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パウンドケーキ

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名は体を表す、という言葉がある。

意味をわざわざ説明するほどでもないと思うが、
敢えて、意味をいうのであれば、

「人や物の名前は、それが持つ本質を
 上手に言い表している場合が多い」

というようなものになる。

この言葉は、お菓子の世界でも当てはまることが多い。

「桜餅」は、「桜」の葉で巻いてあるし、
「柏餅」は、「柏」の葉で巻いてある。
「モンブラン」は、ヨーロッパアルプスの「モンブラン」に
似ているし、(これは日本のものではなく、
あくまでも、本場・ヨーロッパのモンブランの話である)
「シュークリーム」は、
「シュー」(フランス語でキャベツのこと)に似ている。
「ポテトチップス」は、「チップ」状の「ポテト」だし、
「フライドポテト」は、「フライ」された「ポテト」である。

これらの伝でいけば、「パウンドケーキ」は、
「パウンド」の「ケーキ」ということになる。
……。
「パウンド」の「ケーキ」では、イマイチよく分からない。
なんだ?「パウンド」って。

正確に言えば、この「パウンド」は「ポンド」である。
「ポンド」というのは、あまり聞き慣れない言葉だが、
実は重さを表す単位であり、1ポンドは約454gになる。
ここまで聞くと、ああ、「パウンドケーキ」というのは、
重さが1ポンドあるケーキなんだな、と思ってしまう。
間違いである。
完成品の重さが1ポンドなのではなく、
原材料をそれぞれ1ポンドずつ使うことから、
この名前がつけられた。
「パウンドケーキ」の原材料となるのは、
小麦粉、バター、卵、砂糖の4種類である。
どれもケーキを作る上では欠かせない、
基本中の基本といえる材料ばかりである。
この4種類の材料を、
それぞれ1ポンド(454g)ずつ使用するわけである。
すると合計で1816g、約1.8kgもある。
ケーキというのは、多くがその中に気泡を持っているため、
見た目の大きさよりは、ずっと軽くなるのが普通である。
ということは、1.8kgのケーキというのは、
かなり大きなサイズのケーキ、ということになる。
完成品の重さでいえば、パウンドケーキではなく、
4パウンドケーキということになる。
(もちろん、焼成中に水分が無くなるため、
 1ポンドずつ原材料を使ったとしても、
 計算通りの重さにはならないだろう)
が、ここで重要なのは、
材料を1ポンドずつ使うということではなく、
材料をぞれぞれ等量、使用しているという所だろう。
フランスでは、パウンドケーキのことを
「カトル・カール」と呼ぶが、
これはフランス語で「4/4」という意味になる。
こちらの方が、パウンドケーキの本質を、スバリと表している。

この、原材料の分量比がわかりやすいケーキは、
18世紀の初頭に、イギリスで誕生したとされる。
これは膨張剤として、「卵」が使われるようになった時期と
一致している。
つまり、この「パウンドケーキ」こそが、
卵を膨張剤として使用した、最初のものであった可能性もある。
18世紀の中ごろになると、
砂糖を使った衣がけの技法が考案される。
これはアイシングと呼ばれる技法で、
現在でも粉糖とレモン汁を混ぜたものをパウンドケーキにかけて、
アイシングを施したものも作られている。

19世紀になると、デコレーションを施された
デコレーションケーキが作り出される。
これを生み出したのが、かつて紹介したことのある
フランスの菓子職人、アントナン・カレームだ。
彼の技術は弟子たちによって受け継がれ、
19世紀の初頭は、ケーキの勃興期ともいえる時代になった。
1832年には、オーストリアにて
チョコレートケーキの代名詞ともいえる
「ザッハトルテ」が作り出される。
これに使われる生地は、小麦粉、バター、砂糖、卵に
チョコレートを加えたもので、チョコレート以外は
まさにパウンドケーキの生地と同じ材料である。

パウンドケーキというのは、基本的に上記した4つの
材料を混ぜ合わせて、型に流し込み、オーブンで焼くだけである。
分量についても全て同じ、ということで、
ものの本によっては、誰もが失敗なく作ることが出来ると、
書かれているものもある。
だが、同量の材料を混ぜて焼くだけの
シンプルなケーキであっても、
混ぜる手順を変えたり、卵を白身と黄身に選り分けたり、
バターの溶かし方を変えたりすることによって、
その出来上がりには、結構な違いが生じる。
そういう意味では、シンプルな割には奥が深く、
初心者から上級者まで、誰もが楽しめるケーキであるといえる。
手頃なレシピを探してみると、
大体は全ての材料を100gずつ混ぜるレシピが多いようである。
レシピの中には「黄金比率」を謳っているものもあるが、
ことパウンドケーキに限っては、
全てのレシピが、この「黄金比率」であるといって良いだろう。

このように、材料を集めるのが簡単で、
調理方法もかなり簡単で美味しいと、
良い点ばかりに目がいく、パウンドケーキであるが、
ひとつ、大きな弱点(?)がある。
それがカロリーである。
パウンドケーキに使われている原料を見れば分かるが、
バター、砂糖、などは高カロリーの代名詞のようなものだし、
小麦粉のカロリーは砂糖とほぼ変わらない。
もっともカロリーの低い卵でさえ、100gあたり150kcalある。
(ちなみの同量のバターで745kcal、砂糖で380kcal、
 小麦粉で360kcalとなっている)
つまりパウンドケーキ1つで1600kcalを越え、
これを8切れに切り分けたとしても、
一切れ約200kcalということになる。
これは、ほぼご飯1杯分に匹敵するカロリーということになる。

もともとケーキなんていうものは、
高カロリーなものだと言ってしまえばそれまでだが、
簡単に作れるからといって、調子に乗っていくつも作り
これを食べ続けていると、
近いうちに手痛いしっぺ返しを食らうことになる。

その際の体重の増加は、きっと1ポンド(454g)では、
収まらないだろう。

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