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火星と「水」

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ちょっと前のことになるが、NASAが
「火星に、液体状の水が存在している」
という意味のことを発表した。

もちろん、これまでにも火星に「水」があるかどうかということは、
散々、研究・考察されており、その結果、
「火星上に「水」は存在しているが、
 それは「氷」の状態、固体の状態でしか存在していない」
という、結論が出ていた。
今回の発表は、この説を覆し、
「液体状の水」が火星上に存在しているというものである。

こういう風に書くと、
じゃあ、火星にも池や川が?と思ってしまうが、
今回、NASAから発表された写真を見てみると、
崖の下辺りに点在している「黒いシミ」の部分に、
いくつか矢印がつけられており、どうもその部分が
液体状の「水」によって濡れている、
水脈なのではないかと、判断したようである。
この「黒いシミ」は、火星の地表温度の変動によって、
変化することが知られており、
凍ったり、溶けたりを繰り返しながら、
動いているのだろうと、考えているようである。
つまり、「液体状の水」が存在しているとはいっても、
常時、液体状でどこかに溜まっているのではなく、
火星の地面が、たまに濡れている、程度のものらしい。
NASAは、この発見を「科学的に重大な発見」として、
全世界に対し、大々的に発表したわけである。
なお、この「発見」の発表に際し、
NASAでは
「火星は、これまで私たちが考えていたような
 乾いた、不毛の惑星ではありませんでした」
と付け加えているのだが、
少なくとも素人目には、発表された写真を見る限り、
「不毛の惑星」というイメージを壊すのは難しそうだ。

さて、「水」のある惑星、なんていう風にいうと、
我々はすぐに「生物」という風に連想してしまう。
これは「水」と「生物」に溢れている地球に住んでいる、
人間特有のものではないだろうか?
冷静に考えてみれば、水素にしても、酸素にしても、
それほど特別に珍しい元素というわけでもないだろう。
(この考え方自体、地球人独特のものかも知れないが……)
で、あれば、水素と酸素が合わさって出来る「水」も、
決して珍しいものというわけではないだろう。
元は地球だって、宇宙に漂うチリが集まって出来たものだ。
地球を作ったチリにだけ、
水素と酸素が含まれていたと考えるのは、ちょっと無理がある。
量の多寡はあるだろうが、地球に近い月や、火星、金星辺りなら、
水素も酸素も、そしてその化合物である「水」があったとしても、
不思議な話ではない。
事実、月や火星においては、液体状ではない水があるらしいし、
金星においては、かつて相当な量の水が存在しており、
ひょっとしたら「海」でさえ、存在していたのではないか?
という説すらあるのである。
つまり、地球、月、火星、金星など、
地球近くの惑星・衛星には誕生時、
そこそこの量の水が存在していたが、
環境の違いによって、水が宇宙に出て行くことなく、
どれだけ星に留まっていたか?というのが、
現在の各惑星の環境の違いを生んだのであろう。

さて、今回「液体状」の水が存在していることが
明らかになった火星だが、
そうなってくると当然、その次に
「火星に生命は存在しているのか?」という話になる。
いかに我々のイメージが、
「水」=「生命」となっているのか、わかるような話である。
まあ、大きな「海」も存在せず、
川や池も確認されていない現状では、
仮に生命が存在していたとしても、
全く小規模な微生物ぐらいのものなのかも知れないが、
それでも「それ」が、
地球以外の環境で育まれたものであるのならば、
これはれっきとした「地球外生命」ということになり、
まさに世紀の大発見ということになるだろう。

そういう地味な現実と違い、
空想上の世界では、火星には高度な知性を持った異星人が
これまた高度な文明を築いていることが多い。
いわゆる「火星人」である。
19世紀には、火星の表面に線状模様が確認されたことから、
人々はそれを「運河」であると考えた。
火星表面状の模様が、直線や円が作り出す
幾何学的な模様であったため、
それを自然物とは考えず、人工的なものだと判断したのである。
「運河」があるのであれば、当然、それを作った者たちがいる。
火星表面上の模様は、惑星全体を覆う規模で広まっていたため、
そのような大規模な工事を成し遂げる「火星人」の科学力は、
地球人のモノよりも、はるかに進んだモノであると考えられた。

そういった考えの中で生み出されたのが、
1897年にH・G・ウェルズによって書かれた小説
「宇宙戦争」だ。
この物語の中で、高度に発達した文明を持つ「火星人」たちは、
機動兵器を地球へと送り込み、地球を侵略しはじめる。
「ウルトラマン」などでは、よくある話であるが、
これは「ウルトラマン」などよりも、
はるかに昔に作られたものであり、
悪の「宇宙人」による地球侵略物語としては、
そのパイオニアともいえる作品だ。
H・G・ウェルズは、ジュール・ベルヌとならんで、
「SF」というジャンルを作り上げた、作家である。
日本のSF特撮作品「ゴジラ」から始まる
様々な特撮SFヒーローたちにとっても、
その始祖とさえ、いえるような作家であり、
「透明人間」、「タイムマシン」、「冷凍睡眠装置」、
「最終戦争」などという、SFでお馴染みの設定は、
全てウェルズが生み出したといっていい。
まさにSFという、「ジャンル」そのものを
創造したともいえるウェルズだが、
そんな彼が「宇宙戦争」で生み出したのが、
現在でもよく知られている「タコ型宇宙人」である。

この「タコ型宇宙人」については、
改めて説明するまでもないだろう。
現在、「宇宙人」といえば、
「グレイ」タイプを思い浮かべる人が多いだろうが、
この「グレイ」タイプが有名になるまでは、
「宇宙人」といえば、この「タコ型宇宙人」のことであった。
脳だけが異常に発達しているのに対し、
手足は恐ろしいほどに退化してしまっており、
大きな頭からは、触手のようなモノが何本も生えていて、
この触手を使って、直立して動く。
マンガなどでは、パロディの対象として扱われることも多い、
もっとも良く知られた「宇宙人像」である。
頭でイメージしにくければ、インターネットで
「火星人」というキーワードで画像検索をかけてみればいい。
画面一杯の「タコ型宇宙人」が表示されるだろう。
今からほんの100年ほど前の人類は、
このタコともクラゲとも言い兼ねるような、奇妙な生物が、
火星を支配していると、本気で信じていたのである。

それから100年。
人類は月に立ち、火星にも探査機を飛ばし、
リアルな火星の画像が送られてくるようにまでなった。
さすがにウェルズの考えていたような
「タコ型宇宙人」はいなかったが、
火星上に「液体状の水」が存在していることと、
さらにそれによって、何らかの生命体が存在する可能性も
明確にではないものの示された。
いずれ、火星に人間を送り込むことが出来たとしたら、
広く、詳しく、火星について調査が進むことになるだろう。
果たして、火星にきちんとした水場は存在するのか?
そして生命は?
そのときには、様々な疑問が明らかにされる筈である。

ひょっとしたら、火星に小さいながらも池や海があり、
そこにタコによく似た生物が棲息しているかも知れない。
地球のタコと同じ、文明も何も持たない
ただの水棲生物だったとしても、
地球の人間たちは、それを喜んで
「火星人」と認定するのではないだろうか?

はたして自分が生きているうちに、
そういう日を迎えることが、出来るだろうか?

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