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雑感、考察

寿命

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先日、遠い親戚に不幸があり、その葬儀に出席した。

故人とは、1度顔を合わせただけという、
赤の他人一歩手前の、遠い親戚である。
車で1時間ほど走った町のセレモニーホールで、
しめやかに告別式が行われた。

受付には、「親族」用受付と、「一般」用受付がある。
遠いとはいえ、一応親戚なので、
親族用の受付で記帳したのだが、
なんとも場違い感が凄かった。
その日、参列していた「一般」弔問客のほとんどより、
親族である自分の方が、
故人との付き合いが少ないからだ。
弟と2人、親族席の目立たない場所に座った。

式が始まると、故人のプロフィール、
経歴が披露される。
ボソボソと囁くような声で、
なんとも聞き取り辛い。
聞き取りやすい、ハキハキとした大声では、
会場のしめやかな雰囲気がぶちこわしになるので、
わざとそういう喋り方にしているのかもしれない。
それによると「享年85」ということだったので、
日本人女性の平均寿命、87歳には届かないものの
ほぼ平均に近い寿命だったといえる。

日本人は長命である。
先に書いた、女性の平均寿命は87歳で世界一長く、
男性の平均寿命も80歳で、世界で第4位だ。
まさに日本は「長寿国」といえる。
これは、日本の医療制度の充実と、
その食生活の影響が大きい。
高度な医療制度によって小児医療が充実、
乳幼児の死亡率が低くなり、
また高齢者医療によって、
高齢者の寿命が長くなった。
さらに、脂肪摂取量が少なく、
米飯を中心として、様々な大豆食品や、
魚介類を豊富に摂取する日本人の食生活は、
ヘルシーな食事として、世界から注目されており、
これも間違いなく、日本人の寿命を延ばしている。

だが、日本人の寿命は元々長かったわけではない。

1891年~1898年の間(明治時代中期)の
平均寿命は男性42歳、女性43歳である。
男性・女性ともに現在の半分ほどの寿命だ。
織田信長で有名な「敦盛」の一節、
「人間50年」よりも2割ほど短い。
「敦盛」がいつ作られたのかは明らかではないが、
平敦盛が生きていたのは12世紀後半のことなので、
12世紀から19世紀にかけての700年間は、
日本人の平均寿命は
40~50年ほどであったと考えられる。

戦後、1947年になって、
男女ともに平均寿命が50歳を超える。
第2次世界大戦以降、
日本は戦争をすることがなかったため、
戦争によって若くして亡くなる人がいなくなり、
同時に乳幼児の死亡率も劇的に下がったため、
平均寿命は急激に延びていく。
1970年代には、
男女ともに平均寿命が70歳を突破。
わずか四半世紀の間に、寿命が20年も延びたことになる。
以降も平均寿命は右肩上がりを続け、
2013年、ついに男女ともに平均寿命が
80歳の大台を突破する。
まさに「長寿国日本」となったのである。

しかしこの「長寿」が、逆に日本を苦しめる。
日本人が長寿となり、老人が増える一方、
少子化が進み、日本は少子高齢化という道を歩み始める。
雪だるま式に増えていく福祉予算。
この負担が少数の若年層にのしかかり、
結果としてさらに少子化が進むという、悪循環が生まれた。
この原因は「人口が増え続ける」という
前提の上に作られた、福祉のシステムだろう。
ねずみ講やマルチ商法が無限に続かないように、
国土という枠がある中、人口もいつかは増えなくなる。
年金など、この前提で作られているものは、
必ず破綻する時が来る。
破綻させないためには、支給額を引き下げ続け、
支給年齢を引き上げ続けるしかない。
これを実行している限りは、
確かに年金システムは破綻しないだろう。
年金システムが破綻しない代わりに、
支給年齢が上がり、
支給額が生活できないレベルまで下がった
年金受給者の生活が破綻するだけである。

つらつらと「長寿国日本」について書いてきたが、
どうもうちの一族は、これから外れているらしい。

うちの一族は、基本的に短命である。
これは特に男性に顕著で、
うちの一族の男性で70歳の大台に達した人間は、
1人もいない。
父親方、母親方の男性親族の「寿命」を平均してみれば、
60歳にすら届かない。
65歳を超えた人間も、1人しかいない。
まるでうちの一族の男だけ、
長寿化の波から取り残されているようだ。

うちの一族でも、女性にはたまに長命の者が出る。
100歳という大台に手をかけた者が2人、
うち1人(自分の婆さんだ)はまだ生きていて、
うちの一族で、初めての3桁になりそうな状況である。
だが、意外に早死にする者もいて、
平均寿命を大きく引き下げている。
うちの一族に「嫁に来た」女性を除けば、
まだ誰1人として、70歳に達していないというのが
現実である。

現在、うちの一族では男女合わせて、3人の60代がいる。
なんとかがんばって生き延び、
70歳という壁を越えてもらいたいものだ。

年金支給年齢の引き上げはいずれ70歳、
さらに75歳になるかもしれないという。
そうなると、これはもう、
うちの一族にとっては
寿命の尽きた、さらにそのはるか「先」ということになる。

「年金」というのは、近い将来、うちの一族には
全く意味のないシステムになるだろう。

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