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蒸しパン

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先日、よく行くスーパーの商品棚を見ていたら、
小さな袋に入った「蒸しパンミックス」をみつけた。

この場合の「ミックス」というのは、
「ホットケーキミックス」のそれと、同じ意味である。
つまり、「蒸しパン」を作るために配合された、
専用の粉のことである。
小麦粉の中に、砂糖、ベーキングパウダーなどが混ぜ込まれており、
これを水、または牛乳で溶いて、型の中に流し込み、
15〜20分ほど蒸し上げれば、
「蒸しパン」が出来上がるというシロモノである。
小さな袋なので、内容量はわずか200gほどで、
ちょうど1回で使い切れる量である。
袋の裏に印刷されている、作り方を見る限りでは、
蒸し器で蒸し上げる他に、
電子レンジを使って作ることも出来るらしい。
電子レンジを使えば、わずか3〜4分で作ることが出来る。
値段が安かったこともあり、
とりあえず1つ、カゴの中に放り込んだ。

自分がまだ幼かったころ、
たまに母親が「蒸しパン」を作ってくれた。
おやつ、ということで作ってくれるのだが、
存外、ムクムクと膨らんでボリュームがあり、
さらに普通のパンと違って、しっとりと食べごたえがあったため、
かなりお腹が一杯になる、おやつであった。
「蒸しパン」専用の粉を買っていたのか、
「ホットケーキミックス」を流用していたのかはわからないが、
当時、母親が作ってくれるおやつは、
ホットケーキ、蒸しパン、ドーナツが多かったので、
恐らくは、「ホットケーキミックス」を流用していたのだろう。
その3つの中では、ドーナツがもっともテンションが上がり、
ホットケーキがそれに次いだ。
食べる側としては、「蒸しパン」が一番うれしくないのだが、
どういうわけか、母親がつくるのは「蒸しパン」が一番多かった。
やはり、作るのが一番楽だったからだろう。
自分がある程度大きくなり、自分の下に兄弟が出来ると、
さすがにお手製のおやつを作っている暇が無くなったのか、
既製品を買って来ることが多くなり、
母親が「蒸しパン」を作ることも、無くなってしまった。

「蒸しパン」は、小麦粉に重曹やベーキングパウダー、
砂糖、香料などを混ぜ、これを水や牛乳で捏ねた生地を、
蒸し器で蒸し上げたものである。
「パン」となっているが、日本では菓子として見られることが多い。
「蒸しケーキ」と呼ばれることもある。
スーパーなどでは、菓子パンなどと一緒にパン売り場に並んでおり、
普通のパン屋(ベーカリー)では、あまり見かけることはない。
プレーンな生地にレーズン等を混ぜたもの、
黒糖などを生地に混ぜたもの、
チーズやヨーグルトなどを生地に混ぜ込んだものなどの、
バリエーションがある。
底部に、何らかの形で紙が張り付いていることがほとんどで、
商品によっては、カップ状や皿状をしているものもある。

このような、小麦粉を練り、酵母やベーキングパウダー等の
膨張剤を混ぜ込んだ生地を「蒸して」調理したものは、
どうも中国、日本などの東洋を中心に行なわれている調理方法で、
西洋ではほとんど見られない。
と、いうよりは、西洋では「蒸す」という調理方法自体が、
ほとんど使われていないようである。
確かに、自分たちの周りにある「蒸し料理」を思い返してみると、
そのほとんどが日本料理か中華料理になってしまう。
詰まる所、「パン」の名前を冠してはいるものの、
その出身は西洋ではなく、東洋であると考えられる。
東洋の「蒸しパン」を見回して、
もっとも古い歴史を持っているらしいのが、中国の「饅頭」だ。
これは日本式に「まんじゅう」と呼ぶのではなく、
「まんとう」という。
この「饅頭」は、日本のそれとは違って、
中に具材(餡)が入っておらず、まさに「蒸しパン」そのものだ。
(日本式に、中に「具材(餡)」の入っているものは、
 中国では「包子(ぱおず)」と呼ばれる)
中国では、この「饅頭」を、いわば主食として、
様々な副菜を食べていたようである。
「饅頭」は、鎌倉時代に日本へと伝えられ、
以降、我が国では菓子に分類されるものとして、
現在まで伝わっている。

