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唐揚げ

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よく、唐揚げにレモンをかけるか否か?というのが
議論になることがある。

唐揚げにレモンをかける、という人は、
揚げ物で、コッテリとしている所のある唐揚げを
サッパリと食べたいからと言い、
唐揚げにレモンをかけない、という人は、
せっかくカリカリに揚がった食感が、
レモン汁をかけることによって、台無しになるのが
イヤなのだと言う。

正直に言って、両方ともバカなのではないかと思う。
レモン汁というのは、強烈な酸味を持っている。
そんなものをタップリとかけておいて、
カリカリの食感が台無しになるのをイヤがるとか、
すでに頭のネジが外れているとしか思えない。
レモン汁みたいなものをたっぷりかければ、
食感の前に、味そのものが台無しである。
こんなものをかけてまで、
サッパリと食べたいなどというのなら、
そもそも唐揚げを食べたいと思うこと自体、間違っている。
蒸し上げた鶏肉を、ポン酢ででも食べていればいいのである。
鶏肉が持つ、その豊かな脂の味を、
レモン汁でほとんど殺してしまって、
サッパリした味になったといって喜ぶような人間は、
そもそも味について云々と抜かす資格が無い。
「うまい」「まずい」などと口にせず、
何かを食べたら、豚のように「ブヒィ」とでも
いっていればいいのだ。

さて、盛大に話がそれてしまったが、
この話で取り上げているのは、「鶏肉の唐揚げ」のことだ。
そもそも「唐揚げ」というのは、
鶏肉だけに限らず、魚や小エビ、
ニワトリの軟骨などでも作られる。
それらは「○○の唐揚げ」と呼ばれることが多く、
ただ「唐揚げ」とだけ言う場合は、
暗黙の了解として「鶏肉の唐揚げ」を指している。
しかし、そもそもこの「唐揚げ」という調理法自体、
はっきりとした定義が決まっていない。
全ての「唐揚げ」に共通している要素といえば、
「加熱調理」していることくらいで、
最近ではノンオイルフライヤーなどの出現により、
「油で揚げている」という大前提でさえ、通用しなくなっている。
恐ろしい時代になったものだ。
素材に小麦粉や片栗粉などをまぶして揚げてあるものもあるし、
素材に何もつけず、そのまま素揚げにしているものもある。
素材を調味液につけ込むなどして、味付けしてあるものもあれば、
全く素材に味を付けず、仕上がった後に塩こしょうなどで、
味付けする場合もある。
また、素材にまぶす小麦粉などの代わりに、
味のついた調味粉をまぶして揚げる場合もある。
素材を醤油、みりんなどで作った調味液で味をつけ、
片栗粉をまぶして揚げた「竜田揚げ」というものもあるが、
この「竜田揚げ」と「唐揚げ」の違いすら明確ではない。
これらから、無理矢理「唐揚げ」について定義するとすれば、
「素材をそのまま、あるいは味付けしたものを、
 何もつけず、あるいは小麦粉などの粉をまぶして、
 油で揚げたように調理した料理」
ということになる。
……。
うむ、正直、よく分からない定義だ。

唐揚げが、いつくらいから作られ始めたのかについては
諸説があり、あまりはっきりとはしていない。

わりとよく知られている話では、
江戸時代初期、中国からやってきた禅僧、
隠元禅師が持ち込んだ「普茶料理(ふちゃりょうり)」、
つまり本場中国の「精進料理」の中に
「唐揚げ」があったというものである。
なんで「精進料理」の中に「唐揚げ」があるんだ、
と突っ込まれそうだが、
「普茶料理」でいう「唐揚げ」とは、
現在の鶏肉を油で揚げたものではなく、
豆腐を小さく切り、これを油で揚げたものを
さらに醤油と酒で煮込んだものであった。
具体的に言えば、厚揚げの煮付けとでもすればいいだろうか?
本場中国の「精進料理」である「普茶料理」には、
肉以外の素材を用いて、肉の「ような」料理を作る
「もどき料理」が多く含まれている。
この豆腐の料理である「唐揚げ」も、
そのような「もどき料理」の1つなのだろう。
ともあれ、この「普茶料理」にある「唐揚げ」こそが
日本で最初の「唐揚げ」の名を冠した料理となった。
もちろん、これはあくまでも名前だけのことで、
現在の「唐揚げ」とは直接には繋がっていない。

この話とは別に、愛媛県の今治市には
「せんざんき」と呼ばれている料理がある。
これは鶏肉の様々な部位を醤油、酒、生姜、
ニンニクなどで作った調味液の中に漬け込んでおき、
これに片栗粉などをつけて揚げた料理である。
調理方法を見ている限りでは、「唐揚げ」そのものである。
これは今からおよそ300年前に作られたもので、
当初は雉の肉を油で揚げたものだったらしい。
「せんざんき」という名前については、
「鳥肉をまるごと千のように切る」ため、
このような名前になったという。
現在でも、「唐揚げ」を「ざんき」「ざんぎ」と
呼ぶ地域があることから、
この「せんざんき」がそれらの語源になった可能性は
否定出来ない。
ただ、この「せんざんき」に関しては
文献的な資料に乏しく、伝承の域を出ていない。
(逆に北海道の「ざんぎ」が、「せんざんき」の元である
 という話もある)

現在の「唐揚げ」が、外食メニューとして登場したのは
昭和7年ごろ、現在の「三笠会館」の前身である
「食堂・三笠」が最初である。
もともと「かき氷屋・三笠」としてオープンした店は、
その後、カレーやサンドイッチなどを扱う「食堂・三笠」となり、
さらに鶏料理を専門に扱う支店を開店した。
ところがこの支店が不振で赤字を出すことになり、
当時の料理長が事態を打開しようと考案したメニューが、
「若鶏の唐揚げ」であった。
ただ、恐らくはこの「唐揚げ」は、
考案したといっても「三笠」の完全なオリジナルではなく、
中華料理などにある鶏肉を揚げた各種料理をもとに、
日本人向けにアレンジしたものではないだろうか?
現在でも「三笠会館」では、
この「若鶏の唐揚げ」を食べることが出来る。

「唐揚げ」というのは、日本独特のものである。
戦後、食糧難に備え養鶏場を多く作るという国策のもと、
鶏肉の様々な食べ方が開発されていく中、
その中で、もっとも人気を得ることが出来たのが
「唐揚げ」である。
そういう理由もあり、「唐揚げ」が
一般家庭の食卓に上がるようになったのは、
ここ30〜40年ほどのことなのである。
大分県北部の中津市、宇佐市などに唐揚げ店が多く、
これらが「唐揚げの聖地」とされているのも、
もとはといえば、この地方に多くの養鶏場があり、
新鮮な原材料が豊富にあったことが、最大の要因だろう。
中華料理などにも鶏肉を揚げたものは多いが、
それらは油で揚げた後に、様々な調理が施されている。

単に下味をつけて油で揚げただけの
単純な「唐揚げ」が日本人に好まれるのは、
素材の味をシンプルに引き出す料理を得意とする
日本人ならではのことなのかも知れない。

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