雑学、雑感、切れ味鋭く、思いのままに。

Falx blog 2

歴史 雑感、考察 食べ物

シュウマイ

投稿日:

毎年、盆や年末年始になると、
妹夫婦が川崎から帰ってくる。
そのとき、毎回のように持ってきてくれるお土産が、
崎陽軒の「シウマイ」である。

おなじみの赤い箱の中に、
真空パック詰めされたシュウマイが15個、入っている。
同封されている小袋の中には、
黄色い粉末が入っていて、
この粉末に水を加え、よく練り上げるとカラシになる。
調理方法は「蒸す」か「電子レンジ」だ。
毎回、簡単な「電子レンジ」を使っている。
きっちりと真空パックされた袋をハサミでひらき、
中のシュウマイを皿にのせる。
ぴっちりとヒトカタマリになったシュウマイ達を、
箸でばらし、適当に水をふりかけ、ラップをかける。
そのまま電子レンジの中で、1分ほど加熱すれば、
食べられるようになる。

出来上がったシュウマイを箸でつまみながら、
ふと頭をひねった。
崎陽軒のシュウマイには、何ものっていない。
豚肉とタマネギをまとめたタネを丸め、
それを小麦粉で作った薄皮で包んだだけである。

自分が子供のころ食べていたシュウマイには、
必ずグリンピースがのっていた。
皮、タネともに白っぽいシュウマイの中で、
そこだけは全く不自然なほどに鮮やかだった。
鮮やかではあったが、うれしくはなかった。
なぜなら、子供のころの自分は
グリンピースが大嫌いだったからだ。

自分のグリンピース嫌いは相当なもので、
ガマンして食べると、
たまに吐き戻すことがあったほどだ。
学校給食のカレーには、
どういうわけかグリンピースが入っていて、
このため小学生の間、給食でカレーが出る度に
死ぬほど憂鬱な気分にさせられた。
恐らくはメニューを考えている栄養士か誰かが、
「ちょっとオシャレじゃない?」くらいの気持ちで
カレーにグリンピースを入れたのだと思うが、
本当に余計なことをしてくれたものである。

……愚痴が過ぎた。
とりあえず、それだけ嫌いな
グリンピースがシュウマイの上にのっていたため、
子供のころはシュウマイも、好きではなかったのだ。

それがいつのころからか、グリンピースののっていない
シュウマイを見かけるようになった。
何ものっていないシュウマイもあったし、
グリンピースのかわりに、
エビがのっているシュウマイもあった。
最近では、スーパーなどでも
グリンピースののっていないシュウマイの方が多い。
いい時代になってきたものである。

シュウマイは「焼売」と書く。
「焼いて売る」だ。
しかし、ここでほとんどの人はこう思うだろう。
シュウマイって、焼いてないじゃない。
そう、シュウマイというのは焼いて作るのではなく、
蒸して作るものだ。
これは本場中国でも変わらない。
中国では「焼売」の他に、「焼麦」と書くこともある。
読みは少し違っていて、「シャオマイ」と呼ぶ。
「麦」とあるが、確かにシュウマイには
小麦粉で作った皮が使われている。
だから「麦」の字が使われていても不思議はないのだが、
やはり「焼」のほうは変わらない。

これにはいくつかの説がある。

ひとつは、もともとシュウマイというのは、
料理をした後、残った肉や野菜をまとめて丸め、
焼いたものがもとになっているから、という説だ。
なるほど、それならば「焼」の字が使われているのも
納得できる。
しかし「売」のほうはどうだろう?
この説が正しいとすれば、一種の残飯処理食である。
はたしてこれが売り物になったのだろうか?
さらに「麦」については、全くの不明である。
小麦粉をつなぎに使った、とも考えられるが、
使った小麦粉の量によっては、シュウマイというよりは、
たこ焼きに近いものになってしまうのではないか?

