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食べ物

山形の「だし」

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今年の夏は、酷暑である。

そんな一文を書いてみて、これがちょっと違っていることに気がついた。
正しくは、今年の夏も、酷暑である、だ。
ここの所、夏の暑さは留まる所を知らない。
ニュースを見れば、やれ、どこそこで最高気温○○度を記録したとか、
今日は何人が熱中症で病院に運ばれたとかのニュースばかりである。

自分の住んでいる兵庫県たつの市は、
特に猛暑の地というわけでもないはずであるが、
ここの所、夏の気温上昇は留まる所を知らないようだ。
インターネット天気予報の週間天気予報を見ていて、
予想最高気温の欄に38度と表示されていたときの驚きは、
今でも忘れられない。
いよいよたつの市でも、最高気温38度などという予想が
出る時代になったのである。
自分の部屋などは熱がこもりやすいのか、
外気温に比べて、気温が高くなる傾向にある。
さらに壁の中から天井裏に至るまで、断熱材が設置されているため、
ひとたび室内気温が上がってしまったら、
後は何をしてもその温度が下がることが無い。
つまり、部屋の外はすでに30度以下にまで
気温が下がっているにも関わらず、自分の部屋の中だけは
33~34度を維持しているなんていうことも起こっているわけだ。
こんな事情もあり、夏の暑い間だけは
自分も部屋を変えて、少しでも涼しい部屋で生活するようにしている。

そういう生活をしていると、途端に影響してくるのが食欲だ。
夏になれば食欲はみるみる減退し、食べる量もガクンと落ちることになる。
少しでも食べやすいものを探したりして対策をとってはいるが、
食欲が減退してしまえば、口に入れられるのは
飲み物ばかりなどということになり、
ここの所は、いかに栄養のあるものを「飲む」か?ということに
腐心するばかりである。

もちろん、こんな状況を打破するために、
色々と試してみることはある。
気温がグッと下がった深夜ごろに食事をしてみたり、
冷やし蕎麦や冷やしうどん、はては冷や汁などの
冷たい食事を取り入れてみたりとやってはみるのだが、
結局の所、それらの方法でも落ちた食欲を
どうにかすることは出来ないわけである。
ただ、そんな食欲が無いときでも食べることの出来るものは無いか?
ということに関しては、わりと日常的にアンテナを張っており、
それに引っかかってきたものについては、
とりあえず試してみるということを繰り返している。
今回、そんな自分のアンテナに、ある料理が引っかかってきた。
それが、今回のテーマである、山形の「だし」である。

実は、山形に「だし」という名前の料理があることは、
以前から知っていた。
その形状についても、細かく刻んだ野菜が、なにかネバネバしたもので
包まれているものであると、理解はしていた。
今回、この山形の「だし」に注目するきっかけになったのは、
ある動画サイトで、この山形の「だし」の調理動画を見たからである。
その調理動画の中で紹介されていた調理方法が
正式なものであるかどうかはわからなかったが、
その動画の中で紹介されていた調理方法は、
ただ材料を細かく刻んで混ぜ合わせるというだけであった。
出来上がった山形の「だし」は、少々刻まれた野菜が大振りなものの
それまでに写真などで目にした山形の「だし」によく似ていた。
動画の中では、全体的に粘り気のあるソレを丼飯にぶっかけ、
ガツガツとかき込むようにして食べていた。
動画の紹介を聞くと、どうやら冷蔵庫の中などに入れておいて、
よく冷やして食べるものらしい。

このネバネバとした刻まれた野菜群は、珍しく自分の食欲を刺激した。
正直、かなりウマそうに見えた。
その動画を見ている限りでは、味付けは塩昆布と市販の麺つゆで
行なわれていたので味わいはそれなりに想像がつく。
要は、刻まれた野菜と塩昆布と麺つゆの混ざった味である。
これならどう頑張っても、そうマズくなりそうは無い。

ただ、そうはいっても、一度、
本物の山形の「だし」を食べてみたいと思った。
そう考えた自分は、あちこちのスーパーを回り、
山形の「だし」を売っていないか探して回った。
いざ、探してみてわかったのだが、ここら辺りのスーパーでは
ほとんど山形の「だし」を扱っていない。
あちこち探しまわって、山形の「だし」を置いていたのは、
たった1店だけである。
しかもその店でも、半額値引きシールを貼られた「おつとめ品」として
販売されており、正直、あまり人気のない商品の様である。
ともあれ、ちゃんとした山形の「だし」が食べられるチャンスである。
自分はすぐさま、その半額シールの貼られた山形の「だし」を購入し、
家に持ち帰ってこれを食べてみた。

