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シカ解体 再び〜その2

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目の前には、全身の皮を剥がされ、首をちょん切られ、
逆さ吊りに吊るされたシカがある。

手足(まあ、厳密にいえば前足と後ろ足になるのだが……)の先には
蹄と毛皮が残っており、そこだけがミョーに生々しいのだが、
それでも目の前にぶら下がっているのは、シカの死体ではなく、
シカ肉の塊であるといえるくらいには、見た目が落ち着いてきた。
(まあ、初めてシカの解体を見る人の目には、
 これでもかなりグロテスクに映るだろうが……)
後はここから肉や手足を切り分けていくだけである。

まず、一番最初に切り取るのが、「背ロース」と呼ばれる部位だ。
シカの背中には、ちょうど背骨の左右に沿う様に
2本の棒状の肉がついている。
非常に柔らかく、シカ肉の部位の中では
もっともウマいとされる高級部位である。
猟師の中には、シカを捕った際、ここの部分の肉だけを取って
他は全て廃棄してしまう者もいるという。
あまり気持ちのいい話ではないが、
それだけこの「背ロース」には価値があり、
ジビエ料理の専門店に売る場合でも、高く売れるということらしい。
背骨に沿うようにして、ナイフで縦に切れ目を入れ、
然る後、横から肋骨に沿う様に切れ目を入れて切り離す。
シカのサイズにもよるが、4〜50cmほどの棒状の肉塊が
左右1本ずつ、合計2本とれる。
一緒にシカを解体している友人と、1本ずつ持って帰ることにする。

「背ロース」をとった後は、足を切り離す。
シカは後ろ足を縛って吊るしてあるので、
まずは前足から切り離していくことにする。
実際に、肉塊を解体してみれば分かるのだが、
肉体というのは、大きな1つの肉で出来ているのではなく、
大小様々な大きさの肉が組み合わさって出来ている。
この場合の肉は、筋肉と言い換えてもいいだろうか。
シカ肉の場合、牛や豚と違って「脂」といわれる部分が本当に少ない。
だから本当にその肉塊は、純粋な筋肉の集合体のごとき雰囲気がある。
ただそれらの筋肉の集まりは、実際に見たり触ったりすると
その境目が分かる。
そこの部分をナイフの刃先で軽くなぞってやる様にすると、
ペリペリと簡単に皮が剥がれた様に、簡単にバラバラにできる。
シカの前足と胴体も、その筋肉のつなぎ目に沿う様に刃を走らせると、
結構、簡単にこれを切り分けていくことが出来る。
だが、足と胴体は肉だけによって、くっついているわけではない。
そこには芯となる骨があり、関節があり、筋がある。
さすがに骨には刃が通らないので、肉を切り分けて
関節部分を露出させた後、ここに刃を入れて外さなければならない。
周りの筋部分を全てキッチリと切断し、上手く関節部分に刃を入れれば、
そこからぽろりと肉塊は分断されることになる。
シカの前足の付け根には、人間の肩甲骨の様な平べったい骨があり、
その周りの肉を切り開き、筋を切り、骨と骨の継ぎ目と思わしき所を
ナイフでゴリゴリやっていると、ぽろりと前足がとれるというのが
自分の偽らざる実感である。

続いて後ろ足の切断にかかる。
やはり同じ様に、肉の継ぎ目から切り開いていき、
関節部分に至ったら、周りの筋を切り、
関節のつなぎ目部分をゴリゴリとやる。
シカは、前足よりも後ろ足の方に肉がたくさんついており、
これらを切り開いていくのも前足より手間がかかる。
ただ、前足の様な平べったい肩甲骨(?)は無いので、
総合的な手間を考えれば、どっちもどっちといった所か。
後ろ足を縛って肉塊を吊るしているわけだから、
後ろ足と胴体を切り離せば、胴体はボトリと地面に落下する。
他の動物はどうなっているのか知らないのだが、
シカの場合、胴体にはほとんど肉がついていない。
一番最初に切り取った「背ロース」が、唯一、
胴体からとれるまとまった量の肉であり、
それ以外の肉は、ほぼ全て、足の方についているといっていい。
ブタなどは、肋骨部分にも脂身を大量に含んだバラ肉があるが、
シカの場合、そういうことはほとんど無く、
食べれる箇所を探すのが大変なほど、肋骨部分は薄っぺらである。
解体の名人であれば、ここからさらに肉がとれるのかも知れないが、
残念ながら我々は、ここはこのまま廃棄することにする。

こうして出来上がったのは、「背ロース」が2本、
前足2本、後ろ足2本だ。
鶏であれば、このまま足を骨と一緒に焼いて食べることも出来るが、
シカの足の大きさではそれも不可能である。
だから、改めてこの足の肉を細かく解体しないといけない。
その際、シカの足の骨がゴミとして出ることになるのだが、
このシカの骨は結構サイズが大きいので、
これを普通ゴミとして出せば、下手をすればゴミの中から
人骨が見つかったなどという騒ぎにもなりかねない。
友人は猟師であり、狩猟免許も持っているので
そうなっても言い訳も容易いかも知れないが、
自分の場合はそうでは無いので、おかしな誤解をされれば
それを解くのも一苦労である。
そういう誤解を避けるためにも、
シカの骨についてはここで全て取り外し、
頭や肋骨などと一緒に処理してもらわなければならない。
もっとも、骨と肉を取り分けるのはそれほど難しくはない。
シカの足の骨なんてまっすぐな棒に近いし、サイズも大きい。
一度、骨まで刃を入れて、後は骨をこそげる様に刃を動かすと、
わりときれいに骨だけを取り外すことが出来る。
そうしてひととおりの骨を取り除いたシカ肉を、
ビニール袋に入れて、家から持ってきたクーラーボックスの中に入れる。
実はこの時点では、肉がまだ少々熱を持っている。
特に大きな塊では、外側は冷たい空気に触れているものの
中心部には、シカが生きていたころの熱が残っている。
この季節なので、それでも特に問題はないのだが、
もし夏場(猟期外だが、有害鳥獣駆除として獲ることもできる)に
シカを解体する様な場合は、屠殺後、水につけるなどして
なるべく早く熱を下げた方がいいようである。

さて、前回、シカを解体したときは、
初日は「背ロース」を焼き肉にして食べ、
残りの固いスネなどの部分は、シチューにして食べた。
記憶に残っている限り、このシチューが絶品であった。
固いスネ肉を使っているにも関わらず、保温調理をしたせいか
肉自体が驚くほど柔らかく仕上がり、最高のウマさだった。
そんなわけで、今回は「背ロース」を後回しにして
先にスネなどの固い肉を使って、シチューを作ることにした。

結果からいえば、これは大きな失敗だった。
出来上がったシチューの肉が、恐ろしく固いモノになってしまい、
ひと鍋食べ切ることには、顎がガタガタになってしまった。
後で友人に聞いてみた所、死んですぐの肉を調理したため、
未だ死後硬直がとけず、その固さになったのでは?ということだった。
そういえば、前回、感動したほどのウマさもない。
やはり肉は、ある程度時間をおいて、熟成させないとダメらしい。

そんなわけで、前回シチューを作ってから数日おいて、
「背ロース」と残りの肉を調理してみることにする。
はたして、シカ肉は熟成で、どれだけウマくなるのだろうか?

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