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イカ〜その2

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前回、食品としてのイカと、その歴史について書いた。
今回は、1個の生物としての「イカ」にせまってみたい。

前回書いたように、日本人は古来、イカに親しんできた。
それもペットにしたりするのではなく、
主に「食べる」という形で親しんできた。
世界中を見回してみても、
ここまでイカと親しんできた民族というのは、
日本以外に無いといってもいいだろう。

それほどに長い歴史のある、日本人とイカの関係だが、
実はイカについては、まだよく分かっていないことも多い。
日本人にとって、もっとも馴染み深いスルメイカでさえ、
つい最近までは、どんな卵を産むのかということすら、
あまりよく分かっていなかったのである。

スルメイカはツツイカ目アカイカ科スルメイカ亜科の
スルメイカ属に属する海生軟体生物である。
日本列島を中心とする北太平洋に分布しており、
日本列島の近海を、行ったり来たりしながら一生を終える。
そういう生活圏を持っているため、
古くから日本人によって漁獲され、食べられ続けていた。
天日で干すと、保存性が高くなるので、
冷蔵技術が確立されるまでは、ほぼ全てのスルメイカが、
「スルメ」へと加工されて、食されていたようである。
中国北宋時代の書物「本草図経」には、
日本産のイカということで、スルメイカが記されている。
古くから「スルメ」は、大陸との貿易における、
貴重な輸出物品であったらしい。
寿命は1年間であり、約30㎝ほどの大きさにまで成長する。
比較的暖かい海域で生まれた稚イカは、
そのまま餌の豊富な北方海域へと移動、そこで成長した後、
再び、暖かい南方海域へと移動し、そこで産卵して一生を終える。
スルメイカには、秋生まれ群、冬生まれ群、
春・夏生まれ群という、
3つの生まれ時期の群れが存在しており、
それぞれの時期に、産卵の適温となる海域にて産卵する。
……。
詰まる所、1年中、どこかでイカは
生まれているということである。
(この3つの群れの内、もっとも多くの漁獲量があるのが、
 9月〜11月にかけて、東シナ海北部から
 日本海南西部で産卵する秋生まれ群で、
 日本で漁獲されるスルメイカの内、7割がこれである)

そんな風に、1年中どこかで産卵しているスルメイカだが、
その卵が確認されたのは、比較的最近のことである。
どうして、そんなことになったのか?
実はスルメイカの卵というのは、直径1mほどの
寒天質の透明な物体に入っている。
水槽の中で観察していてさえ、発見が難しいほどの透明度なので、
それが海の中を漂っている状態では、
まず見つけることが出来ないのである。
さらに、この寒天質の物体は非常にもろく、
網などで乱暴に扱うと、あっという間に粉々に壊れて、
卵たちは全て死んでしまう。
いや、もっといえば、海底に沈んで地面に触れただけでも、
この寒天質の物質は破壊され、卵は死んでしまうのである。
網に触れてもダメ、地面に触れてもダメ、
当然、海底から生えている海草などに触れたとしても
破壊されてしまうため、海草に産みつけることも出来ない。
そんなひ弱な卵が、一体どうやって孵るというのか。

実は海中には、水温の差によって、
階層が形成されている。
スルメイカの生み出した、受精卵を含んだ寒天質の物体は、
その境目からは沈むことなく、水中を漂い、
やがて稚イカが孵化し、水面方向へ向けて
上がっていくことになる。
水面近くに浮上した稚イカは、そのまま群れをなして、
餌が豊富な北の海を目指して、北上していくのである。

海水温というのは、一定ではない。
これは当然のことなのだが、大きな周期でいえば、
20〜30年ほどの単位で、水温の高い時期と、
水温の低い時期というのが、交互にやってきている。
これがどういうメカニズムで起きているのかは、
まだはっきりと解明されてはいないのだが、
ここ数十年のことでいえば、
1946年から1977年までが寒冷期、
1977年から2006年までが温暖期、
2006年からは再び、寒冷期ということになっている。
研究に寄れば、この寒冷期にはイワシが豊漁になり、
温暖期になるとスルメイカが豊漁になるという。
ただ、この周期的な海水温変化、
「レジームシフト」と呼ばれるそれは、
プラスマイナス3度の範囲、つまり最大でも
6度ほどの温度差が生じるのだが、
これが近年の温暖化の影響によって、
狂い始めているという所見もある。
本来であれば、2006年に寒冷期に入ったことにより、
イカの漁獲量が減り、
イワシの漁獲量が増えなければならないのだが、
相変わらず、イカの漁獲量は落ちていないという。
ただ、スルメイカの産卵場所が温暖化によって、
移動することによって、日本近海で
スルメイカが獲れなくなることも、考えられる。
ひょっとしたら、近い将来、
スルメイカは日本から遠く離れた北の海でしか獲れない、
ということになってしまうのかも知れない。
そうなった場合、日本の「食」に
どれほどの影響を及ぼすのか、考えるに恐ろしい。

さて、先日。
スーパーで丸のままのスルメイカを見つけ、これを買ってみた。
「解凍」と書かれているので、冷凍物のスルメイカを
解凍したものだったのだろう。
これまでに、魚に関しては
何回もさばいたことがあったのだが、
イカに関しては、一度もさばいたことがなかった。
ちょっと興味があったことも手伝って、1匹買って帰り、
これをさばいてみることにした。
方法は全くわからないが、
何、今はインターネットという強い味方がある。
動画サイトにて、「イカ」「さばき方」というワードで検索して、
イカのさばき方の動画を見つけた。
頭の上の辺りを掴んで下に引き抜き、
ワタをきれいにひきずりだしてしまう。
そののち、本体の皮を剥き、頭とゲソを切り離し、
クチバシを取り外してしまえば、それでいいらしい。
なんだ、簡単じゃないかということで、早速取りかかったのだが、
一番最初の頭の上を掴んでワタを引きずり出す所で、
いくら引っ張ってもワタが外れてくれない。
力を入れてグイグイと引っ張っていると、
ブチッと音がして、ワタがブッツリとちぎれてしまった。
しばし呆然となったが、気を取り直し、
包丁で本体を切り開き、くっついているワタを取り除いた。
後はヘタクソながらも皮とクチバシを取り除き、
なんとか捌ききることが出来た。

これをフライパンで焼いて、醤油をかけて食べたが、
ヘタクソにさばいたわりには、味も悪くなく、
また安ければ、買ってくるかなと思える程であった。

次回はワタを潰すことなく、うまくさばきたいものだ。

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