雑学、雑感、切れ味鋭く、思いのままに。

Falx blog 2

動物 雑感、考察 食べ物

肉の熟成

更新日:

先日、シカを一緒に解体した友達から、こんなことを聞かれた。

「シカ肉の熟成の話はどうなったんだ?」

不意に聞かれて、思わず首をひねってしまった。
何でも友人によると、以前、シカ解体の話を書いた際、
シカのスネ肉をシチューにしてみたものの、これがひどい固さで
ひと鍋食べ終わるころには、顎がガタガタになったことが書かれていた。
その話の締めが、シカ肉を熟成させて食べてみるが、
果たしてウマくなるのだろうか?と、次に続く様な締めだったというのだ。
慌てて自分の書いた記事を読み返してみると、
なるほど、確かにシカ肉の熟成を試しに行なってみる
みたいな感じで終わっている。

そういう締めをしたにも関わらず、その後は「紙芝居」の話やら
恵方巻き」の話やらが続いて、シカ肉の話が出てこない。
さすがにこのまま放置しておくのもマズいな、ということで、
遅ればせながら、今回、あのとき熟成に回したシカ肉がどうなったのかを、
ぼちぼちと書き綴っていきたいと思う。

まず、あの日、解体して持ち帰ったシカ肉の行方から書いていこう。
友人と2人で1匹のシカを解体し終わった後、
自分と友人は、それぞれ半分ずつの肉を持ち帰ることにした。
大雑把に書き出せば、前足1本、後ろ足1本、背ロース1本分の
シカ肉である。
シカは、まだ1歳になるかならないかくらいの子鹿だったのだが、
それでも、その半分の肉ということになると、かなりの量になる。
友人は家族がいるため、大量の肉であっても消費できるし、
肉を保存しておくための冷凍庫も完備している。
しかし、我が家は自分1人だけの暮らしであるし、
何よりも冷蔵庫は小さく、冷凍庫はさらに小さいという状況なので
シカ半体分の肉を長期保存することが難しい。
そういうことになると、この大量のシカ肉を誰かに分け与えて、
その量を減らすしか無い。
自分の身近な人間で、躊躇無くシカ肉を食べるという人間は
2人しかいない。
その2人のうち1人は、一緒にシカを解体した友人なので、
シカ肉は余るほど持っている。
そうなるともう1人、自分の弟に貰ってもらうしかない。
幸いにして、弟は結婚しているので、その消費力は単純に考えて
我が家の倍である。
さらに都合のいいことに、弟はかつて肉屋で働いていたことがあり、
肉の扱いにかけては、かなり長けている。
自分は早速、弟に連絡をとり、肉を貰ってもらう手配を整えた。

問題はここからである。
こういう事情で肉を貰ってもらうため、
あまりヒドい部位を渡すわけにはいかない。
自分は持ち帰ったシカ肉の中から特に筋が少なく、
柔らかそうな部分を取り分けた。
早い話、後ろ足のモモの部分など、比較的筋の少ない、
柔らかそうな部分を弟に回すことにしたのである。
さらに希少部位である背ロースについても、その半分を弟に回した。
その結果として手元に残ったのが、大量のスジ肉、スネ肉である。
細かいスジが入り組んでおり、いかにも噛み切りにくそうだ。
ただ前回、それらのスネ肉をブツ切りにして作ったシチューでは、
固いはずの肉を非常に柔らかく食べることが出来たため、
固そうな肉ばかり残っていても、それほど気にならなかったのである。

しかし今回、そのスジ肉、スネ肉で作ったシチューは驚くほど固く、
山ほどシカ肉を入れて作ったそれを、ひと鍋食べ終わったころには、
自分の顎がガタガタになってしまっていた、というのが、
「シカ解体」の話で書いた所になる。

この結果を友人に話した所、やはり友人の所で調理したシカ肉も、
相当な固さだったということであった。
彼の話によれば、シカを解体してすぐに調理したため
死後硬直がとけておらず、肉が固かったのではないか?と
いうことだった。
そういうわけで、手元に残っている肉(背ロース半分と、スジ肉、スネ肉)
はその後、さらに2〜3日置いて、カレーにしてみることにした。
ちょうど、シカを解体してから4〜5日ほど経っている。
さすがにもう、死後硬直もとけているだろう。

