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甘エビ

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日本で最も有名なカニの1つに、タラバガニというのがある。

……。
今回のタイトルと全然違うやんけ、と思った人もいるだろう。
しかし、とりあえず話を進める。
このタラバガニという名前を聞いて、こう思った人はいないだろうか?
すなわち、タラバガニの「タラバ」って、何?と。

これはタラバガニというのを、漢字で書いてみると意味が通る。
「鱈場蟹」。
つまりタラバとは「鱈場」である。
この「鱈場」という言葉には、鱈が生息している場所という意味がある。
具体的な場所を挙げれば、日本海からオホーツク海、カムチャッカ、
アラスカ沿岸の北極海まで、ということになる。
まあ、非常に大雑把な言い方をしてしまえば、
「日本から見て、北の方向にある水温の低い海域」
ということだ。
タラバガニというのは、ちょうどこの「鱈場」と呼ばれる水域に
生息しているため「タラバガニ」と呼ばれているわけである。

そういう言い方をするのならば、その海域に住んでいる生物は
すべからく「タラバ〜」という名前がついていても
おかしくはないということになる。
興味を持った自分は、インターネット検索を使って
「タラバ○○」の「○○」の部分に、様々な生物の名前を入れていった。
タラバイカ、タラバタコ、タラバ貝、タラバウニ、タラバエイ、
タラバサメ、タラバコンブ等々……。
しかし残念なことに、これらの生物は存在していないらしく、
検索結果は「一致する情報が見つかりませんでした」と表示されるか、
あるいは「タラバガニ」の情報が表示されるのみであった。
「鱈場」に生息している魚ということで、
「タラバ魚」というのも検索してみようとしたのだが、
よくよく考えてみれば、「鱈場」に生息している最も著名な魚といえば
もちろん「鱈」に決まっている。
これではまさに本末転倒としか言い様がない。

しかし、この「タラバ○○」という検索の中で、
たった1つだけ、キチンとヒットしてきた生物がいる。
エビである。
エビにはタラバエビ科という科が存在しており、
そこには何種類ものエビが属している。
そしてこのタラバエビ科に属しているエビの中で、
我々日本人にとって、最も馴染みの深いエビこそが「ホッコクアカエビ」。
一般的に「甘エビ」として知られているエビなのである。

「ホッコクアカエビ」は、タラバエビ科に属するエビの一種だ。
主に北太平洋の深海に生息しており、日本では重要な食用種となっている。
この「ホッコクアカエビ」には、「甘エビ」「南蛮エビ」などという別名があり、
一般的にスーパーの鮮魚コーナーなどでは「甘エビ」の名前で販売されている。
生で食べるとネットリとした食感と甘味があり、
この「甘味」が「甘エビ」の名前の由来になっている。
(ちなみに「南蛮エビ」というのは、「ホッコクアカエビ」が「南蛮」、
 すなわち赤唐辛子に似ていることから、つけられた名前である。
 主に新潟地方では、この名前で呼ばれているようである)
一般的にエビ類は鮮度落ちが早く、鮮度を保って調理するため、
生きているものをそのまま茹でる、なんていう方法もとられるのだが、
この「甘エビ」に関しては、新鮮なものでは肝心の甘味が出てこない。
というのも「甘エビ」の甘味は、「甘エビ」自身の持っている消化酵素が、
その死後、「甘エビ」自身を消化していき、
アミノ酸が形成されることによって生まれるものだからである。
さらにこの消化酵素によって分解されることにより、
「甘エビ」独特のあのトロミが生み出され、
このトロミによって、舌の上に長くアミノ酸が感じられるため、
より強く甘味を感じることが出来るという仕組みになっているのである。
だから「甘エビ」の場合、活けものや死後間もないものよりは、
死後1日くらい経っているものの方が
甘味が強くて美味しいということになるのである。
(ただ、普通にスーパーなどで「甘エビ」を買ってくる場合は、
 すでに死後、一定の時間が立っていることが多いので、
 そのままさっさと食べてしまった方が良いようである)

