雑学、雑感、切れ味鋭く、思いのままに。

Falx blog 2

動物 雑感、考察 食べ物

カモ

更新日:

現在、日本で「肉」といえば、三大派閥に牛耳られている。

言わずと知れた、牛、豚、鶏である。
スーパーマーケットなどの精肉売り場を覗いてみても、
この3種以外の肉が置いてあるという所は、ごく稀であろう。
畜産という観点から見れば、牛と鶏には牛乳と卵という
別の商品も存在しており、肉用の牛・鶏だけでなく、
牛乳用・鶏卵用の牛・鶏もまた、肉用種とは別に飼育されている。

日本において、この三大派閥は巨大である。
この三大派閥以外の肉は、日本ではほとんど顧みられることはない。
この三大派閥に次ぐものとして考えられるのは、
羊肉ということになるのだろうが、三大派閥とはシェアの差がありすぎて、
第4勢力を名乗るのも憚られるほどである。
実際の所、日本の畜産のグラフを見てみれば、
その大半を三大勢力と、その派生商品(牛乳・卵)で占めてしまっており、
それ以外の肉については、ほんのわずかな「その他」という項目の中に
押し込められてしまっているのである。

この「その他」という、非常に狭いシェアの中で、
やはり頭1つ飛び抜けているのは、羊肉だろう。
地域によっては全く扱いが無いが、逆に地域によって
普通にスーパーに並んでいたりする。
残念ながら自分の住んでいる播磨地方のスーパーでは、
まずお目にかかることが出来ない。
それ以外の肉、ということになると、候補として上がってくるのは、
馬肉、鯨肉、そして今回のテーマでもある鴨の肉だろう。
馬肉は、店によってはごく稀に「馬刺」という形で販売しているし、
鯨肉も、赤味やベーコン、さらし鯨などを置いている所もある。
ただ、鯨肉の方については精肉売り場ではなく、
鮮魚コーナーに並んでいるので、一般社会的な認識としては
「魚肉」の一種と捉えられているのかも知れない。

鴨肉も、ごく稀に見かけることが出来る。
大方の場合、鴨肉単体で販売されていることは少なく、
「カモ鍋セット」の様な、セット販売品の中に封入される形で
店頭に並ぶことが多いようだ。
(少なくとも自分の周りでは)
セットの「華」として、もっとも目立つ所に3~4枚、
白い脂身を外縁部につけた鴨肉が並んでいる。

こういうスーパーの「カモ鍋セット」などに封入されている鴨肉は、
そのほとんど全てが「アイガモ」の肉である。
「アイガモ」というのは、カモとアヒルを掛け合わせたもので、
その味わいもカモとアヒルの、ちょうど間くらいである。
もともとアヒル自体が、カモを家禽化したものであり、
本質的にはどちらも同じ種であるといえるので、
このアイガモの肉を鴨肉として販売しても、間違いではない。
もちろん、この場合の肉は、以前に紹介した「アイガモ農法」の
副産物のカモなどではなく、もともと食肉用として
食べることを前提にして飼育されたものである。

一般的に「カモ」といっても、その種類は様々である。
先に書いたようなアヒルやアイガモも、
本来的に「カモ」といっていいものだし、
野生のものを考えてみても、カルガモやコガモなど何種類もいる。
ただその中で、もっとも「カモ」として認識されているのは、
やはり「マガモ」ということになるだろう。
緑色の頭、黄色いクチバシ、白い首輪、茶褐色の胸とそろえば、
これはいかにも「カモ」という感じがする。
ただ、正確に言えば、全ての「マガモ」がこの色をしているワケではなく、
このいかにも「カモ」らしいカラーリングをしているのは、
雄の「マガモ」だけである。
雌の「マガモ」は、全身が茶褐色の斑模様で、
どちらかといえば、カルガモなどに似た羽根色になっている。

「カモ」という種の代表格だけあって、日本では広く全国的に分布している。
もちろん、通年日本に生息しているわけではなく、
ちょうど冬の時期になると北から越冬のために日本に渡ってくる。
そして、春の訪れと共に、繁殖のため、再び北へと渡っていく。
日本での鳥猟は、この「カモ」がメインターゲットになっている節もあり、
ちょうど「カモ」が飛来してくる時期に合わせるように
猟期が設定されている。
湖沼、河川、海岸など水に近い場所に生息し、
そのまま水面上に浮かんで足で水を掻き、泳ぐことも出来る。
食性は雑食で、水辺の草や植物の種子などの他、貝なども食べる。
ただ、貝などを探す際に、水の中に潜るようなことはなく、
あくまでも水面に浮かんだまま、首を水中に突っ込むような形でエサを探す。
水深があるような場所だと、まるで逆立ちをしているようにも見える。
(逆立ちというよりは、金田一耕助シリーズ「八つ墓村」の
 助清の殺害シーンに似ている)

日本では古代から好んで食べられており、各地の貝塚から発見される
鳥の骨の中では「カモ」の骨がもっとも多い。
奈良時代に書かれた「播磨国風土記」には、鴨の羹が登場している。
羹というのは、現在で言う所の具入りスープの様なもので、
現代的に言えば「鴨汁」とでも表現すればよいか。
もともとは貴族などが食べていたようだが、
彼らはだんだんと雉や鶴などを食べるようになっていき、
「カモ」は一般庶民によって食べられるようになっていった。
「カモ」の肉は、肉食禁断令の対象外の肉だったため、
堂々と食べることの出来る肉だったようである。
(ちなみに鶏の方は、禁断令によって食べることが出来なかった)

現在、スーパーなどでは、なかなかお目にかかることの出来ない鴨肉だが、
肉の専門店などでは、比較的手軽に入手できるようになった。
もちろん、そのほとんどは食肉用に飼育された「アイガモ」肉で、
天然の「マガモ」はほとんど流通していないようだが、
そちらの方も、現在ではインターネットを通じて
購入することが可能である。

かつては庶民の肉であった鴨肉も、
時代を経て、すっかりお高い肉になってしまったが、
トキやコウノトリの様に、絶滅する所までいかなかったことは
幸いであった。

Related Articles:

にほんブログ村 その他生活ブログ 雑学・豆知識へ
にほんブログ村

スポンサーリンク
スポンサーリンク

-動物, 雑感、考察, 食べ物

Copyright© Falx blog 2 , 2022 All Rights Reserved Powered by STINGER.