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雷魚

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自分の住んでいるたつの市には、
多くのため池が存在している。
そして、そのため池は、大きく2通りに分別することが出来る。
水草に覆われているため池と、水草の無いため池である。

ここでいう「水草」というのは、
ため池の底にのみ生えている「水草」のことではなく、
水面を覆いつくすように生えている「水草」のことである。
水面を覆いつくした「水草」たちは、
その下で多くの生物たちを養っている。
鮒や鯉などの魚類、カエルなどの両生類、
カメなどのは虫類、アメンボなどの水棲昆虫類である。
「水草」は、あるときは彼らの隠れ場所となり、
またあるときは彼らの巣となる。
そしてまたあるときは彼らのエサとなり、
豊かな生態系を下支えしているのである。

そんな「水草」に覆われたため池の側を通ると、
時折「ベフッ」という、奇妙な音が聞こえてくることがある。
カエルの鳴き声とも違う、空気の漏れるような音。
そう。
それこそが今回の話の主役、
「雷魚」の呼吸する音なのである。
……。
いやいやいや、と突っ込みを入れるのは、
冷静にものを考えることの出来る人だ。
「雷魚」は魚である。
これは読んで字のごとく、間違えようの無い事実である。
そして、魚類というのは「エラ」で呼吸する。
顔の横部分についている器官に水を通し、
水中に溶け込んでいる酸素を、身体の中に取り入れるのである。
この「エラ呼吸」は、その性質上、水の中で行なわれるため、
音が水の外へと響くことが無い。
金魚などを水槽で飼っている人ならわかるだろうが、
水の中で金魚は絶え間なく、エラを使って呼吸しているが、
その音が水槽の外に聞こえてくることは無い。
では、どうして「雷魚」の呼吸音は水の外まで聞こえてくるのか?

答えは簡単で、「雷魚」はエラだけではなく、
エラの側にある上鰓器官(じょうさいきかん)も使って
呼吸しているからである。
水面に口を出して空気を吸い込み、
その空気を上鰓器官に送り込むことによって
酸素を取り出すのである。
この際、一旦、上鰓器官を水で満たし、
古い空気を排出しなければ、
新しい空気を吸入することが出来ない。
あの「ベフッ」という音は、このときに起こる音なのである。
(もちろん、上鰓器官は「肺」ではないので、
 「雷魚」が肺呼吸をする、というのは間違いである。
 「雷魚」は他の魚のようにエラのみで呼吸をするのではなく、
 エラと上鰓器官を併用することで、呼吸を行なっているのだ。
 だから極端な話、
 エラ呼吸、上鰓器官のどちらかのみを使えないようにしても、
 「雷魚」は満足に呼吸することが出来なくなり、
 やがて死に至ることがある)

「雷魚」は、スズキ目タイワンドジョウ科に属する、
淡水魚の総称である。
タイワンドジョウ科とあるが、日本の水田などで見られる
あの「ドジョウ」とは全く別の種になる。
(「ドジョウ」はコイ目ドジョウ科であり、
 雷魚とはかなりかけ離れた種である)
中国から朝鮮半島、アムール川までのロシア沿岸に生息しており、
元々日本には生息していなかった。
これが日本に持ち込まれたのが、1900年代の初期で、
主に食用目的としての移入だったようである。
だが、江戸時代の文献にも
「雷魚」と思われる記述があることから、
ごく少数ではあるが、日本にも在来の「雷魚」が
生息していた可能性がある。
「雷魚」は、3つの種に大別できる。
1920年代に移入された「カムルチー」、
1906年に移入された「タイワンドジョウ」、
これに「コウタイ」と呼ばれる種が加わる。
だが、「タイワンドジョウ」と「コウタイ」については、
日本国内でもその生息域が限られており、
日本全国でもっとも一般的に目にすることが出来るのは
「カムルチー」である。
かなり大型に成長するのが特徴で、
1m近いサイズにまで巨大化することもある。
さらに中国や朝鮮半島では、食用として養殖もされており、
その魚肉は白身で、小骨も少なく淡白で美味しい。
スープ、煮込み料理、炒め物などに使われるが、
生食すると寄生虫の危険性がある。
日本では、食材として販売されていないため、
これを食べようと思えば、まず何らかの手段で
「雷魚」を捕獲する必要がある。

日本では、「雷魚」は釣りの対象魚としても
知られている。
日本での主流は、ルアーを用いたルアーフィッシングになるが、
引きが強烈なため、ブラックバス用のタックルでは
釣り上げることは難しく、専用のタックルを用意する必要がある。
ロッドは雷魚専用のルアーロッド、
ラインはナイロンラインではなく、
PEラインを用いるのが一般的である。
(PEラインは糸をよって作られたラインで、
 ナイロンラインの3倍程度の強度がある。
 ただ、熱に弱いという弱点もある)
ルアーについては、フロッグと呼ばれるカエル型の
トップウォータールアーを用いるのが一般的で、
これは「雷魚」が水草の生い茂っている水域に生息しているため、
シンキングルアーでは根がかりして釣りにならないためだ。
水草の上でルアーを動かしていると、
水面下からこれに食い付いてくる。
かなり激しく暴れ回るため、まわりの水草を大量に巻き込んで、
力尽くで引き上げることになることも多い。
(そのためPEラインのような、強いラインが必要になってくる)
釣り上げた際も、噛む力が非常に強いため、
素手でルアーを外そうとせず、ペンチなどを用いた方が良い。
日本での雷魚釣りは、
ゲームフィッシングとして行なわれることが多く、
釣り上げても、これを食べることは無い。

小魚や、カエルなどの小型水棲生物をエサとしているため、
在来種を食い散らかす、侵略的生物とされることも多いが、
水質の汚染などに弱い一面もあり、
ブラックバスほどには環境への影響は無い。
(ブラックバスなどに押されて、数が減っているほどである)
スネークヘッドなどと呼ばれる、独特の容姿をしているため、
「雷魚」を不気味がる人も多いが、
ブラックバスなどとは違い、
もともと日本に近い環境で生息していた魚なので、
日本の生態系の中にも、それほど違和感なく溶け込んでいる。

できれば「外来種」として、
目の色を変えて駆除していくのではなく、
隣の国からやってきた隣人、くらいの感覚で
受け入れてやりたいものである。

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