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パクチー栽培

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「パクチー」という香草の人気が高まっているという話を聞いたのは、
もう数年前のことになる。

「パクチー」というのは、アジア料理などでよく使われる
セリに似た香草である。
パッと見た感じは、セリのように見えるが、
それもそのはずで「パクチー」もまた、セリ科の植物である。
別名「コリアンダー」、中国では「香菜」と呼ばれるこの植物は、
日本では「コエンドロ」という和名を持っている。
が、現在の日本で「コエンドロ」という名前を使っている人など、
1人もいないだろう。

生のままの葉や、乾燥させた葉、果実などを
食用や薬用として用いることが多いのだが、
この植物の最大の特徴は、その強い香りである。
その香りはクセが強く、人によって大きく好みが別れる。
つまり、好きな人は、まるで中毒にでもなったかの様に
この独特の香りを愛好するが、
嫌いな人は、まるで親の仇の様に、この臭いを毛嫌いする。
どういうわけか、女性にはこの香りを好む人が多く、
男性には毛嫌いする人が多いとされている。
この「パクチー」ブームの中では、
もう、何にでも、大量の「パクチー」を盛りつけて食べる
「パクチスト」などと呼ばれる、
強烈な「パクチー」ファンも登場している。
だが、この強烈な熱狂ぶりは、
普段、「パクチー」を常食している外国の人たちから見ても、
ドン引きされる態のものらしい。
ひとくくりにして良いものかどうか、判断に困る所だが、
何にでも「マヨネーズ」を付けて食べる、マヨラーと呼ばれる人たちに
酷似していると言っていいだろう。

この「パクチー」、先にも書いた中国名の「香菜」という名で、
マンガ「美味しんぼ」や「ミスター味っ子」にも登場している。
「味っ子」の方では、その強烈な香りについて触れるだけであったが、
「美味しんぼ」では、作中最高の美食家・海原雄山が、
「ああ、この香菜の香りがたまらない」と発言している。
(ただ、それと同じコマで周大人が
 「日本の方は、あまり香菜は喜ばれない」とも発言している)
こういう表現をされれば、俄然、興味がわいてくるのが、
自分という人間である。
一体、「香菜」とは、如何なるニオイがするのか?
しかし、これらの料理マンガで「香菜」が登場した当時、
日本では「パクチー」は、まだまだ珍しい香草だった。
スーパーに行っても、八百屋に行っても、
「パクチー」を手に入れるのが、難しい時代だったのである。

しかし、それから時代は移り変わり、
日本でも「アジア料理」が珍しいものではなくなった。
本格的な「アジア料理」の店では、
「パクチー」が使われることも多い。
やがて自分の周りにも、「パクチー」を食べたことがあるという人が、
チラホラと現れ始めた。
そうなると、早速、「パクチー」について話を聞いてみたくなる。

だが、「パクチー」について聞いた所、
返ってきた言葉は、「カメムシのニオイ」がするというものであった。
……。
え?カメムシ?
カメムシって、よくその辺にいる、あのカメムシ?
もう一度、改めて話を聞いてみたのだが、
やはり「カメムシ」のニオイがする、という。
……聞き間違いではなかった。
そうなると、あの海原雄山は、カメムシの香りを相手に
うっとりと陶酔していたことになる。

さて、そんな中で、自分は畑で野菜を作るようになった。
もちろん、メインとして作っているのは、
ジャガイモや大根などのメジャーな野菜なのだが、
その横の小さなスペースでは、
普通では、あまり栽培しないような珍しいモノを、
特に選んで栽培するようにしており、
これまで「そこ」では、ポップコーンシソなどを育てていた。
これは、他所にはない変わったモノを育てたいという、
へそ曲がりな願望に端を発するもので、
ここでは、栽培の成否は度外視である。
今年も、何か変わったモノはないかと探していたのだが、
先日、市内に新しく出来た農機具専門店の中を見ていると、
「苗」を販売しているコーナーに、「パクチー」の苗を見つけた。
小さなポッドに、セリのような植物が生えており、
一株120円ほどである。
思わず「おおっ!」と驚いて、1つ手にとってみた。
だが、その葉の一部が、となりの苗と絡まっていて、
上手くとれない。
仕様がなしに、手で絡んだ部分を外したのだが、
何たることか、わずかそれだけで、
カメムシの臭いがしてくるではないか。
カメムシの「ような」とか、「ぽい」などという、
微妙な形容ではなく、もう、ずばりカメムシそのものの臭いである。
ひととおり、苗を確認した後、これを棚に戻したのだが、
その後もしばらく、指先からカメムシの臭いが
とれることはなかった。
その辺りも、カメムシの臭いと性質がよく似ている。

そのときは、結局、「パクチー」の苗を購入しなかったのだが、
この植物については、その後も強い印象が残っていた。
アレが、今、巷で大人気の「パクチー」なのである。
信じ難いことではあるが、あのカメムシの臭いのする香草を
どんな料理にでも山ほど盛りつけて、
それをウマいウマいと、食べている人間がいるのである。

これまでの自分の「食」の常識で言えば、
多分、アレをウマいと感じることはないだろう。
まともに考えるのであれば、そんな作物を育てるなど、
あり得ない話である。
しかし自分は、一度、興味を持ってしまえば、
結局、最後には好奇心が勝ってしまう人間だ。
「育てて食べてみたい」という気持ちが、
「ウマくなさそうだ」という気持ちを上回るのに、
それほど時間はかからなかった。
後日、肥料を買うためによったホームセンターで、
特売品の「パクチー」の苗(1株・30円)を見つけた自分は、
迷わずこれを2つ購入して、栽培してみることにした。

苗についていた説明書きを見てみると、
「陽当たりが良く、水はけの良い土地に植えろ」とある。
ちょうど、花壇の一部にそのような場所があったので、
そこに自家製の腐葉土と、買ってきたばかりの肥料を混ぜ込んで、
「パクチー」の苗を植え付けた。
果たして上手く根付いてくれるかどうかは分からないが、
もし、これが上手く根付き、順調に成長していけば、
そのうち、「パクチー」を実食してみる機会も出来るだろう。

その際には、また改めて、実食レポートを書いてみるつもりである。

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