ふたつめの説は、中国では「焼」という字には、
熱を加える、という意味が強く、
日本での「焼く」よりも、
むしろ「煮る」という意味であるという説。
しかしご存知の通り、シュウマイを煮ることはない。
「煮る」と「蒸す」の間には、
「煮る」と「焼く」程ではないにせよ、
確かな技法の違いがある。
その点に目をつぶるのは、さすがに無理があるだろう。

最後の説は、この2つの説とは根本から違う。
シュウマイが最初に作られたのは、元の時代のことで、
当時は豚肉ではなく、羊肉を使って作られていた。
「元」はモンゴル帝国の5代皇帝フビライが、
モンゴル帝国の国号を改めたことによって出来た。
すなわちモンゴルの食文化の影響を色濃く受けており、
それ故に、豚肉ではなく羊肉を使ったものだと思われる。
当初のシュウマイは、小麦粉で作った皮で、
巾着型に包み上げたものだった。
「シュウマイ」というのは、このころからの名前で、
「焼売」も「焼麦」にしても、
「シュウマイ」という言葉に、
当て字をしただけだという説だ。
つまり「焼売」にも「焼麦」にも、
何の意味もなかったということになる。

この3つの説を並べてみると、
一番説得力があるのは、最後の説だろうか?
「焼売」という文字には、全く意味がなかったとするのが、
一番説得力があるというのは、なんともおかしな話だ。

このシュウマイが、いつ日本に伝わったかも、
全く明らかでない。
シュウマイは点心に含まれているので、
他の点心と一緒に、室町時代に伝わったとも考えられるが、
当時の日本では肉食が禁忌とされていたため、
本当に日本に伝えられたかは、かなり怪しい。
そうなると、その後、伝わったとするならば、
肉食が解禁された明治時代以降である。
ただ、中華街で有名な横浜にしても、神戸にしても、
明治時代にはほとんど中華料理店はなく、
そこで、点心を扱っていたのかは不明だ。
明治43年、東京に初めて出来た
ラーメン屋のメニューの中に「シュウマイ」があり、
このころにはある程度、認知されていたものと思われる。

一般市民の間に中華料理が広がっていったのは、
大正時代~昭和時代初期にかけてであり、
シュウマイもそれと同じようにして、広まっていった。
先に書いた崎陽軒が、シュウマイの販売を始めたのは、
昭和3年のことである。

さて、ここまでシュウマイの歴史を見てきたが、
ここまでのシュウマイには、グリンピースはついていない。
シュウマイにグリンピースをつけるようになったのは、
一説には日本の学校給食が関係しているといわれている。
昭和30年代、学校給食用のシュウマイを
開発していたメーカーが、
イチゴのショートケーキをイメージして、
シュウマイの上にグリンピースをのせたという。
正直、グリンピースが嫌いな自分にとっては、
何という余計なことをしてくれたんだ、
という気持ちで一杯である。
しかしこれが受けたのか、
以降、シュウマイにグリンピースというのは、
ひとつの定番と化してしまった。

つまり、シュウマイの上にグリンピースをのせるのは、
純然たる日本生まれの慣習で、
それ以前から作られている崎陽軒のシュウマイには、
グリンピースはのっていないのだな……と思っていた。

しかし、改めて箱の裏の原材料表示を見ると、
そこにはしっかりと「グリンピース」の文字が。
どうやら、わざわざ肉ダネの中に混ぜ込んであるらしい。
なぜわざわざ中に入れるのか?
ショートケーキのイチゴをイメージしたのなら、
最低でも上にのせておくべきで、
中に入れてしまってどうしようというのか?

大人になり、好き嫌いが無くなり、
グリンピースも食べられるようになったが、
やはり、なんともいえないモヤモヤが残るのである。 

Related Articles:

にほんブログ村 その他生活ブログ 雑学・豆知識へ
にほんブログ村

スポンサーリンク
スポンサーリンク

-歴史, 雑感、考察, 食べ物

Copyright© Falx blog 2 , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.