「甘エビ」が生息しているのは、日本海では島根県以北、
太平洋側では宮城県以北となっており、その他、
オホーツク海やベーリング海、カナダ西岸にかけての北太平洋となる。
先に書いた「鱈場」と、ほぼ一致している。
この「甘エビ」、というかタラバエビ科のエビ類には
成長していくにつれて性別が変化するという面白い特徴がある。
まず生まれて3年ほどは、オスメスの区別が存在しておらず、
生後4年目から5年目にかけて、全ての個体が一旦オスになる。
この時期にメスと交尾するわけだが、その後、
5年から6年で今度は全ての個体がメスへと変化する。
そしてメスに変化した個体は、若いオスと交尾して
大体生後7年目くらいで受精卵を腹に抱えることになる。
メスはおおよそ10ヶ月間卵を抱えたまま過ごし、
その後、孵化した幼生を放つことになる。
「甘エビ」の寿命は10年から11年ほどあるので、
「甘エビ」はその生涯において、3回以上産卵することになる。

さて、この「甘エビ」の性質を顧みた場合、
こういう風に結論づけることが出来る。
すなわち「甘エビ」というのはサイズによって性別が違う。
逆にいえば、同サイズのものであれば、それらは全て同じ性別のはずである。
この特徴を踏まえた上で、スーパーに並んでいる「甘エビ」を見てみる。
よくよく見てみると、同サイズのものであっても卵を抱えているものと
抱えていないものがある。
他の生物であれば、卵を抱えているのはメス、
抱えていないのはオスと言うふうに判断を下す所なのだが、
こと「甘エビ」に限っては、こういう判断を下すことが出来ない。
少なくとも同サイズであれば、それは全て同じ性別であり、
例えばそのサイズのものがメスであるのならば、それ以上のサイズの
「甘エビ」は全てメスと判断しなければならないわけだ。
先にも書いた通り、「甘エビ」のメスは10ヶ月間も卵を抱えているため、
メスとなってからは、そのほとんどの時間を卵を抱えて過ごすとみていい。
そういう前提で、スーパーに並んでいる「甘エビ」を見てみれば、
これは余りにも、卵を抱えていないメスの数が多いのではないだろうか?
普通に考えれば、メスが卵から解放されるのは2ヶ月間。
しかし、エビの産卵は1年中行なわれるものではなく、
春から夏にかけて、南の海域から産卵に入っていくことを考えれば、
秋・冬の時期などは、全てのメスが卵を抱えていて当然のはずである。
しかし実際には、かなりの数の「卵を持たない」メスがスーパーに並んでいる。
これはどういうことなのか?
理由は簡単で、どういうわけか日本海に生息している「甘エビ」は
1年おきにしか産卵をしないのである。
そのため、日本海産の「甘エビ」の場合、おおよそ半分ほどの確率で
卵を抱えていないメスの「甘エビ」が存在していることになる。
もしスーパーの鮮魚コーナーで「甘エビ」をみつけ、
それが卵を持っている個体と、持っていない個体が混在していた場合、
その「甘エビ」は日本海産である可能性が高いということである。
(もちろんその場合、殻を剥いて販売されているものではなく、
 殻・頭付きのまま販売されている「甘エビ」に限った話になるのだが)

一般的には、刺身として食べられることの多い「甘エビ」だが、
インターネットなどでレシピを検索してみると、
天ぷらにしたり、汁物にしたりなど、
火を通して食べるレシピも多く見つけることが出来る。
ただ「甘エビ」に火を通す場合、どうしても身が痩せてしまうことが多く、
ただでさえ小型のエビが、さらに小さくなってしまうことにもなりかねない。

やはり「甘エビ」は、そのまま生(刺身)で食べるのが一番らしい。

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