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ラー油

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調味料には、圧倒的な使用頻度格差がある。

自分の場合、もっとも頻繁に使っている調味料は「砂糖」である。
料理に使うこともあるのだが、それ以上に飲料に使うことが多い。
早い話、コーヒーを飲む際に「砂糖」を入れるのだ。
コーヒーは毎日、数杯は飲んでいるので、
その度に一定量の「砂糖」を消費しているわけだ。
我が家の中で、もっとも減りが早い調味料であり、
スーパーなどの特売品の中に「砂糖」の文字があれば、
とりあえずその度に買って、備蓄しておくほどに使用頻度が高い。

一方で、「塩」の消費は鈍い。
こちらの方は、純粋な調味料としての使用より、
野菜などに振りかけて塩揉みし、水分を抜くのに使ったりするのがメインだ。
冬場は大根相手に大活躍をするのだが、大根のない季節だと
その使用頻度はガックリと落ちてしまう。

「醤油」に至っては、我が家に存在していない。
その代わりとして使っているのが、濃縮3倍タイプの「昆布ダシ」だ。
見た目は醤油とほとんど変わらないが、醤油ほど濃い味ではないので
醤油をかけるような場面では、全てこちらで代用している。

胡椒」というのも、我が家には存在していない。
その代わりに使っているのが、「塩・胡椒」という混合調味料だ。
これは塩・胡椒・旨味調味料が混合されているもので、
使い勝手が良いため、わりと日常的に使用している。
汁物(スープ)、炒め物、焼き物と、何にでも使えるのが嬉しい。

「油」も使用量の少ない調味料の1つだ。
もっとも油などは、調味料の範疇に入れて良いのかどうか、
首をひねりたくもなるが。
「油」を大量に使うと、後々、洗い物や掃除が大変なので、
一人暮らしになってからは、パッタリと使用量が減ってしまった。

この「油」。
一応、安売りの際に1ℓ入りのものを買って使っているのだが、
これとは別の油も残っている。
調味料入れの中で、すっかり忘れ去られたようになっている
「ラー油」の小瓶である。
こちらの小瓶には、おおよそ30gの「ラー油」が入っていたのだが、
今ではほとんど使い切って、底の方にわずかに残っているだけだ。
ただ、ふと賞味期限をチェックしてみると、
恐ろしいことに4~5年も前に切れてしまっている。
ここ数年の間でも、友人から野菜を貰ったときなどに
この「ラー油」をかけて食べた記憶があるのだが、
あれらは全て、賞味期限切れの「ラー油」を使っていたことになる。
そうして使った「ラー油」の量は、結構な量になるはずなので、
賞味期限が切れたときにも、ずいぶんな量の「ラー油」が
残っていたことになる。
(何せ、自分でこの「ラー油」を買った記憶がないのだから、
 これがどれだけ前のものなのか?ということに関しては、
 考えるのも恐ろしいことだ。
 それでも、腹を下すようなことはなかったのは幸いであった)

「ラー油」は、唐辛子などの香辛料を植物油の中で加熱して、
その辛味成分を油の中に抽出した中華調味料である。
「ラー油」は漢字で「辣油」であり、
「辣」とは唐辛子の辛さの様な、熱を伴う辛さのことを指している。
一般的に「ラー油」は、辛みを抽出した後の唐辛子などを取り除き、
純粋な液体部分のみを販売していることが多いが、
本場・中国では、それら辛味成分を抽出した後の薬味を、
そのまま残したまま販売、使用されている。
日本では10年ほど前に、同じように薬味を油中に残した……というか、
それ以上に様々な具材を投入した「食べるラー油」というのが発売され、
大きなブームを巻き起こした。
これは10年経った現在、すっかり定番商品と化して
スーパーマーケットの調味料コーナーや珍味コーナーに並んでいる。

さて中華料理、ことに四川料理には欠かせない「ラー油」だが、
これはいつごろから作られ始めたのだろうか?
中国4000年の歴史、なんていう言葉から想像して、
とてつもなく古い時代から「ラー油」があった、と考える人が
いるかも知れないが、実は「ラー油」の歴史は
長くても400年ほどのものである。
つまり、4000年の中国の歴史からしてみれば、
わりと最近といっていい時代のことだ。
これには理由がある。
「ラー油」に欠かすことの出来ない原料である唐辛子が、
1500年ごろまで、アメリカ大陸にしかなかったからである。
コロンブスがアメリカ大陸に到達したのが1492年。
胡椒を求めて新大陸に達し、そこをインドだと勘違いしていたコロンブスは
そこで見つけた唐辛子を胡椒だと思い込み、ヨーロッパへ持ち帰った。
唐辛子が、英語で「レッドペッパー(赤胡椒)」と呼ばれているのは、
その名残である。
これが50年ほど経って、日本へもたらされる。
中国にもたらされたのは日本よりも遅く、1600年代に入ってからである。
当然、「ラー油」が作られ始めたのは、それ以降ということになる。
(ちなみに中国を経て伝わったわけでもない唐辛子に、
 「唐」という名前がついている件だが、当時の「唐」には
 漠然と「外国」というような意味があったらしい)

日本にいつ、「ラー油」が伝わったか?ということに関しては、
ハッキリとしたことは分かっていないようだ。
江戸時代中、長崎の出島に入ってきていたか、
あるいは明治維新後に、中国から伝わったのか?
ただ、日本で商品としての「ラー油」(当時は「中華オイル」といったらしい)
が発売されたのは、戦後20年ほど経った1966年のことらしい。
主に、焼き餃子のタレに入れるというような使い方が多く、
それ以外の使われ方では、特に目立ったものはなかったようだ。

さて、我が家で発見された、いつ買ったのか分からない、
もう4~5年も前に賞味期限の切れた「ラー油」。
古いから、ということで処分してしまうのは簡単なのだが、
これを処分すると、恐らくこの先、
「ラー油」を買ってくるということ自体、ないであろうため、
我が家での「ラー油」の歴史が終わってしまうことにもなるだろう。
そういう風に考えると、ちょっと捨てるのに戸惑いを感じてしまう。

まあ、貧乏性である。

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