそう毎日、魚料理を作るわけにもいかない。
そういうことになると、必然的に
缶詰やスルメ、いかくんせい、なんてものに行きつくのだが、
さすがに毎回こればかりでは、飽きもくる。
そんなわけで、これからしばらくは、
スーパーやコンビニで、日本酒に合うかどうかという視点で
商品を物色する日々が続きそうである。