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沖縄そば

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By: nubobo

前回、弟の沖縄旅行土産としてもらった
ちんすこう」について書いたが、そのときにも触れていた通り、
もう1つ、「沖縄そば」もお土産にもらっている。
今回は、この「沖縄そば」について書いていく。

弟からもらった「沖縄そば」は、ビニールパックに入った
2食入りのものである。
パッケージには、丼に入った「沖縄そば」の写真が印刷されており、
そこには丼一杯に盛られた平打ち麺の上に、
茶色くなるまで煮込まれた豚肉が3枚、
楕円形のカマボコ(?)が2枚、
さらにその上に、紅ショウガと刻みネギが乗っかっている。
どうもスープの量が少ないのか、麺の上部がほとんどスープ上に
露出してしまっており、はっきりとしたスープの色は分からない。
丼の縁などで確認できる限りでは、やや薄めの醤油色をしている。
少なくとも、パッと見た感じでは、
わりと豪華な具材を載せた、「きしめん」の様にも見える。
ただ、先にも書いた通り、
麺の上部がスープから出てしまっているので、
もっともこれによく似ているのは、お湯を入れて放置しすぎた
インスタントうどんの「どん兵衛」である。
自分の感覚からすれば、もうちょっとスープを増やして
麺をしっかりと水没させれば、
もっと写真映りが良くなると思うのだが、
少なめスープで、麺を露出させていくのが
「沖縄風」なのかもしれない。

もちろん、パッケージの隅にはお馴染みの
「写真はイメージです。具材はついておりません」
との但し書きが印刷してある。
そう、パッケージは透明で、内容物がよく分かるようになっているが、
目で確認できる限りでは、平打ちの生麺が2玉、
それにビニールパックのスープの素が2つ入っているだけである。
そういう意味では、袋入りのインスタントラーメンと同じである。
違いは、麺が「生」であるということだけだ。
この麺も、一応、「そば」を名乗ってはいるものの、
見た目は完全に小麦粉のみで作られている麺の色で、
「そば粉」が使われているような感じは全くしないし、
パッケージの裏の原材料表示の中にも
「そば」や「そば粉」の表示は無い。
詰まる所、「沖縄そば」の「そば」というのは、
「中華そば」の「そば」と同じく、麺を指す表現らしい。

早速1つ、作って見ようと台所に行き、
パッケージ裏面の(作り方)を確認する。
それによると、たっぷりの湯で「生麺」を3~4分茹で、
好みの茹で加減にした後、ザルで水気を切り、丼に盛りつける。
そこにスープを振りかけてから、
別に沸かしておいたお湯270mlをかければ、出来上がりである。
一応、ハム、焼き豚、紅ショウガ、ネギ、カマボコを添えると、
よりいっそう美味しく召し上がれます、と書かれているが、
残念ながら、現在、我が家にあるのはネギだけである。
乾麺を茹でた所に、粉末スープを溶かすだけの
「インスタントラーメン」と違い、麺を茹でるのと、
スープを溶かすのは、別にお湯を沸かしておかなくてはいけないのが、
ちょっと面倒くさいが、まあ、うちのガスコンロには
バーナーが2つついているので、なんとかなるだろう。
ただ、スープを溶かすお湯が270mlというのは、
普通のインスタントラーメンと比べても、明らかに少ない。
(乾麺を茹でて、そこにスープを溶かすインスタントラーメンだと、
 大体500mlほどのお湯で調理することになる。
 乾麺が湯を吸うことを考えても、
 この「沖縄そば」は、明らかにスープの量が少ない)
なるほど、このスープの量だと、麺がスープから露出するはずである。
とりあえず、トッピングに使うネギだけ用意して、
早速、調理を開始した。

