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雪消飯〜実践編

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前回、大根を使った新たなご飯メニューということで、
「料理人季蔵捕物控」シリーズに出てきた
「雪消飯(ゆきげめし)」について書いた。

江戸時代後期に出版された「豆腐百珍」に載っている
「豆腐料理」の1つであるという所に少々違和感を覚えるものの、
今年の我が家の大根過多といえる状況において、
自分の大根料理レシピが増えるというのは、純粋にありがたい。
そんなわけで、今回はこの「雪消飯」を実際に作ってみる。

インターネットで「雪消飯」について調べてみた所、
これを作るのに必要な材料は、ご飯、大根おろし、豆腐、ダシ汁のみである。
どれも安価なものばかりであるし、材料を揃えるのは簡単だ。

まず、第1の材料、ご飯である。
以前にも書いた通り、自分は普段から「麦飯」を常食にしており、
これはカレーライスを作ったり、寿司を作ったりした場合にも変わらない。
今回作る「雪消飯」についても、それらと同様に「麦飯」で
やっていくつもりである。
従って、常法どうりコメを研いだ後、定量の水を入れ、
さらにそこに50ccの押し麦と水を加える。
ノーマルな白飯であれば、このまま炊飯器のスイッチを入れれば良いのだが、
「麦飯」の場合は、ここから30分ほど吸水させなければならない。
しかるのちに炊飯器のスイッチを入れて、おおよそ45分ほどで
「麦飯」は炊きあがる。

続いて大根おろし。
これも基本的には、大根をおろし金でおろしていくだけなのだが、
この場合、何より重要になってくるのは大根自体の鮮度である。
もちろん、鮮度は新しいほど良いのは言うまでもない。
幸いなことに、我が家の畑には大根がわんさかと植わっていて、
台所からの直線距離はおよそ5m。
土から引っこ抜いた大根を、全くのノータイムで
大根おろしにすることが出来る。
おろし金でおろした大根を、網杓子に入れて軽く絞る。
驚くほど大量の汁が出て、大根おろしの量はグッと少なくなってしまうが、
ここでしっかり汁を絞っておかないと、後で他の材料と合わせたときに
大根おろしから出た汁で、折角のダシ汁が薄まってしまうことになる。
搾り取った大根の汁は、もったいないのでダシ醤油を入れて味をつけ、
そのままゴクゴクと一気に飲む。
……。
何というか強烈な味だ。
大根の辛みと甘味が一気に口の中に入ってくる。
一言でいえば、とっても胃に良さそうな味とでも言おうか。

そして豆腐。
もともと「雪消飯」は豆腐料理なわけだから、
ある意味、最も重要な材料と受け取ることも出来る。
買ってきた豆腐をまな板の上にのせて、
1片5mmほどの拍子木切りにしていく。
豆腐は絹ごし豆腐なので、かなり柔らかい。
慎重に作業しないと、あっという間に形が崩れてしまう。
ただ、豆腐を切りながら思ったが、わざわざ豆腐を拍子木切りにするのには
何か意味があるのだろうか?
別段、賽の目切りでも良いし、適当な大きさの塊をそのまま置いても良いし、
手でグズグズに崩した豆腐を入れても構わないような気がする。
ひょっとすると見た目の問題なのだろうか?
この拍子木切りにした豆腐を、丼の底にきれいに並べる。
レシピを見る限りでは、温かいダシ汁につけて温める、
その際に使ったダシ汁は捨てる、とあるのだが、
これは他に豆腐を温める方法が無かった江戸時代のそれだろう。
現代人である自分は、丼ごと豆腐を電子レンジに入れて、
そのまま3分ほど加熱することになる。
電子レンジで3分加熱した豆腐からはいくらか水分が出てくるが、
これもそのままにしておくとだし汁の味を薄めそうなので、捨てておく。

そして最後にダシ汁。
本来であれば、かつお節と昆布でダシをとって、
みりんや醤油で味を整える所だろうが、あいにくかつお節も昆布もみりんも
我が家には無い。
代わりに顆粒ダシをお湯に溶かして、みりん風調味料、醤油で味を整える。
醤油はうすくち醤油を使ったので、ダシ汁は色も薄く上品な仕上がりだ。

一通りの材料が揃った所で、これらを合わせていく。
まず、ヒモ状の豆腐の入った丼に、豆腐が浸る程度にダシ汁を入れる。
豆腐は電子レンジで温めてあるので、
ダシ汁の温度が下がってしまうことは無い。
豆腐が若干ダシ汁から露出している状況でないと、
次に乗せる大根おろしがダシ汁の中に散ってしまう。
ダシ汁から露出してる豆腐の上に、大根おろしを乗せて薄く均等に広げる。
さらにその上に「麦飯」を乗せていくのだが、
今回は炊きたての「麦飯」を乗せた。
もしご飯が冷たいようなら、お湯をかけて温めたものか、
現代であれば、電子レンジで温め直したものでも良いだろう。
形よく飯の形を整え、彩りを考えて一番上に
大根の葉を塩で締めたものを乗せて完成である。
インターネットで見たものと、そう遜色の無いものが出来た。
はっきりいって、見た目的にはちょっと変わったダシ茶漬けといった感じだが。

さて、いよいよ実食である。
ゆっくりと箸を入れて、盛ってある麦飯を突き崩す。
分量的に言えば、麦飯の量というのは、それほど多くはない。
豆腐、大根おろし、麦飯がある程度混ざるように箸を動かす。
そうすると、麦飯の下に敷いてあった大根おろしが
ダシ汁に融けるように広がっていく。
ちょうどその様子は、水の中に落とされた雪が
みぞれ状になって融けていくのによく似ている。
「雪消飯」という名前は、この様子からついたものだろう。
丼に口を付け、お茶漬けをすするような感じで口の中に流し込む。
麦飯、豆腐はもともと味わいがそれほど強くないため、
口の中にはダシ汁と大根おろしの風味が広がる。
ちょうど大根おろしの辛みが、ダシ汁によって薄くなり、
大根の甘味を強く感じるようになっている。
正直、かなりウマい。
お茶漬けを食べるように、さらさらと口の中に流し込み、
小さな丼に入った「雪消飯」は、あっという間に空になってしまった。
もう一杯、同じものを作りたかったのだが、
残念ながら豆腐がもう残っていなかったため、
丼の中に麦飯を盛り、それに薄く大根おろしをまぶしたものに
だし汁をかけて食べてみた。
正直、豆腐が無いだけなので、それほど味が変わるとは思っていなかったのだが、
不思議なことに、先ほどの「雪消飯」に比べると、
大根おろしの辛みが強く残っているように感じられた。
全く、味わい的に主張の無かった豆腐だが、
その実、大根おろしの辛みを中和するという役目があったらしい。
まあ、豆腐が無いため、2杯目のこれはただの「大根おろし飯」だ。
大根おろしの辛みが強く感じられるが、それはそれでウマい。
ただ、大根おろしを麦飯の上に乗せたため、
上手く大根おろしがダシ汁の中に散らず、
「雪が融けて消える」様な風情にはならなかった。
残念ながら、これでは「雪消飯」とは言い難いだろう。

さて、「豆腐百珍」の内の1つ、「雪消飯」を作ってみたのだが、
なかなかに風情ある、ウマい1品に仕上がった。
ただ、1つ難をあげるとすれば、思っていたほど大根おろしを使わないため、
大根過多の現状を打開する決め手にはなり得ない、ということだろうか。

あくまでも、大根飯に飽きた場合の、窮余の一策ということになりそうだ。

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