前回、前々回と、怪獣王・ゴジラの「ライバル」について書いてきた。
そのラストとなる今回は、ゴジラ最大のライバルである、
あの怪獣について書いていく。
ここまで、様々な怪獣をゴジラの「ライバル」と捉えて、
それらの怪獣について書いてきた。
ゴジラが最初に戦った、暴竜・アンギラス。
ゴジラの最大の敵はゴジラ、のキャッチフレーズと共に生み出された
メタリックボディのロボット怪獣・メカゴジラ。
ゴジラとの戦いで、着実に勝ち星を重ねるゴジラハンター・モスラ。
シャープな未来的デザインが人気を呼んだ、サイボーグ怪獣・ガイガン。
彼らは、それぞれに何度もゴジラと戦い、
「ライバル」としての立場を築いて来た。
しかし現在、「ゴジラのライバルは?」と聞かれた人が、
まず第1にその名前を挙げるであろう怪獣は、そのどれでもない。
多くの人々が、ゴジラの「ライバル」と聞いて、まず思い浮かべる怪獣は、
モスラでも、メカゴジラでも、ましてやガイガンでもアンギラスではなく、
3つの首と2本の尾を持つ、金色の宇宙大怪獣・キングギドラである。
このゴジラ最大のライバルが、初めてスクリーンに登場したのは、
ゴジラシリーズ第5作目、「三大怪獣 地球最大の決戦」である。
ゴジラシリーズは、2作目「ゴジラの逆襲」において
初めて他の怪獣である暴竜・アンギラスが登場。
ゴジラが日本初の怪獣であるとすれば、
アンギラスは日本で2番目の怪獣であり、
「怪獣」というカテゴリーが、ゴジラだけでないことを見せつけた。
この2匹の怪獣は、劇中で死闘を繰り広げ、
後々に続く「ゴジラ対○○」という路線の基礎を作り上げたといえる。
7年後、海外からキングコングという、元祖・怪獣キャラクターを招き、
第3作目「キングコング対ゴジラ」が製作され、これがヒット。
その2年後、国内の2大怪獣キャラクターを対決させる
第4作目「モスラ対ゴジラ」が製作され、これまたヒットを飛ばした。
(この映画は、ゴジラ映画4作目であると同時に、
モスラ映画の第2作目として位置づけられている)
この「モスラ対ゴジラ」の成功を受けて製作されたのが、
当時の東宝映画の3大怪獣キャラクターを総出演させた
「三大怪獣 地球最大の決戦」である。
この作品では、前作「モスラ対ゴジラ」のモスラ、ゴジラに加え、
単体で主役を張っていたラドンを参加させている。
ゴジラシリーズの第5作品目と位置づけられているこの映画だが、
作品タイトルを見ても分かる通り、そこには「ゴジラ」の名前は無く、
主人公はあくまでも「三大怪獣」ということになっている。
ひょっとすると、このころにはまだ、ゴジラシリーズなんていう概念は無く、
どれもこれも大雑把に「怪獣映画」という括りだったのかも知れない。
ともかく、当時の三大怪獣を向こうに回して戦う悪役として登場したのが、
この黄金の三首竜・キングギドラだ。
かつて、金星にあった高度な文明を3日で滅ぼしたとされている。
怪獣王・ゴジラであっても地球の文明を3日では滅ぼせないだろう。
(まあ、キングギドラは空を飛べるというのが大きいのだろうが……)
この「三大怪獣 地球最大の決戦」では、ゴジラといえども
単体ではキングギドラに適わないような描写がされており、
少なくともこの時点での実力は、明らかにゴジラより上である。
続く「怪獣大戦争」においても、X星人はキングギドラを倒すために
ゴジラとラドンを貸してほしいと言って来ており、
この映画の時点でも、その力はゴジラ以上と評価されている。
次の登場となった「怪獣総進撃」では、キラアク星人の切り札として
10体もの怪獣と戦うことになった。
さすがにかつての三大怪獣+7匹が相手では圧倒的不利は否めず、
最後は袋だたきに近い状態になって命を落としているが、
これでキングギドラの評価が下がることは無いだろう。
「ゴジラ対ガイガン」においては、ガイガンとダッグを組んで
ゴジラ&アンギラスと対決、破れはしたものの存在感を示した。
この辺りに来て、ようやくゴジラの実力が
キングギドラ並になったといえる。
ちなみに、この「ゴジラ対ガイガン」をもって、キングギドラの
昭和ゴジラシリーズへの出演は最後となる。
次にキングギドラが登場するのは、平成ゴジラシリーズ3作目である
「ゴジラVSキングギドラ」だ。
何気に、映画タイトルにキングギドラの名前が出たのは、
これが初めてである。
こちらは未来人の手によって生み出された超ドラゴン怪獣ということに
なっているが、未来人のコントロールが無くなってゴジラに敗北、
さらに未来人の技術によってメカキングギドラとして蘇り、再戦するが、
それでも痛み分けに持ち込むのが精一杯であった。
明らかに実力的に、ゴジラを下回っている。
ただ、続く「VSモスラ」「VSメカゴジラ」という
かつての「ライバル」たちに先んじて復活している所を見ると、
やはりゴジラ最大の「ライバル」は、キングギドラということなのだろう。
平成ゴジラシリーズでは、キングギドラが登場したのは
この1本のみとなった。
ミレニアムゴジラシリーズでは、第3作目である
「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」と、
最終作「ゴジラ ファイナルウォーズ」に登場している。
どちらの映画においても複数のライバル怪獣が登場したが、
どちらの作品においても、キングギドラは最後の大トリを務めた。
「大怪獣総攻撃」では、モスラの力を受けてギドラ→キングギドラ、
「ファイナルウォーズ」では、モンスターX→カイザーギドラと、
その形態を変化させている。
(カイザーギドラをキングギドラといっていいのかは、不明だが……)
ただ、どちらのキングギドラも作品中の「ライバル」の中では
最強であったが、残念ながらゴジラ相手に敗れている。
ちなみにこの「大怪獣総攻撃」と、平成ゴジラシリーズの
「VSキングギドラ」のメカキングギドラについては、
その立場が正義側(人類側)になっていた。
こうして一連のキングギドラの活躍を並べてみると、
初登場の圧倒的な強者感は、作品が進むごとに弱くなっていき、
最終的には、ゴジラとほぼ互角か、それより劣るレベルにまで
その実力は低下して来ている。
(実際には、キングギドラが弱くなったのではなく、
主役であるゴジラの方が強くなったのだろうが……)
ただ、初登場時に圧倒的に強く、次第に主人公と同等の力関係になる
というのは、「ライバル」キャラクターの大定番であるといって良い。
この辺りをしっかりと踏襲している所が、
キングギドラを、ゴジラ最大の「ライバル」に押し上げている要因だろう。
この先もゴジラシリーズには欠かせないであろう「ライバル」たち。
その中にあっても、やはりキングギドラは最大の「ライバル」で
あり続けるに違いない。
さて今回は、3回にわたって怪獣王・ゴジラの「ライバル」たちについて
取り上げて来た。
改めて、その「ライバル」たちを見てみると、
どうしても、昭和ゴジラシリーズに出ていた怪獣ばかりが
いつまでも「ライバル」として活躍し続けている一方、
平成、ミレニアムで新しく登場した怪獣たちは、
その後、新しい「ライバル」として定着していないようである。
新しいキャラクターが定着せず、いつまでも古いものばかりが活躍していては
シリーズとしては先細りしていくしか無いだろう。
何とかして、ゴジラに新世代の「ライバル」を。
それが出来るかどうかに、シリーズの未来がかかっている気がしてならない。