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動物 雑感、考察

アライグマ

投稿日:

自分がまだ小学生だったころ、我が家に1つのぬいぐるみがあった。

自分が覚えている限りでは、全身がややくすんだオレンジ色をしており、
尻尾には濃いブラウンの縞模様が入っていた。
顔の辺りから腹にかけては毛が白く、
(全身が毛皮の様に加工してあるぬいぐるみだった)
手と足の先の部分は、やはりブラウンであった。
我が家ではそのぬいぐるみを「ラスカル」と呼んでいた。
もちろん、TVアニメ「あらいぐまラスカル」のそれである。

なるほど。
確かに全身の色合いなどは、アニメキャラクターである「ラスカル」に
そっくりである。
世界中を探してみても、これだけ明るいオレンジ色をした
アライグマというのは、あのアニメのアライグマしか考えられない。
しかし、我が家の「ラスカル」には、アニメの「ラスカル」との
決定的な違いがあった。
顔である。
現在、インターネットの画像検索を使い、
「ラスカル ぬいぐるみ」というワードで検索をかけると、
アニメのキャラクターそっくりな「ラスカル」のぬいぐるみが
画面一杯に表示される。
それらの顔をよく見てみると、
「目」はどれも判で押したように、やや縦長の黒い丸である。
「ラスカル」のぬいぐるみの中には、表情のついているものもあるのだが、
目を閉じている場合などを除けば、目については
ほぼこのパターンで作られている。
我が家の「ラスカル」は、ここが違っていた。
我が家の「ラスカル」の目はプラスチック製で、
白目と黒目が明確に別れて作られていた。
(もっと詳しく書くと、目は透明な円板状のプラスチックケースの中に
 黒い丸い板が入っているもので、ぬいぐるみの顔を動かすと
 微妙に黒目の位置が変わる仕掛けになっていた)
さらにヒョコンと尖った鼻先には、
赤いプラスチックの玉が縫い付けられており、
それが鼻の態を成していた。
改めて画像検索の結果と比べあわせてみると、
画像検索の方の「ラスカル」の鼻は、どれも黒い。
まあ、アニメキャラクターがそうなっているのだから、
それを元に作った「ラスカル」の鼻が黒いのは、当然のことだろう。
詰まる所、我が家の「ラスカル」は、
一時の「ラスカル」ブームに便乗する形で生産された
全くのニセモノであったらしい。

日本における「アライグマ」という動物の認知に、
「ラスカル」の果たした役割は大きい。
世界名作劇場の第3作として1977年に放送された
「あらいぐまラスカル」は、アメリカの作家・スターリング・ノースの
小説「はるかなるわがラスカル」を原作としたアニメ作品だ。
ほぼ1年間を通して全52話が放送された。
このアニメが人気を博したため、ペットとして大量のアライグマが
日本へと持ち込まれる結果となった。
そしてこれらが逃げ出したり、捨てられるなどして野生化し、
農作物などへの被害が出るようになった。
アニメ放映からおおよそ30年後の2005年、
「アライグマ」は特定外来生物の指定を受け、
以降は、これを輸入することも、ペットとして飼うことも
出来なくなっている。

「アライグマ」は、アライグマ科アライグマ属に属するほ乳類だ。
全長は60㎝〜1m程度、体重は10kgほどだが、
飼育下においては20kgに達するものもいるという。
全身はほぼ灰褐色で、目の周りから頬にかけて黒い斑紋がある。
はっきりいって、体色や顔つきはタヌキにそっくりである。
タヌキとの大きな違いは尻尾の色で、
長くフサフサとした尻尾には、黒い横縞模様が入っている。
……。
さて、ここで「あれ?」と思った人も多いだろう。
今ここで挙げた特徴は、先ほどのぬいぐるみの特徴と
全くといっていいほどに違っている。
ぬいぐるみの体色がオレンジだったのに対し、
「アライグマ」の体色は灰褐色。
ぬいぐるみの顔がほぼ白色なのに対し、
「アライグマ」の顔には、目の周りにタヌキと間違えるほどの
大きな黒い斑紋がある。
ぬいぐるみと一致している特徴といえば、尻尾の縞模様ぐらいのものだ。
これでは、アニメに出てきた「ラスカル」は「アライグマ」ではなく、
全く別の動物の様である。
まあ、それもそのはずで、もともとアニメの「ラスカル」のデザインは
実際の「アライグマ」に準拠したものであったらしいのだが、
それでは「可愛くない」という身もフタもない理由で
デザインに変更が加えられた。
体色は明るいオレンジ色に変更され、顔の黒い斑紋は無くなり、
真っ白い顔に変更された。
一説によると、レッサーパンダを元にデザインし直したらしい。
確かにレッサーパンダの写真を見てみると、
「アライグマ」の写真よりも、ずっと「ラスカル」っぽい。
つまり、「あらいぐまラスカル」に出てきた「ラスカル」は、
「アライグマ」を名乗っているものの、実際にはスタッフが
レッサーパンダを元にして創作した、まったく架空の生物ということになる。