結果から言ってしまえば、まさにそれは自分が想像した通りの味であった。
市販品なので、味付けには化学調味料なども使われているが、
それは自分が山形の「だし」という食品に抱いていた、
イメージそのままの味であった。
多分これは、自分で野菜を刻んで作ってみても、
ほぼ同じような味に仕上げることは可能であろう。
自分は試しに、この山形の「だし」を作ってみる気になった。

さて、ここでこの山形の「だし」という食品について、
軽く調べてみた。

名前に「山形の」と入っていることからもわかる通り、
この料理は、山形県の郷土料理である。
縦に長い山形県の中でも、真ん中辺りに位置する村山地方の料理らしい。
説明によれば、夏野菜と香味野菜を細かく刻み、
醤油などで和えたものとある。
飯や豆腐などにかけて食べるのが一般的らしい。
使われる夏野菜は主にナスとキュウリ
香味野菜は紫蘇ミョウガ、ネギ、生姜などが使われるようだ。
変わった所では、ニンジンやピーマンなどが使われることもあり、
要は、余っている野菜ならば何でも刻んで混ぜてしまえ、ということらしい。
茹でたオクラや昆布などを混ぜ込んで、粘りを出すこともある。
自分がこれまでに目にした山形の「だし」には、
すべからく粘りがあったので、これらの材料が使われていたのだろう。
その他にもワサビや唐辛子を混ぜ込んで辛みを出すこともあり、
作る家庭によって、その味わいは千差万別の様である。
これ、といった定番のない料理なのかも知れない。

さて、ここまでつらつらと書き続けてきたわけだが、
この山形の「だし」という名前について、気になっている人もいるだろう。
「山形の」というのは当然、地名を表しているわけで、
これを取り除いた純粋な料理名は「だし」ということになる。
ある意味では、ずいぶんと聞き覚えのある名前だろう。
和食において「だし」といえば、かつお節や昆布を煮出してとる
「出汁」ということになるのだが、この刻んだ野菜を混ぜた料理には
何故、この「だし」という名前がついているのだろうか?
実は、この「だし」という名前の由来はハッキリしていない。
いくつかの説がある。
その中の1つに、ご飯や冷や奴などの薬味として
様々な料理の味を引き立てることから「昆布だし」「カツオだし」の
意味合いと相まって「だし」と呼ばれるようになった、というものがある。
「だし」は「出汁」からきているという説だ。
もう1つの説は、尾花沢の方言で「山形です」という発音が、
「山形だす」となり、さらにそこから「山形だし」へと
変化したというものだ。
正直に言えば、どちらの説もイマイチしっくりと来ない説だ。
敢えていうのであれば、材料の中に昆布が入っており、
そこから旨味(つまり出汁だ)が出ているために
「だし」と呼ぶようになったとでも言われた方が、まだ納得がいくのだが、
さすがに従来の説を無視して、勝手な説をたてるわけにもいかない。

この山形の「だし」、いつごろから作られ、食べられていたのか?
ということに関しては、全く情報が見つからなかった。
1つだけ、戦前から食べられていたという情報があっただけである。
それ以前のことに関しては、ナスやキュウリなどの材料が
いつごろから食べられていたのか?という所まで
遡って考えなければならない。
ナス、キュウリともに、奈良時代かそれ以前に日本に入ってきており、
そこまで遡ってしまっては、全くワケがわからなくなってしまう。
ただ1つだけ、山形の「だし」がいつごろから作られていたのか
という点に迫るヒントがある。
キュウリだ。
実はもともとキュウリとは「黄瓜」であり、
黄色く完熟したものを食べていた。
だが黄色く完熟したキュウリはグニャグニャと歯ごたえが悪く、
甘味も少なかったため人気のある野菜では無かった。
現在の様に青いキュウリが食べられるようになったのは、
幕末になってからで、ここから我々のイメージする
キュウリの歴史が始まると言っても過言ではない。
恐らく、このグニャグニャとした完熟キュウリでは
「だし」は作れないと思われるため、
「だし」が作られるようになったのは、幕末以降と考えられる。
だとすれば、山形で「だし」が作られ始めたのは
幕末以降、戦前までのいつかということになる。

さて、今回は山形の「だし」について色々と調べてみた。
次回は、いよいよ実際に山形の「だし」を作ってみる。

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