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紫蘇

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By: snak

よく、雑誌などのアンケートで、
「どんな天ぷらのタネが好きですか?」
というものがある。

こういう記事には、すでに雑誌の方で調査した
人気ランキングのようなものが掲載されている。
ちょっと調べてみた所、
ランキングの1位は「エビ」で、その支持率は圧倒的である。
サクサクの衣をまとった、プリプリのエビのうまさは
老若男女を問わず、人気を集めている。
2位は「さつまいも」である。
面白いことに、普段はサツマイモなんか食べないよという人でも
天ぷらならば食べる、という人は多い。
また、天ぷらを作る側にしてみても
サツマイモの天ぷらは下拵えが至極簡単である。
なんといっても、適当な厚さにスライスするだけだ。
この辺りの手軽さも、人気の秘密かも知れない。
3位は「かき揚げ」である。
これはサツマイモとは逆で、下拵えにも揚げるのにも
手間がかかる。
揚げるのに失敗すれば、
具材の入り混じった天かすが大量に出来上がり、
翌日は狸ソバにでもしようか?なんてことになるが、
上手く出来上がった「かき揚げ」だと、
全体がいい具合にサクサクに仕上がり、
これぞ「天ぷら」と言いたくなるほどの美味しさである。
4位以降は、かぼちゃ、なす、レンコン、シイタケ、烏賊、
ちくわなどが並んでいる。
いずれも天ぷらのタネとしては、どれもお馴染みのものばかりで、
その姿も、味わいも容易に思い浮かべることが出来るだろう。

自分の好きな天ぷらのタネということになると、
ランキング形式で発表するのは難しくなる。
自分には、圧倒的に好きな天ぷらのタネが4つあり、
この4つには上下をつけることが出来ないからである。
その4つというのが、タケノコ、たらの芽、茗荷、
そして最後の1つが、
今回のテーマでもある「紫蘇(大葉)」である。
子供のころから、これらの天ぷらには目が無く、
エビやサツマイモ、かき揚げよりも
これらを好んで食べていた。
子供なんていうのは、大方がエビやサツマイモを好むので、
それらを食べずに紫蘇(大葉)ばかり食べている自分は、
どうも、かなりオカシイ子供だったらしい。

紫蘇は、シソ科シソ属に属している1年草である。
紫蘇にも様々な種類があるのだが、
我々日本人が、一般的に「紫蘇」と呼んでいるのは
「赤紫蘇」と「青紫蘇」である。
両者ともに茎は四角く、葉の縁がギザギザになっている。
「赤紫蘇」は、呼んで字のごとく葉が「赤紫」色になる。
「赤」ではなく、「赤紫」である所がミソだ。
(ちなみに「青紫蘇」の場合、葉は「青紫」にはならず
 「緑」色である)
もともとはこの「赤紫蘇」こそが、本来の「紫蘇」で、
「青紫蘇」はこれの変異種であるらしい。
「赤紫蘇」には、シソニンと呼ばれる
アントシアニン色素が含まれており、
これが酸と反応すると赤く発色する性質がある。
この性質を利用しているのが、
梅干しや紅ショウガなどの赤色である。
「青紫蘇」は、別名「大葉」ともいい、主に薬味として使われる。
一般的には薬効が高いのが「赤紫蘇」、
栄養価が優れているのが「青紫蘇」とされている。

「紫蘇」の原産地は、
ヒマラヤから中国南部にかけての一帯で、
日本には中国から伝わったとされている。
縄文時代の遺跡から「紫蘇」の種子が発見されていることから、
そのころから栽培されていたと考えられており、
日本ではもっとも古くから栽培されていた野菜の1つである。
もっとも、当時の「紫蘇」の扱いは、
野菜という他に、薬草としての一面も強く、
咳止めの薬としても用いられていたようである。
平安時代には「香辛野菜」として栽培されていることから、
現在とほぼ変わらない扱いを受けていたのだろう。

「紫蘇」の名前の由来については、
中国・三国志の時代のことだとされている。
後漢末のころ、洛陽の若者が「蟹」の食べ過ぎで
食中毒を起こした。
洛陽は黄河沿い、東に広がる広々とした平野と
西に広がる山岳地帯の境目にあたる町であり、
海からは遠く離れている。
この若者が食べた「蟹」というのは、
日本人のイメージするような、大型の海の「蟹」ではなく、
川などに棲む、淡水性の「蟹」だろう。
この若者は死にかけていたが、名医・華佗が薬草を煎じ
紫色の薬を作った。
この薬を用いた所、若者はたちまち元気を取り戻した。
このことから「紫」の「蘇」る薬草だということで、
「紫蘇」の名前がついたという。
華佗は、「三国志演義」の中にも名医として登場している。

このエピソードからもわかるように、
「紫蘇」は、野菜としての一面よりも
むしろ薬草としての性質が強い。
「紫蘇」の薬効を挙げてみると、

・アレルギー症状を軽減する
・食欲増進効果
・目の健康に働きかける
・免疫力を高める
・骨や歯を丈夫にする
・ストレスを和らげる
・疲労回復
・貧血予防
・血液サラサラ効果

などがある。
花粉症や各種アレルギーのある人は、
一度試してみてもいいのではないだろうか。

かつて、「紫蘇」は我が家の庭の片隅に自生(?)していた。
毎年、同じ場所に生えてきて、
わさわさと盛大に茂っていた。
いざ「天ぷら」ということになると、
自分はその「紫蘇」の所へ行って、虫に食われていない
きれいな葉っぱを摘み取り、母親の所へ持って行った。
そうすると、母親はその片面に衣をつけ、
油の中に放り込む。
ものが薄っぺらい葉っぱであるだけに、あっという間に揚がる。
サクサクに揚がった「紫蘇」の葉を、
天つゆか醤油につけてかぶりつくと、
独特の芳香と、サクサクとした食感が口の中に広がった。
「紫蘇」の葉は、大量についているのである。
それこそ、いくらでも食べることが出来た。
販売されている「紫蘇」などは、よく残留農薬が問題になるが、
庭の隅に自生している「紫蘇」に、農薬の心配など無い。
誰がわざわざ雑草に農薬などをかけるのか。

しかし、これが災いしてか、
我が家に自生していた「紫蘇」は、
だんだんと虫の被害が大きくなっていき、
ついにある年から、生えてこなくなってしまった。
それ以降、「紫蘇」の葉は
買ってこなければ食べられないものになり、
我が家の食卓に上がる機会も激減した。
お金を払って買ってきた「紫蘇」は、
鮮度においても、味においても、
庭に自生していたものには、遠く及ばなかった。

そのうちまた、庭の片隅にでも生えてこないかなと
期待しているのだが、
どうもそう上手くもいかないらしい。

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