もともとの生息地は、北米を中心としたアメリカ大陸である。
北米以外では、ヨーロッパの一部とベラルーシやアゼルバイジャンといった
旧ソ連の一部地域、さらに日本にも生息している。
基本的には山野に棲むが、都市など人間の生活圏内にも棲みつく。
食性は雑食性で、様々な小動物や昆虫類、野菜や果物、木の実などの植物、
さらにはウミガメの卵や、イノシシやシカなどの死骸、
人家に近い所では人間の出した生ゴミを食べることもある。
「アライグマ」の名前の通り、前足を水の中にいれて
何やら洗っているような仕草を見せるが、
実際には何かを洗っているわけではなく、
水中のエサを捕まえようとしているだけらしい。
アニメでは非常に愛らしい姿で描かれており、
そこから「アライグマ」を飼いたいという子供を大勢生み出し、
それが大量の「アライグマ」を日本へ持ち込む原動力となったわけだが、
実は可愛い容姿(アニメ版は特に)にも関わらず、
その性格はかなり荒く、特に大人になった「アライグマ」は
とてもペットとして飼えるようなものではない。
(実際、「あらいぐまラスカル」でも、成長し性格の荒くなった
 「ラスカル」を主人公が持て余し、これを森に返すことで
 ストーリーは終わっている)
ちなみに「ラスカル」という名前は「乱暴者」という意味である。

さて、アニメ「あらいぐまラスカル」を見て、その可愛らしさから
自分も「アライグマ」を飼いたいと考える人が現れたのは
当然のことだろう。
しかし、アニメの「ラスカル」がやって来ると思って「アライグマ」を
注文したら、やって来たのは尻尾に縞模様のあるタヌキのごとき生物。
というよりは、タヌキそのものにしか見えなかっただろう。
「騙された!」と思った人もいたかも知れない。
しかし、そのタヌキのごとき生物は、
まぎれもない「アライグマ」なのだから、これはサギでもなんでもない。
文句をいいたい所だが、よくよく考えれば実際の「アライグマ」が
どういう生物なのか確かめもせずに注文した方が悪いのである。
目の前のタヌキにしか見えない生物には愛着がわかないし、
性格も考えていた以上に荒い。
無責任ではあるが、いっそ捨ててしまおうかと考えたのも、
無理はないことなのかも知れない。
当時は、外来種とか大きく騒がれる前であったし、
なんといっても見た目はタヌキそっくりなのだ。
こっそり捨てても、そんなには目立たないだろう。
そう考えた飼い主たちが、「アライグマ」を日本の山野に放つことになった。
そう考えれば、アニメ「あらいぐまラスカル」で、
「アライグマ」の姿を現実のそれから乖離させてまで、
愛らしく仕上げたアニメスタッフの罪は、
決して小さなものとは言えないだろう。

我が家の「ラスカル」に話を戻すと、
自分はあのぬいぐるみには、全く興味が持てなかった。
その代わり、といってはなんだが、妹や弟には非常にウケがよく、
散々可愛がられた「ラスカル」は、
仕舞いにはボロボロになってしまっていた。

怪しげなニセモノの「ラスカル」にしては、
十分以上の天寿を全うしたというべきだろうか?

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