この鎌倉時代の「饅頭」伝来については、
2通りのルートが確認されている。

ひとつは、現在の「饅頭(まんじゅう)」に伝わるものとして、
1349年に林淨因によってもたらされたとするもの。
彼は、小豆を使って「餡」を作り、
これを内包した「饅頭」を作り出した。
中国本土では「包子」と呼ばれるものが、
日本で「饅頭」へと変わっていったルートである。
和菓子好き、饅頭好きな人間にとっては、
まさに和菓子のターニングポイントといえる瞬間である。

もうひとつは、林淨因に先駆けること100年ほど前、
1241年に、南宋に渡って学を修めた円爾が、
日本に伝えたといわれるもので、
こちらの方は、まさに中国の「饅頭(まんとう)」そのままのもので、
中に何も内包していない「饅頭」だったとされる。
林淨因の作った「饅頭」が、日本の「饅頭」の主流となったので、
一般的にはあまり知られていないこちらの「饅頭」だが、
これこそまさに、日本で最初に作られた「蒸しパン」だったといえる。

現在のものに、直接繋がる「蒸しパン」は、
明治時代、膨張剤としての重曹が一般的になってから作られた。
酵母類を使って生地を発酵させ、これを膨らませるパンよりも、
膨張剤を使って生地を膨らませる「蒸しパン」は、
時間も手間も、大きく短縮することが出来る。
また、オーブンという調理器具が一般的でなかった当時、
蒸籠を使って作ることの出来る「蒸しパン」は、
家庭でも簡単に作ることが出来ることから、
一気に広まっていったものと考えられる。

さて、自分が買ってきた「蒸しパンミックス」の話に戻ろう。
水だけあればすぐ作れる、ということで購入してきた
「蒸しパンミックス」だが、パッケージの裏を見てみると、
レーズンを生地に混ぜたものや、
ココア粉や抹茶を生地に混ぜ込んだ、
アレンジレシピが書かれている。
これを見る限りでは、この「蒸しパンミックス」は、
様々な種類の「蒸しパン」を作るための、
いわばベースになるべきものであって、
粉を水で溶き、これを蒸すだけの、
いわゆるプレーンな「蒸しパン」というのは、
あまり作られないのかも知れない。
だが、我が家には、レーズンもココアも抹茶もない。
仕様がないので、生地に何も混ぜない
プレーンな「蒸しパン」を作ってみることにした。

ボウルに粉を入れて、そこに規定量の水を入れる。
これを泡立て器でよく混ぜれば、生地が完成する。
1分もかからない。
実に簡単である。
鍋の底に水を張り、その上に蒸し器をおく。
箱型の金属容器の中に生地を流し込み、
(このとき、容器の7分くらいの所までしか、生地を入れない。
 蒸し上げると、爆発的に生地が膨らむからである)
準備のできた蒸し器の上にこれを入れて、15〜20分蒸す。
15分たった所でフタを開けてみると、
すでに生地は3〜4倍ほどにも膨らんでおり、
串を刺して蒸し具合を確認してみると、
中までしっかりと蒸せている。
火傷しないように気をつけながら、金属容器を取り出し、
さらに「蒸しパン」を容器から取り出す。
かなりのボリュームになっている。

食べてみると、ほんのりとした甘味はあるものの、
それ以外は、特にこれといった特徴もない、
実にあっさりとした「蒸しパン」であった。
決してマズくはないのだが、
取り立てていうほどウマいわけでもない。

次回作る際には、レーズンくらいは入れようと、
感じさせる「味」であった。

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