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ロールケーキ

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By: t-mizo

子供のころ、母親が良く用意してくれたおやつの1つが
「カステラ」だった。

現在、「カステラ」というと、天面が焦げ茶色で
底面に紙が張り付いている、黄色くて四角いものを思い浮かべるが、
自分が子供だったころ、我が家で「カステラ」といえば、
これは丸くて細長いものであった。
おやつが「カステラ」ということになれば、
母親がこの丸くて細長いものをまな板の上で切り分けていた。
兄弟1人につき、厚さ1.5〜2㎝ほどのものが一切れか二切れ、
小皿にのせられて供されるのが常であった。
子供たちは、母親が出してきたこの皿を吟味する。
より厚みのあるものを、
より中のクリームの多いものを、と。
まあ、うちの母親はこの切り分け方が上手かったので、
特に目に見えるほどのサイズの違いが出ることはなかったのだが。

この丸くて細長いものは、現在で言う所の「ロールケーキ」である。
ただ、同じものを「ロールカステラ」と呼ぶこともある。
我が家でこれを「カステラ」と呼んでいた以上、
うちの親はこれを「ケーキ」ではなく、
「カステラ」と認識していたようだ。
厚さ1〜2㎝ほどに焼き上げた生地の上に薄くクリームを塗り、
これをクルクルと巻き上げてある。
クリームの厚さは2〜3㎜で、
これが均一に塗られていることはまずなく、
大体、厚い箇所と薄い箇所があった。
(まあ、厚い箇所があるなんていうことはほとんど無く、
 大方は薄いか、クリームが全く無いかのどちらかだった)
このクリームにしても、デコレーションケーキなどに使われている
柔らかい生クリームではなく、ベットリと固いバタークリームだった。
これを1本買っておけば、
3人の子供たちの2日分のおやつになる。
スーパーの店頭で見ると、値段は1本100円そこそこなので、
3人分の子供おやつが、1日あたり50円ということになる。
我が家のおやつで、この「カステラ」が多かった理由がよく分かる。
まあ、世間一般的な認識がどうだったかまでは分からないが、
少なくとも我が家では、「ロールカステラ」=「安物」という
イメージが出来上がっていたのは間違いがない。

だが、近年になって、この認識が崩れ始めた。
コンビニエンスストアなどでは、
「○○セレクション金賞」という謳い文句を付けた
「ロールケーキ」が販売され、
ちょっと気取った洋菓子店でも、
「○○ロール」などと名乗った「ロールケーキ」が人気をとって、
販売店には行列ができるようなこともあるという。
行列をして「ロールケーキ」を買う、なんていうのは、
我が家の価値観からしたら全く考えられないことである。
なんといっても、我が家において「ロールケーキ」は、
もっとも安価なおやつの代名詞だったからである。
それが20〜30年という時間を経て、
「ロールケーキ」=「オシャレなスイーツ」という価値を
築き上げてきたらしい。

もちろん、自分が子供のころ食べていた「ロールカステラ」と、
現在人気を博している「ロールケーキ」では、
その構造自体が大きく変わってしまっている。
一番大きな違いは、中に入っているクリームの質と量だろう。
先にも書いた通り、自分が食べていた「ロールカステラ」には、
固いバタークリームが薄く、挟まれていただけだったが、
最近人気の「ロールケーキ」では、真っ白なホイップクリームが、
これでもかというくらいタップリと使われている。
「ロールカステラ」では、1:9くらいだったクリームと生地の比は、
5:5、あるいは6:4くらいにまで改善され、
ものによっては、中心部はほとんどホイップクリームのみ
なんていう「ロールケーキ」も、決して珍しいことではなくなった。
生地は中心部までは入っていかず、外周部分のみを包んでいるのみだ。
ちょうど「巻き寿司」の海苔みたいだ。
中心部のホイップクリームの中には、
色鮮やかなフルーツが入っていることもある。
真っ白なクリームに、鮮やかなフルーツが映えて、
なるほど、これでは「オシャレなスイーツ」として人気を得るのも
納得できてしまう。
近年、ホイップクリームを山ほど盛りつけたパンケーキ
大人気となり、一時期、TVなどでも大きく取り上げられたが、
この「ロールケーキ」も、これに近い発想で
その人気を得るに至ったようである。

先にも書いたように、「ロールケーキ」とは
薄く長方形に焼き上げたスポンジケーキに、ジャムやクリーム、
細かく切ったフルーツなどをのせて、渦巻き状に巻いたものである。
中に巻き込むクリームや、フルーツなどに様々な工夫をする他、
スポンジケーキの生地にココア、コーヒー、抹茶などを練り込んで、
変化をつけることもある。
さらに巻いた後に、粉砂糖を振りかけたり、
さらにクリームやチョコレートを塗ったり、
フルーツなどを盛りつけたりすることもある。
外観も中身も、様々に工夫されることが多いが、
食べるときには原則的に、適当な厚さの輪切りにする。
「ロールケーキ」という響きから、
これがそのまま英語圏で使われている言葉の様に思ってしまうが、
英語では「swiss roll(スイスロール)」と呼ばれる。
単純に直訳すれば、「スイスの巻物」となるのだが、
実は「swiss roll」というのは、1つの固有名詞として
英和辞典にものせられており、これを調べてみると
「ジャム入りのロールカステラ」とある。
これからすると、ジャムを入れる(巻き込む)のが、
もともとの形だったようである。
日本では、商品名として「スイスロール」という
「ロールケーキ」が販売されているが、
これは別にひねった名前をつけているわけではなく、
英語での「ロールケーキ」をそのまま使っているだけなのである。

「ロールケーキ」の発祥や由来については、はっきりとしていない。
いくつか説がある中で、もっとも有名なものが、
1880〜90年ごろ、ヨーロッパの料理本の中で紹介された
「スイスロール」と呼ばれる「ロールケーキ」である。
名前の由来は、スイスのお菓子「ルーラート」だといわれている。
これがアメリカに渡り、「ジェリーロール」として大ヒット。
それが再びヨーロッパに逆輸入され、注目されるようになったという。
また、その形状から、
フランスのクリスマスケーキ「ブッシュ・ド・ノエル」に
関係しているという説もある。

日本で「ロールケーキ」が誕生したのは、
1950年ごろのことだと言われている。
ある製パン会社が「スイスロール」という名前で、
スポンジケーキでバタークリームを巻き込んだお菓子を作り出した。
これが家庭のおやつとして普及し、定着していったようである。
我が家でおやつとして供されていた「ロールカステラ」も、
この「スイスロール」であった。
2000年ごろになると、「ロールケーキ」の専門店も登場し、
現在のようにクリーム豊富な、リッチなケーキに生まれ変わった。

さて、今ではすっかり、クリームたっぷりのものが
主流になった感のある「ロールケーキ」だが、
昔懐かしいバタークリームの「スイスロール」は、
今でも変わらず、100円程度の価格で、
スーパーなどのパン売り場の片隅に並んでいる。

クリームたっぷりの、リッチな「ロールケーキ」を食べるより、
子供のころ、兄弟と分けあって食べていた「スイスロール」を
まるまる1本食べる方が、贅沢に感じてしまうのは、
きっと、自分だけのことではないだろう。

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