「生麺」を使っているとはいえ、
ほとんどインスタントと変わりがないので、
調理自体は至極簡単である。
ものの5分ほどで「沖縄そば」が1杯、出来上がった。
トッピングがネギしか無いので、見た目がかなり寂しいのと、
意外にスープの水位が高く、麺のほとんどが水没している辺りが
パッケージの調理例と違っている。
スープは思っていたよりも色が薄く、どちらかといえば
醤油スープというよりは、塩スープのようである。
(実際、スープの原材料に醤油は使われていない)
ビニールパックに入っていた「スープのもと」は液状で、
白く固まった油脂も結構含まれていたので、
うどんやそばのダシ、というよりは、
やはりラーメンのスープに近いもののようだ。
パッケージ裏の原材料表示には、ポークエキスと共に、
鰹節エキスとあったので、ラーメンスープと和風ダシの
混ざったものと考えればいい。
一口、スープをすすってみると、平均的なラーメンスープよりは
うすい味に仕立てられていて、あっさりと美味しい。
そこに「きしめん」の様な平打ち麺が入っているため、
味の率直な感想は、中華風のうどんと言った感じであった。

「沖縄そば」の起源について調べてみると、
その起源には、大きく2つのパターンがあるようだ。

1つは、14世紀から15世紀にかけて、
明から伝わったとするもので、
中国から来た冊封使によって、もたらされたとされる。
このころの沖縄では、小麦粉が非常に高価であったため、
これを使って作られる麺は、宮廷料理にしかなかったという。
前回の「ちんすこう」が、王侯貴族の食べ物であったことと、
どこか通じている話である。
少なくとも、沖縄の地には
14、5世紀ころから「麺」があったということである。
これを「沖縄そば」の起源と位置づけているのが、第1の説である。

もう1つは、明治時代後期に中国人が那覇に店を開いたのが、
その始まりだとするものである。
やがて、これをマネする店が増え始め、
大正時代になると町中には「そば屋」が溢れて、
庶民が気軽に「そば(麺)」を食べられるようになった。
当初は中国料理のように、豚骨ダシに醤油を使ったスープが
一般的だったが、やがてこれに改良が加えられ、
様々な「沖縄そば」が増えていったというのが、第2の説だ。

こうして2つの話を並べてみると、
少なくとも、現在の「沖縄そば」に直結しているのは、
第2の説である。
第1の説と、現在の「沖縄そば」の間には、
直接的な繋がりは、存在していない。
ただ、両方の説に共通しているのは、
その出所が、どちらも「中国」であるという所だ。
「そば」という、日本の麺料理の名を関しながらも、
そのルーツには、日本は存在していないのである。
そしてこのことが、後に1つの問題を引き起こす。

太平洋戦争後、沖縄が本土に復帰した後の1976年。
公正取引委員会が、「沖縄そば」という名称使用について
クレームを入れたのである。
「沖縄そば」は、「そば」という名前を使いながらも、
その本質は小麦粉を鹹水で練って作り上げたもので、
はっきりいえば、「中華麺」と同質のものである。
当然、日本でいう「そば」の原材料である「そば粉」は
全く使われていない。
全国生麺類公正取引規約によれば、
「そば」を名乗っていいのは、
「そば粉を30%以上使用しているもの」となっているので、
そういう意味では、「沖縄そば」は
「そば」を名乗れないということになる。
ただ沖縄では、昔からこれを「そば」と呼称し、
県民に愛されてきた歴史があるため、
「沖縄そば」の名称を守ろうと、
東京本庁に出向いての交渉が始まった。
粘り強く交渉すること数ヶ月、ついに1978年10月17日、
公正取引委員会から正式に、「本場沖縄そば」の名称の使用が
認められることとなった。
このことを記念し、沖縄では10月17日を
「沖縄そばの日」と定めることになった。

さて、本場・沖縄では、ブタのアバラ肉を煮込んだものをのせた
「ソーキそば」など、様々な派生品が誕生している
「沖縄そば」であるが、そういった具材を
一切用意していない我が家では、基本的に茹でた麺にスープを張り、
ネギを散らしただけの「沖縄そば」になる。
いわば、「素うどん」ならぬ、「素沖縄そば」だろうか。
スープには鰹節エキスも使われているため、
どことなく和中折衷の雰囲気があるのだが、
そう考えればこれは、姫路駅名物の「えきそば」(和風ダシに
中華麺を入れたもの)と同様の麺料理ともいえる。

身近な「えきそば」と、似た所があるせいか、
特に違和感を感じることもなく、するりと食べ終わった。
もし、沖縄の人間が、姫路の「えきそば」を食べたとしたら、
同じように感じるかも知れない。

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