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ゼリー

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先日、我が家で法事があった。

坊さんをはじめ、兄弟や親戚連中が集まり、
和気あいあいとした空気の中で、法事が執り行われた。
その際、集まった人たちが持ってきてくれた、
お供え物の分配を行ない、集まってくれた人たちにお土産として
持ち帰ってもらった。
それぞれ、箱に入って包み紙に包まれているものを開げて、
中身を紙袋に詰め直したのだが、
それぞれが帰った後、我が家にもその紙袋が1つ残されていた。
自分の取り分、ということらしい。
どういうものが入っているのか、自分もよく知らなかったのだが、
後片付けを済ませて、中身を広げてみると、
袋の中の半分以上が「ゼリー」であった。

オレンジゼリー、ブルーベリーゼリー、メロンゼリー、
アップルゼリー、梅ゼリーなどなど、ゼリー菓子の山である。

それぞれ、きっちりと密封されているので、
賞味期限はそれなりにあるはずなのだが、
なんといってもジメジメと蒸し暑い梅雨時のことであるし、
「ゼリー」というのは、どことなく生ものっぽい。
保存は冷蔵庫で行なうとしても、
なるべく早く食べてしまった方がいいと思い、
コーヒータイムのお菓子や、食後のデザートとしてこれを食べ続け、
1週間ほどで、全て食べ終わった。
全く、怒濤のゼリー週間であった。

我々は「ゼリー」といえば、果汁などを固めた、
カラフルで透き通った、
プルプルとした食感のお菓子を思い浮かべるが、
広義の意味での「ゼリー」は、ゲル状の物体の総称である。
詰まる所、お菓子としてのゼリーだけでなく、
肉や魚の煮汁を固めた「煮こごり」や、
果物を砂糖で煮詰めた「ジャム」、
寒天などを使って固めた「羊羹」なども
「ゼリー」ということになるし、
接着剤などの、粘性のある半個体も「ゼリー」ということになる。

食べ物としての「ゼリー」の歴史は古く、
ローマ時代には、肉や魚の煮汁を固めた
「煮こごり」料理も作られていたようである。
つまり現在のような、菓子としての「ゼリー」ではなく、
料理としての「ゼリー」の方が、歴史が古いわけである。
菓子としての「ゼリー」、
つまり、ゼラチンを使って作られた菓子が登場するのは、
18世紀後半ごろのことである。
かつて、このブログでも取り上げたフランスの天才菓子職人にして、
天才料理人、アントナン・カレームが、
ゼラチンを使ったデザートを作り出したとされる。
つまり、菓子としての「ゼリー」の歴史は、
カレーム以来、200年ほどの歴史しかなく、
それ以前の長い期間、「ゼリー」といえば、
料理のことだったのである。

日本でも、いわゆる「ゼリー」状の食品というのは、
古くから存在していた。
葛粉や寒天、わらび粉や片栗粉などを使った菓子類がそれで、
葛については古代から、わらび粉については平安時代に
食べられていたという記録がある。
現在、「ゼリー」を作るために使われているゼラチンは、
明治時代になって初めて、日本に持ち込まれた。
ただ、先にも書いたように、日本ではすでに葛粉や寒天などを
使っていたことから、それほど積極的には使われなかったようだ。
ゼラチンがよく使われるようになるのは、
昭和に入り、国内でも純度の高いゼラチンが精製できるように
なってからである。

さて、ここまで何度も出てきた「ゼリー」の原料、ゼラチンだが、
これが一体どういうもので、
どのようにして作られているかということを、
はっきりと答えられる人は、少ないだろう。
スーパーなどの製菓材料コーナーで売られているゼラチンは、
板状のものや、粉末状のものがほとんどである。
これらを水に溶かし、さらに果汁などを加えてから冷却すると、
我々の良く知っている「ゼリー」状に変化する。
たくさんの水でゼラチンを溶かせば、
柔らかく崩れやすい「ゼリー」が出来るし、
少しの水にゼラチンを溶かし込めば、
硬くしっかりとした「ゼリー」が出来上がる。
使い方は、非常に簡単である。
ただ、熱に弱いため、温度が高いと固まっていたものが、
再び溶け出すこともある。
日本で使われている寒天や葛粉などが植物性のため、
ともすれば、ゼラチンも何かの植物から作られていると
考えてしまいがちだが、
実はゼラチンは、純然たる動物性のものである。
ゼラチンを作るためには、動物や魚の骨、皮、腱などの
結合組織の主成分・コラーゲンに熱を加えて、抽出させる。
いわば、「煮こごり」の成分を抽出させるわけである。
抽出させたものをpH調整し、これを濃縮、
さらに精製、乾燥させることによって、
我々の良く知るゼラチンとなる。

植物由来である寒天や葛粉は、その主成分が多糖類、
つまり炭水化物であるが、
動物由来であるゼラチンは、その主成分はタンパク質である。
市販されている、フルーツ系の「ゼリー」の場合、
果汁をゼラチンで固めることによって作られているが、
果物の中には、タンパク質分解酵素を持っているものもあり、
そういった果物の果汁は、ゼラチンでは固まらない。
タンパク質であるゼラチンが、
酵素によって分解されてしまうからである。
パイナップルやキウイフルーツなどが、
このタンパク質分解酵素を持っている。
……。
あれ?ちょっと待てよ?と、思った人がいるだろう。
よくよく思い返してみれば、パイナップル果汁を使ったゼリーや、
キウイフルーツの入ったゼリーも、市販されている。
本当にこれらの果物が、タンパク質分解酵素を持っているのなら、
これを使ったゼリーなど、あるはずがない。
だが実は、タンパク質分解酵素というのは熱に弱いため、
これらを熱処理したものを使えば、普通に固めることが出来る。
市販されているものも、この処理を施された材料で作られている。
もし、家庭でフルーツゼリーを作る場合、
買ってきたパイナップルやキウイフルーツをそのまま使えば、
全く固まらず、失敗してしまう。
そういう場合は、生のフルーツではなく、
熱処理の施されている、缶詰などを使えば、
上手く固めることが出来るだろう。

最初に書いた通り、梅雨時に行われた法事のお供え物として、
かくも「ゼリー」ばかりが選ばれた、ということは、
いかに「ゼリー」が、夏向けと思われているということだ。
たしかに、液体をそのまま固めたような「ゼリー」には、
見た目の清涼感があり、冷蔵庫でよく冷やして食べれば、
その冷やり、ツルリとした食感は一時の「涼」を与えてくれる。
ただ、気温がこれ以上に上がり、
連日の真夏日、酷暑日というような時期になってしまえば、
次第にアイスクリームやかき氷にシフトしてしまい、
「ゼリー」は省みられなくなってしまう。

ジメジメとして、やや蒸し暑い。
そういった微妙な季節に食べてこそ、
「ゼリー」というものは、その真価を発揮する。
存外、「ゼリー」というのは、
季節感の大事な菓子なのである。

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