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平岩弓枝「御宿かわせみ」シリーズ

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世の中のほとんどの物語には、主人公というものが存在する。

中には群像劇といって、明確な主人公を決めず、
場面、場面によってスポットを当てるキャラクターを
変えていく手法もあるのだが、
意外とそういった物語は少なく、
大方の物語は、明確な主人公が定められ、
その主人公を中心としたストーリーが、
展開していくことになる。

もっとも、中には明確な主人公がいながらも、
その主人公がいない方が、
物語に緊迫感が出て面白い、なんてこともある。
マンガ「ドラゴンボール」などはその典型的な例で、
物語がある程度進んでからは、
主人公はストーリーごとのラストにしか登場してこなくなり、
そこまでは数多くのサブキャラクターたちが、
ストーリーを展開していたのだが、
実際問題、主人公が出てくるストーリー終盤よりも、
主人公が、怪我や病気療養、修行中などの理由で、
ストーリーの本筋に関わってこない部分の方が、
緊迫感があって、面白かった。

同じマンガでも、「キン肉マン」や「魁!男塾」のような、
バトル色の強いマンガで、ひたすら主人公や
その仲間が戦っているようなマンガだと、
ストーリーによっては、ひと勝負ごとに
主人公が交代していたと、見てもいい。
もちろん、物語全体を通しての主人公というのは
ちゃんといるのだが、ひと勝負を1つの単位とした
ストーリーでは、その勝負を行なっている
味方キャラクターこそが主役であり、
そういう意味では、この手のバトル色の強いマンガは、
一種の「群像劇」とみても、いいのかも知れない。

今回、取り上げる「御宿かわせみ」シリーズには、
キチンとした主人公が設定されている。
それが、南町奉行所吟味方与力・神林通之進の弟、
神林東吾である。
神道無念流の遣い手である彼は、
親友で、南町奉行所の同心である畝源三郎に協力し、
江戸の町で起こる、様々な事件を解決していくのである。
時代小説の中で分類すれば、
いわゆる「捕物帳」と呼ばれるものであろう。
それを裏付けるように、毎回、
神林東吾の周りでは何らかの事件が起こり、
彼はその事件の解決に向けて、
江戸の町を駆け回っているのである。
……。
これだけ聞くと、どこに「御宿かわせみ」が出てくるのか?
と疑問に思うかも知れない。
これなら「神林東吾捕物帳」とでもしておけば、
余程、物語をストレートに言い表しているはずだ。
この「御宿かわせみ」というのは、
主人公の恋人・るいが女主人を務めている宿屋の名前である。
旗本の次男坊で、部屋住みの身である東吾は、
この「御宿かわせみ」に入り浸っており、
いわば、主人公の家のような存在なのである。
(東吾の本当の家は、もちろん兄の旗本屋敷である)
従って、何か事件が持ち込まれてくるのも、
この「御宿かわせみ」であることが多く、
大方のストーリーでは、ここを中心として話が展開していく。

この「御宿かわせみ」シリーズは、
小説家・平岩弓枝による連作時代小説である。
1973年、「小説サンデー毎日」で連載が始まり、
「サンデー毎日」休刊後は、
出版社を変え、「オール讀物」にて連載を続けている。
実に43年という長期連載であり、
平岩弓枝の代表作にして、ライフワークといってもいいだろう。
何度も、TVドラマ化、舞台化もされており、
TVなどでこれらを見たと言う人も多いだろう。
「御宿かわせみ」シリーズは、
全部で34冊リリースされており、
ハードカバー版の他にも、文庫版、傑作選と、
様々なバージョンが刊行されている。

物語の時代設定は、幕末になっているのだが、
物語序盤では、それを感じさせるストーリーというのは少なく、
全くの平和な江戸の日常が描かれる。
作者である平岩弓枝が、季節感を大事にしているため、
物語の序盤では、かなりの早さで時間が過ぎていく。
自分が、初めてこのシリーズを読んだときは、
すでに34冊リリースされた後だったので、
このペースで物語が進んでいけば、34巻になるころには、
主人公もヒロインも、しわくちゃの老人に
なっているんじゃないかと思ったのだが、
途中からは、時間の進み方がゆっくりになり、
それに合わせて、丁寧に1つ1つのストーリーが
語られるようになった。
作中の時間は、実際の歴史に合わせて進んでおり、
物語の中盤からは、
主人公・東吾は幕府の軍艦操練所へと通うようになったり、
るいと結婚して子供を設けたりと、
確実に時計の針は、明治維新へ向けて進んでいった。
そして、「そこ」に至る前に、「御宿かわせみ」は34巻を迎え、
終了したのであった。

……。
いやいや、アンタさっき、「連載中」って書いたじゃん、と、
突っ込みが入っているかも知れない。
そうなのだ。
「御宿かわせみ」は、連載終了したものの、
その後、「御宿かわせみ」の後の時代を描いた
「新・御宿かわせみ」の連載が始まり、
現在はこちらの方が「オール讀物」に掲載されているのである。
ああ、なんだ、じゃあ、変わらず東吾とるいが、
「御宿かわせみ」を中心として活躍しているんだな、
と思ってしまうが、実はこの新シリーズには、
前シリーズで主人公を務めていた、神林東吾は出てこない。
何故なら、「御宿かわせみ」と「新・御宿かわせみ」の間には、
明治維新が起こっており、その際の動乱によって、
主人公・神林東吾は行方不明、畝源三郎を始めとする
多くのサブキャラクターたちが死亡してしまっているのだ。
じゃあ、新シリーズの主人公は誰なの?ということになるが、
新シリーズの主人公は、前作の主人公の息子・神林麻太郎である。
そっかー、前作の主人公とヒロインの子供が主人公かーと、
思ってしまうが、実は麻太郎は、るいが生んだ子供ではない。
……。
その辺りの複雑な事情が知りたければ、
とりあえず、原作の方を読んでもらうとして、
明治維新後、医者となった新主人公・神林麻太郎と、
畝源三郎の息子・畝源太郎の息子コンビによって、
「新・御宿かわせみ」シリーズは展開していくのである。

こちらの方は現在、6冊がリリースされている。
だが、5巻のラストにて大きな展開があった。
新主人公である神林麻太郎が、さらなる医学勉強のために
イギリスへと旅立ってしまったのである。
え、じゃあ、主人公いなくなっちゃうじゃない、となるが、
そういう読者の困惑を他所に、第6巻がリリースされた。

かつて「仮面ライダー」では、
初代主人公・本郷猛がいなくなった後、
2代目主人公・一文字隼人が現れた。
そして、その一文字隼人が死神博士を追って日本を離れた際、
本郷猛が帰ってきて、主人公を務めた。
全く畑違いではあるが、そういう前例もあるだけに、
ひょっとして、行方不明の初代主人公・神林東吾が……?と、
憶測した読者もいた。(自分です)

果たして、主人公がいなくなった「御宿かわせみ」は
どうなったのか?

それが気になる人は、
「新・御宿かわせみ」第6巻を読んで、確認してほしい。

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