そう考えて、残りのスジ肉、スネ肉を全て使ってカレーを作ったのだが、
なんということか、肉の固さはまるで前回のままであった。
当然、前回にシチューのときと同じように
ひと鍋を食べ終わるころには、自分の顎は再びガタガタになっていた。
まさか死んで4〜5日もたつのに、
まだ死後硬直がとけていないということもないだろう。
つまり、この肉の固さは、シカの個体差ということなのだろう。

調べてみた所、肉の熟成というのは精肉された状態ではなく、
枝肉の状態で行なうものだという。
枝肉の状態で熟成を行なえば、水分が蒸発したりすることによって
肉は60%ほどの重量になるらしい。
さらにその表面は黒く変色して、白いカビがびっしりと生えるので、
食べるときには表面をさらに削り落とし、
食べることの出来る部分は、随分と減ってしまうのだそうだ。
だとすれば、今回のシカ肉にしても、細かく精肉せずに、
枝肉の状態で熟成させれば良かったのだろうか?
だが、肉を熟成させるには2〜4度という低温状態で
肉を保管せねばならないため、どちらにしても我が家では無理である。
これを行なえるだけのサイズを持った冷蔵庫が無いからだ。

では仮に、肉の熟成に成功すれば、一体、どんな感じになるのか?
調べてみた所では、肉は柔らかくなり、香りと旨味が増すそうだ。
実際に牛肉などでは、肉を熟成させて販売している所もあるそうだが、
先に書いたように、水分が飛んで重量自体が減るのと、
さらに周りを削り落とすために、肉が小さくなり、
価格が跳ね上がってしまうそうである。
熟成にかかる期間は、牛肉で8〜10日、豚肉で3日、
鶏肉だと6〜12日ほどかかるらしい。
どうやら肉(枝肉)のサイズと熟成期間の間には、
相関関係の様なものは無いらしい。

ちなみに牛や豚、鶏などの熟成期間を調べるのと一緒に、
シカ肉の熟成期間についても調べてみた。
こちらの方は、どうしてもその流通量が少ないせいか、
肉の熟成についても情報が少ない。
しかもその情報自体に一貫性が無く、
他の肉と同じように熟成期間が必要だとするものもあれば、
シカ肉は熟成させずに新鮮なものを食べた方がいい、とするものもあった。
正直、どういう風に扱えばいいのか、はっきりしたことはわからない。

そんなわけで、今回最後に食べたのが、
シカ肉の中でもっとも美味しいとされている部位・背ロースである。
こちらは1週間ほど、塊のまま冷蔵庫の中で保管した後、
ある程度の薄さにスライスして、
タマネギなどと一緒にフライパンで炒めた。
味付けには市販の焼き肉のタレを使用したので、簡易的な焼き肉である。
こちらの方は、もともと柔らかい部位だったせいか
それなりに柔らかく、美味しく食べ切ることが出来た。
ただ、血抜きの状態に問題があったのか、
ロース肉のはずなのに、レバーに近い様な味わいがあった。
あるいはこれが、熟成の進んだシカ肉の味、ということなのだろうか?
真相は不明なままである。

今回の失敗で、1つ学んだことがある。
固い肉を、どうにか食べやすくするためには、肉質そのものを
柔らかく変化させる方法を狙うよりも、肉自体を細かく、
出来ればミンチ状に近い状態に加工した方が、有効なのではないか?
ということである。
そうすると、必然的に口の中で肉を咀嚼する回数も減り、
顎への負担もグッと軽減される。

もし次回があるのであれば、シカ肉(固い部分)の細分化を
試してみようと思う。

Related Articles:

にほんブログ村 その他生活ブログ 雑学・豆知識へ
にほんブログ村

スポンサーリンク
スポンサーリンク

-動物, 雑感、考察, 食べ物

Copyright© Falx blog 2 , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.