雑学、雑感、切れ味鋭く、思いのままに。

Falx blog 2

歴史 雑感、考察 食べ物

播州ラーメン

更新日:

自分の住んでいるたつの市で「麺」ということになると、
これはもう、一も二もなく「素麺」ということになる。

播州手延べ素麺「揖保の糸」といえば、
素麺の銘柄として、日本でトップのシェアを誇っている、
うすくち醤油、皮革と並ぶ、たつの市の3大特産物の1つだ。
これとは少し趣を変えるが、イトメンの販売している
インスタントラーメン「チャンポンめん」もまた、
一部のコアなファンを持つ、知る人ぞ知る逸品となっている。

では、自分の住んでいるたつの市に、
「ご当地ラーメン」と呼べるものがあるか?ということになると、
これは途端に難しいことになる。
まず、たつの市という範囲内で考えるのであれば、
正直、「ご当地ラーメン」と呼べるものはない。
たつの市のラーメンということになるのであれば、
それにもっともふさわしいものは、
先に挙げたイトメンの「チャンポンめん」になるだろう。

ここでグッとその範囲を広げ、
播磨地域の「ご当地ラーメン」ということになると、
「播州ラーメン」なるものの名前が挙がってくることになる。
「播州」の「ラーメン」だから「播州ラーメン」。
何というか、実に安易なネーミングである。
果たして「播州ラーメン」とは、どんなラーメンなのか?

調べてみた所、「播州ラーメン」とは
兵庫県西脇市を中心とした播州地方で作られ、食されている
醤油ラーメンということになっている。
まあ、醤油ラーメンというと、日本でもっとも一般的というか、
平凡なラーメンというイメージを持ってしまうのだが、
全くのノーマルな醤油ラーメンに比べると、
スープの甘さが強く作られていて、これが大きな特徴になっている。
通常、ラーメンのスープは、タレをダシ汁で割ったものになるのだが、
このタレの中に、甘味を出すためのタマネギやリンゴ、魚だし、
氷砂糖などが使われているようだ。
ダシ汁の方は、鶏ガラ、豚骨、野菜などを
煮だしたものがベースになっていて、通常のダシと変わらない。
ただ、絶対に「これ」、といった決まったレシピはなく、
それぞれの店が、それぞれの方法で、甘味のあるスープを作っている。
そのためか、店によって「播州ラーメン」の甘さはまちまちで、
味自体も、差異のあるものになっているようだ。
麺については細めの縮れ麺で、
具はチャーシュー、ネギ、もやし、海苔と、
特別に変わっているものはない。

この「播州ラーメン」の歴史を遡っていくと、
その始まりは、戦後の西脇市の、繊維産業の隆盛にいきつくようだ。
戦後、西脇市の繊維工場で働くため、全国から中学校を卒業したばかりの
女子たちが集団就職でやって来た。
その数、約2万人といわれているから、その時期の西脇市は
若い女性たちの町、といってもいい状況だったのだろう。
当然、ラーメン屋でも、若い女性の味覚に合わせたラーメンを作り
これを販売する店が現れた。
それが、甘味の強い醤油ラーメン、「播州ラーメン」である。
醤油、味噌、塩、豚骨と、様々なラーメンがある中で、
もっともポピュラーな醤油ラーメンをベースにしているのは、
顧客である女工たちが日本全国から集まってきているため、
もっとも受け入れてもらいやすいポピュラーな醤油を
選択したのかも知れない。
(ただ、一部では、それ以前からラーメンスープに
 甘味があったという話もある)

この「播州ラーメン」と時期を同じくして、
兵庫県姫路市辺りでも、醤油ラーメンをベースにした
「姫路ラーメン」なるものが作られ始めている。
こちらは「播州ラーメン」のようにスープに甘味はないが、
生姜をトッピングしてあるのが、大きな特徴となっている。
醤油に生姜、という組み合わせを見ると、
生姜醤油で食べる姫路名物の「姫路おでん」を思い出してしまう。
醤油と生姜という組み合わせは、姫路市民にとっては
何か特別なのかも知れない。
こちらの方は、タレ、ダシ汁ともに普通の醤油ラーメンと変わらないが、
麺は中太のストレート麺が使われている。
さらにトッピングは、ネギ、もやし、チャーシュー、のりなど、
ほとんど普通の醤油ラーメンと同じであるが、
これに生姜が加わっている所が、違いといえば違いである。
「姫路おでん」の場合も、肝心の「おでん」部分に関しての
こだわりは少なく、重要なのはあくまでも
「生姜醤油」で食べるという点だったのだが、
この「姫路ラーメン」でも、重要なのは「生姜」をトッピングしてある
という点であるらしい。
現在では、この「姫路ラーメン」を売りにしているチェーン店も
存在している。

冒頭で、たつの市の「ご当地ラーメン」といえば、
イトメンの「チャンポンめん」だと書いたのだが、
同じイトメンから、インスタントラーメンの
「播州ラーメン」が販売されている。
こちらは、インスタントラーメンによくある、
油揚げ麺をお湯で茹で戻し、そこに粉末スープを溶かす商品なのだが、
麺は細麺の縮れ麺であり、スープは甘めの醤油ベースになっていて、
その特徴だけを見てみれば、西脇市近辺で食べられている
「播州ラーメン」とピタリ一致している。
ただ、イトメンのホームページの商品説明を読んでみた限りでは、
イトメンの「播州ラーメン」と、西脇市近辺の「播州ラーメン」が
同一のものであるという表現は見られなかった。
ひょっとすると、何か複雑な利権が働いているのかも知れない。

実際に、醤油味のインスタントラーメンを使って、
「播州ラーメン」ぽいものを再現してみるのは、
それほど難しいことではない。
醤油の粉末スープを溶かす際、大さじ4分の1ほどの量の砂糖を入れれば、
スープにそこはかとない甘さが加わり、「播州ラーメン」風になる。
「播州ラーメン」がどんなものか試してみたいけど、
現地まで、わざわざ食べに行くのは面倒くさいかな、と思う様な場合には、
一度、この方法を試してみるのも、悪くないのではないだろうか。

Related Articles:

にほんブログ村 その他生活ブログ 雑学・豆知識へ
にほんブログ村

スポンサーリンク
スポンサーリンク

-歴史, 雑感、考察, 食べ物

Copyright© Falx blog 2 , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.