雑学、雑感、切れ味鋭く、思いのままに。

Falx blog 2

植物 食べ物

山椒

投稿日:

うちの庭の、非常に目立ちにくい所に、
一本の山椒が生えている。

「植えている」ではなく、「生えている」とした所に、
この木の出自のいい加減さがわかるだろう。
目的を持って植えられたものではなく、
いつの間にやら庭に生えていたという出自である。
かつて、庭に山椒の木が植わっていたことがあるので、
その木が切られた後に、残っていた根かなにかから、
芽が出たのかもしれない。

玄関脇の南天の木の下辺りに、
ひょろっと細い一本の枝が伸び、
その細い枝は、一丁前に鋭い棘で覆われている。
樹高50cmほどで、全く枝分かれしておらず、
葉が落ちてしまっているこの時期では、
枯れた木の枝が、
地面に刺さっているようにしか見えない。
もうちょっと大きくなってくれれば、
若葉を料理に使ったり……とも考えられるのだが、
いかんせん今のままでは、木が小さすぎて、
気軽に葉を毟れない状態である。
引っこ抜かずにおいておけば、
その内に大きく成長してくれるだろうと
考えていたのだが、それから何年たっても
大きくなる気配がない。
いまいち陽当たりが悪く、
大きな石の脇辺りから生えているので、
あまり成長することが出来ないようである。
なら、もっといい場所に移してやれば……と、
思われそうだが、調べてみた所、
山椒の木は根付きが弱く、
下手に移植すれば、あっという間に枯れてしまうという。
そういうわけで、今更、切る気にもなれず、
庭の片隅で、放っておかれているのである。

山椒は、ミカン科サンショウ属に属する、落葉低木だ。
うちのものは例外としても、
一般的には3mほどの高さに成長し、
大きいものだと5mに達することもある。
その一番の特徴は、全体を覆う鋭い棘で、
知らずに触ったりすると、思わぬケガをすることもある。
雌雄異株の植物で、実がつくのは雌株の方である。
すくなくとも、山椒の実の収穫を目的として
これを栽培する場合は、雌株は当然として、
雄株が近くにないことには上手く結実してくれない。
4~5月にかけて花が咲き、その後、結実する。
雄花の場合は、この時点でお役御免となるので、
「花山椒」として、食用にされる。
やがて、緑色の実が房状に結実する。
これはまだ熟していない若い実だが、
佃煮を作る場合は、この状態のものを使う。
そのまま実を収穫せずに放っておくと、
9~10月ごろには赤く熟し、実が割れて、
中の黒い種子が姿を現す。
この割れた皮の方が、
我々が普段使っている「粉山椒」の原料となる。

我々が一般に「山椒」と呼んでいるものは、
日本を原産とする、日本の固有種で、
日本の他には、朝鮮半島の南部にしか分布していない。
中国の四川料理では、よく「山椒」を使っているが、
あれは日本の「山椒」ではなく、
「花椒」と呼ばれる別の種で、
正式には「カホクサンショウ」という名前である。
日本ではこの「山椒」を、
かなり古い時代から香辛料として使用しており、
縄文時代の遺跡から出土した土器からも、
山椒が見つかっている。
まさに日本における、最古の香辛料ともいえるだろう。

山の中などに、自生していることもあるが、
現在、市場に流通しているもののほとんどは、
栽培されたものである。
ホームセンターなどに行けば、
山椒の苗木を販売していることもあるが、
これを上手く育てるのは難しい。
というのも、山椒は根付きが浅く、
枯れてしまいやすいからである。
(先に書いたように、
 移植などすれば、高確率で枯れてしまう)
さらにアゲハチョウなどの食害に遭いやすく、
気がつけば、アゲハチョウの幼虫が
若葉をムシャムシャと食べていたりする。
ある程度大きな木であれば、
少し食べられても葉は残るが、
うちの庭に生えているような小さな木や、
植え付けたばかりの若い木だと、
あっという間に丸裸にされてしまうことになる。
(うちでも何度かやられた)
そうなってしまっては、もう後の祭りなので、
家庭で育てる場合には、
卵などを植え付けられないように、
細心の注意を払う必要がある。
もちろん、大きく成長した木であっても、
何匹もの幼虫に葉を食い荒らされれば、
かなり酷い状態にされてしまう。
そんなことにならないためにも、
こまめに木の状態をチェックしておく必要がある。

雄株の場合は、花と葉しか食べることは出来ないが、
雌株の場合は、実を収穫することが出来る。
(もちろん、雌株から花を穫ってしまうと、
 実が出来ないので、注意すること)
若い実は佃煮にすることが多いが、
うちの親がやっていた所を見る限り、
時間をかけてしっかり煮込むよりも、
あっさりと炊き上げた方が、上手くいくようである。
葉は「木の芽」と呼ばれるように、
その若葉を、料理の香り付けに使うのが普通だが、
別段、若い間だけでなく、
それほど固さが気にならないうちは、使えるようである。
(うちでは、葉があるうちは使っていた)

さて、うちの庭に生えている、小枝のような山椒だが、
ここ数年は、全く成長する気配を見せていない。
春先になれば若葉がつき、
少しでも成長してくれればと思って、
たまに水をやるのだが、これが全く大きくならない。
若葉の数も少ないので、とって料理に使うのに忍びず、
そのまま放置しているうちに、
いつのまにやらアゲハチョウの幼虫に、
きれいに葉を食べられてしまう、ということを
繰り返している。

さすがにもう、この木が大きくなって、
山椒の実がワッサワッサという望みは捨てたが、
せめて春先に、罪悪感無く、
1~2枚の若葉を収穫できる程度には、
大きくなってもらいたいものである。

Related Articles:

にほんブログ村 その他生活ブログ 雑学・豆知識へ
にほんブログ村

スポンサーリンク
スポンサーリンク

-植物, 食べ物

Copyright© Falx blog 2 , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.