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スベリヒユ

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我が家の畑は、基本的に2つの野菜しか作らない。
大根とジャガイモだ。

ジャガイモの場合は3月くらいに種芋を植え付けて、
6月ごろに収穫する、いわゆる春ジャガと呼ばれるものだ。
大根の場合、9月ごろにタネを播いて、11月ごろから収穫を開始、
そのまま畑に2月ごろまで植え付けておいて、
必要な分だけを、食べるときに畑から引っこ抜いてくる。
大根→ジャガイモについては、大根の最終収穫と共に土を作り、
そのまま半月ほど置いてから、ジャガイモの種芋を植え付けるのだが、
ジャガイモ→大根の期間については、夏の暑い季節に2ヶ月間ほど
全く何も栽培しない期間が存在していることになる。

この2ヶ月間ほどの間に、何か別の作物を栽培できないか
考えてみたこともあるのだが、いかんせん期間が短すぎるのと、
その季節に栽培できる夏野菜は、あまり長期間の保存が出来ないものが多く、
さらには夏の暑い期間は、唯一の野菜消費者である自分の食欲が
がた落ちすることもあって、畑は全くの手つかずになっている。

さて、この手づかずの期間、畑の方はほぼ、
荒れるに任せた状態になっているのだが、
当然、夏の暑い時期なこともあり、雑草がわんさかと生えてくることになる。

生えてくる雑草というのは、それこそ多種多彩なのだが、
そんな雑草の中に1つ、多肉性のものがある。
その雑草は、ほぼ地面に這うようにして放射状に広がり、
丸みを帯びた葉と、赤味を帯びた太い茎を持ち、黄色い小さな花をつける。
そこそこ大きなサイズに育つのだが、中心部分を掴んで引っ張ると、
それほど苦労することもなく、あっさりと引き抜くことが出来る。
だから雑草処理としてはまことに簡単なのだが、
この雑草は、抜いても抜いても、また新しく生えてくる。
そう。
この雑草こそが「スベリヒユ」である。

「スベリヒユ」は、スベリヒユ科スベリヒユ属に属する多年生植物だ。
我が家の敷地内においては、とりあえず生えてきたら引っこ抜いているので、
年を越えるような「スベリヒユ」は存在していないが、
もしも自分が1年間、草むしりをさぼるようなことがあれば、
タップリと時間をかけて大きく育った「スベリヒユ」が
見られるのかも知れない。
先にも書いたように、多肉性であるために
他の雑草の繁茂している中ではわりとよく目立つ「草」なのだが、
改めてそれを意識して周りを見回してみると、
「スベリヒユ」は、我々の生活圏の中のあちこちに存在している。
休耕田の中で大繁茂していたり、
あるいは水田の畝や、住宅街の空き地などでも、
その姿を見ることが出来る。
世界的な視点でいえば、熱帯から温帯にかけて幅広く分布しており、
日本国内でもほぼ全土でその姿を見ることが出来る。
乾燥に強く、陽当たりの強い場所を好む傾向があり、
我が国では、その旺盛な繁殖力から雑草として嫌われていることが多い。

日本では「史前帰化植物」ということになっている「スベリヒユ」だが、
実際の話、正確な原産地というのはわかっていないというのが、
正しいようである。
日本の歴史が始まる前、恐らくは縄文時代か弥生時代ごろに、
稲作の文化と一緒に、日本に入ってきたのではないかと思われる。
ユーラシア、ペルシャ、東アジアなど、特定の地域が原産国ではないか?
と考えられることもあるのだが、アメリカ大陸などでは
コロンブスによる新大陸発見以前に「スベリヒユ」が繁茂しており、
それを考えると、世界的にも「史前帰化植物」として間違いは無いようだ。
漢字では「莧」と書く。
ただ、詳しく調べてみた所、この「莧」の一字では「スベリヒユ」ではなく
「ヒユ」という意味らしい。
調べてみるとヒユ科という科も存在しており、
「スベリヒユ」と同じナデシコ目ということになっている。
「鶏頭」などがこのヒユ科に属しているが、
正直にいって、見た目では全く共通点はないように思える。
従って、「スベリヒユ」を正しく漢字で書くと「滑莧」となる。
これは茹でた際に出るヌメリからつけられた名前らしい。

さて、先ほど「スベリヒユ」を茹でるという風に書いたが、
そこからも分かるように、「スベリヒユ」は食べることが出来る。
中国では生薬として用いられることもあり、栄養が豊富で、
特にωー3脂肪酸を多量に含んでいる。
これは人間の体内で生成できない必須脂肪酸の1つである。
その他にも、抗酸化作用のあるグルタチオンやビタミンB、
マグネシウムや鉄分なども豊富に含んでいるという話もあった。

我が家の畑に勝手に生えている雑草が食べられるというのであれば、
これは早速食べてみたくなる。
どんな調理をすれば食べられるのか調べてみると、
なんと生のままでも食べることが出来るという。
生食が出来るというのであれば、
大概の調理方法でもおいしく食べることが出来るはずだ。
実際に食べた人の話を読んでみると、茹でておひたしにしたり、
油で揚げて天ぷらにしたり、炒め物にしたりして食べられているようだ。
今回は、それらの調理方法の中から、炒め物を選んでみた。

畑から3株ほど「スベリヒユ」を引っこ抜いてきて、
根の部分を切り落とし、流水できれいに洗う。
よくよく全体を見てみると、黒く変色している葉もあるので、
そこの部分は手でちぎってしまう。
キレイに掃除し終わった「スベリヒユ」をまな板の上にのせて、
5センチ幅ほどのブツ切りにしていく。
特に気になるような臭いなどはない。
生の状態では、ヌメリも出てこない。
フライパンに油を敷き、充分に熱した所に「スベリヒユ」を放り込んだ。
しばらく炒めていると、葉の部分はしんなりとしてくるのだが、
茎の太い部分などは、しゃっきりとした固さを失うことはない。
塩・胡椒などで適当に味付けして、皿の上に移した。
茎の方はしゃっきりとしているが、葉はすでにベッショリとしおれている。
ひょっとしたら、炒めすぎたのかも知れない。
(ただ、インターネット調べた「スベリヒユ」の調理例を見た限りでは、
 どれもほぼ同じようになっていたので、
 もともとそういうものなのかも知れない)
茎の部分を1つ口の中にいれてみると、わりと歯ごたえがある。
反面、葉の方の存在感は全くといっていいほどなくなっている。
出来上がりの姿は、ツクシを調理したものに似ているが、
あれよりも遥かにクセが少なく、そして歯ごたえがある。
ウマいかマズいかでいえば、はっきりウマいと言っていい味だろう。
ただ、炒めたものでは、名前の元になったヌメリの方は感じられない。
そちらを味わいたいのなら、炒めるよりも茹でた方がいいようだ。

改めて、特筆するほどウマいというワケではないものの、
そこら辺に生えていて、いくらでも食べることが出来るということを
考えれば「スベリヒユ」は、下拵えがほとんど必要ないことも合わせて
相当使い勝手のいい食材であるともいえる。
ある意味、究極の野草といっていい。

ただ、その健康効果については、全くそれを実感することはなかった。
あくまでも、そういうこともあるよ、くらいに考えておいた方が
いいようである。

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