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花オクラ

更新日:

毎月、我が家の郵便受けに放り込まれている刊行物の中に、
JA兵庫西が発行している「にっしぃひろば」というのがある。
まあ、早い話が、農協が出している月刊のフリーペーパーだ。

農協が出しているだけあって、地域の農家を紹介していたり、
野菜を使ったレシピの紹介、野菜栽培のためのカレンダーなどが
載っているのだが、その中におたよりコーナーというのがある。
「にっしぃひろば」の読者が
掲載されているクロスワードパズルに答え、
その答えをハガキに書いて応募すると、
図書券が当たるというコーナーがあるのだが、
そのとき、応募ハガキに一言二言、感想なり近況なりを書いておくと、
このおたよりコーナーに取り上げられるのである。

先日、我が家の郵便受けに最新号が放り込まれており、
そのおたよりコーナーを見ていると、こんなおたよりがあった。

「黄色くて立派な花オクラが、毎日10個ほど咲いています。
 近所の方にも配っています」

このおたよりの中で、自分の気を引いたのが
「花オクラ」という部分である。

普通の「オクラ」ならば、かつてこのブログでも取り上げたことがある。
夏の和食などによく使われる野菜で、まるでずっと昔から日本にあった
日本の伝統野菜のような顔をしているが、
実はアメリカ原産で、盛んに食べられるようになったのも
ここ4〜50年くらいという、新参の外来野菜である。
セロリやアスパラガスといった、外来丸出しの西洋野菜よりも
新顔だといえば、きっと驚く人も多いだろう。

で、今回のこの「花オクラ」なのだが、
語感からすれば、この「オクラ」に咲く花のことかな?と思ってしまう。
何を隠そう、自分も最初はそう思ったのだ。
確かにそこらの畑で栽培されている「オクラ」も、
時期がくれば、花をつける。
その花こそが「花オクラ」ではないのか?と。
しかしそうなると、ちょっとこのおたよりの内容がおかしくなる。
「オクラ」の花は、開花した後、そこに果実をつける。
つまり花を採ってしまっては、
肝心の「オクラ」が収穫できない、ということになる。
第一、「オクラ」を配ってもらえるのならともかく、
花など配ってもらっても、もらった方も困るだろう。
そう思って、そのおたよりに対する返信を読むと、こう書いてある。

「「花オクラ」はきれいで食卓が引き立ちますね。
 夏バテに効く成分が含まれているようなので、
 来年はプランターで、栽培に挑戦してみます」

夏バテに効く、と書いてあるということは、
この「花オクラ」というのは、見て楽しむのではなく、
食べるものだということである。
ここにきて、「オクラ」の花=「花オクラ」という認識に疑問が生じた。
そこで改めて「花オクラ」について調べてみると、
「オクラ」と「花オクラ」は、共にアオイ科トロロアオイ属に
属しているものの、別の種であることが判明した。
この「花オクラ」の本名は「トロロアオイ」。
そう、トロロアオイ属ということであれば、
むしろこの「花オクラ」こそが、本流といっていい血筋である。

「花オクラ」こと「トロロアオイ」は、先にも書いた通り、
アオイ科トロロアオイ属に属する多年草である。
「オクラ」とは非常に近しい品種であり、
この「花オクラ」も、「オクラ」同様の果実をつけるのだが、
味が悪いため、全く食用にはされていない。
ただ、根の部分から「ネリ」と呼ばれる粘液状の物質がとれ、
これが紙すきの際に用いられる。
この「ネリ」の採取を目的として、
古来より栽培されてきた歴史がある。
当然、花も果実にも用はなく、捨てられてきていたのだが、
このうちの花の方が、食用に用いられるようになった。
となると、当然、え?じゃあ、「オクラ」よりも「花オクラ」の方が、
早くから食べられていたの?ということになるのだが、
仮にそういう歴史の流れだったとすれば、
「花オクラ」なんていう「オクラ」準拠の名前が
付けられているのはおかしい。
少なくとも、「花オクラ」なんていう名前が付けられている以上、
これが食べられるようになったのは、
「オクラ」以降のことのはずである。
そう思って、色々調べてみると「花オクラ」について、
こんな記述が複数見つかった。

「花が美味しくなるように、改良した品種です」

つまり「花オクラ」は、「トロロアオイ」の花を食べられるように
品種改良して、新たに作り出されたものだったのである。
どうせ食べられるようにするならば、
「オクラ」と同じように、花よりも実を
食べれるようにすればいいんじゃないか?とも思うのだが、
ひょっとしたら実の方は、どう改良してもマズかったのか、
花の方がもともとウマかったのか?
ともあれ、その品種改良が「オクラ」が一般的になった後だったため、
「花オクラ」などという、「オクラ」準拠の名前が付けられたのだろう。

この「花オクラ」、「オクラ」の名前を持っているだけあって、
「オクラ」と同じような粘りと香り、
さらには野菜らしい濃密な甘味を持っている。
まさに、花の形をした「オクラ」である。
この「花オクラ」のように、食べることの出来る花を
エディプル・フラワー(食用花)と呼ぶが、
数あるエディプル・フラワーの中でも、この「花オクラ」は、
トップクラスの美味しさを持っているとされている。
……。
そこまで美味しいのなら、どうして市場では全然見かけないの?
と思っている人もいるだろう。
実はこの「花オクラ」、肝心の花の寿命が1日しかない。
1日、パッときれいに咲き誇ると、そのまま後は枯れてしまう。
極端なまでに傷みが早いのである。
理想的なことを言えば、花が咲く前のつぼみの段階で収穫し、
そのまま、顎をとって、花びらだけを調理する。
これも食べる直前に行なわないと、傷んでしまう。
現在、流通技術は格段に進歩しているが、
それを持ってしても尚、流通させることが出来ないレベルなのだ。
だから当然、スーパーなどでは購入することが出来ない。
まれに地元密着の野菜直売所などで販売されることがあるらしいが、
これを買って食べるのであれば、そういうものを狙うしかない。
もちろん、購入後はできるだけ早めに食べるのが、コツである。
(そういう事情のせいか、値段自体は結構安いようである)
「トロロアオイ」自体は適応力の強い種なので、
温帯であれば、どこでも普通に栽培することが出来る。
乾燥には強いが、湿気が強いと品質が劣化するので、
水はけの良い土で栽培するのがいいようである。

さて、ここでちょっと話を戻そう。
「トロロアオイ」の花が、「花オクラ」として美味しく食べれるのなら、
逆に「オクラ」の花も、同じように食べれるのではないか?
実はその通りで、「オクラ」の花も「花オクラ」同様に
食べることが出来る。
ただ、「トロロアオイ」の果実と同じように
「オクラ」の花もまた、美味しいものではないらしい。

結局、「オクラ」は「オクラ」として食べるのがいいようである。

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