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原作とアニメ

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最近は、マンガ雑誌を読む機会も減ってしまったが、
昔は何冊ものマンガ雑誌を愛読していたものだ。

週刊少年ジャンプや、少年マガジン、少年サンデーなどは
立ち読みではなくしっかりと購読していたし、
ビッグコミックオリジナルもいつの間にか、
購読するようになっていた。
……。
普通は少年ジャンプ、マガジン、サンデーの後に
ヤングジャンプやヤングマガジンなどの青年誌を経て、
ビッグコミックオリジナルに変遷していくものだろうが、
どうも自分には、この「ヤング○○」という青年誌の部分が
きれいに抜け落ちていた。
あの暴力やらアウトローやらが
自己主張しているタイプのマンガの多い雑誌には慣れず、
ついぞ購読するには至らなかったのである。

そういう自分のマンガ雑誌遍歴は置いておくとして、
この手のマンガ雑誌に掲載されているマンガは、
一定以上の人気を得てくると、アニメ化されるのが普通である。
そういうことになると、そのマンガが雑誌の表紙を飾り、
「アニメ化決定」とのロゴが、それに重なる。
さらに雑誌の冒頭でアニメ化紹介の記事が組まれ、
アニメ化を機に、さらに人気を高めようと盛り上げてくる。
最近のマンガ雑誌は読んでいないので、
現在でも同じようにやっているのかはわからないが、
少なくとも、自分が読んでいたころの少年マンガ雑誌だと、
アニメ化→巻頭特集というのが定番であった。

さて、このようにマンガをアニメ化する場合、
大きく2つのパターンに分けることが出来る。
あくまでも原作に忠実にアニメ化していくか、
原作はあくまでも別物と割り切り、
内容をいじり、全くの別物として作り上げるかだ。

本来、原作の有るものを映像化する場合は、
原作に忠実に仕上げるのが基本だろう。
人気の小説などを映像化する際に、
映像化スタッフが勝手な改変を行なったために、
原作者との間に軋轢が生まれた、なんていうのは
わりとよく聞く話である。
ファンとしては、そういう軋轢によって
せっかくの映像化にケチを付けられることは、
決して愉快なことではないだろう。
最近よく聞くパターンだが、
人気マンガを実写ドラマ化する場合、
原作にはない恋愛要素を付け加えられたり、
原作にはないキャラクターがオリジナルで付け加えられたり、
原作のキャラクター性別が替わっていたりする。
また、そこまで露骨な変更ではないにせよ、
キャラクターのイメージに合わない俳優を起用することによって、
ファンからの反発を買うことも多い。
アニメ化の場合、そこまで露骨な改変はあまり無いようだが、
中には、えっ!ここまで変えるの?という改変をしている
アニメも存在する。
今回は、同じテーマを扱ったマンガのアニメ化を取り上げ、
原作に忠実に作られたものと、
原作とかけ離れて作られたものを、引き比べてみたい。

今回、取り上げるマンガは「美味しんぼ」と「ミスター味っ子」だ。
どちらも「食」をテーマにしたマンガだが、
「美味しんぼ」は大人に、「ミスター味っ子」は子供に
ターゲットを定めた、話の作りになっている。
この2本のマンガは、ほぼ同時期にアニメ化され、
片や原作に忠実な、片や原作からかけ離れたアニメを作り上げた。
それぞれどのようにアニメ化されたのか、詳しく見ていこう。

アニメ「美味しんぼ」は、
ビッグコミックスピリッツで連載していたものが、
1988年にアニメ化されたものだ。
子供向けアニメの多かった当時にしては珍しく、
「大人」をターゲットとしたアニメ作品であった。
特に、主題である料理のシーンの作画レベルは高く、
見応えのあるアニメに仕上がっており、ファンの評価も高い。
内容については、一部に細かい修正・改変はあるものの、
極めて原作に忠実に作られている。
ただ、1話完結という原作のスタイルゆえか、
個別エピソードの放映順は、原作の掲載順とは一致していない。
とはいえ、物語の大筋には大きな変更は無く、
原作のファンからしても、文句のでない作りであった。
まさに、原作を忠実にアニメ化した作品といえる。

それに対しての、アニメ「ミスター味っ子」である。
週刊少年マガジンに連載していたものが、
1987年にアニメ化されたものである。
少年マンガ誌に掲載されていただけに、
話も子供にわかりやすいように「料理勝負」がメインであった。
少なくとも、原作「ミスター味っ子」は
かなりオーソドックスな、少年料理マンガであった。
ところが、一旦これがアニメになると
原作のかなりの部分に、改変が加えられることとなった。
主人公のそばに、原作には存在しなかった幼馴染みと
その弟が存在し、メインキャラクターとなっていた。
さらにキャラクターによっては性別や、素性が変更されたり、
原作に存在しなかったエピソードが大量に加えられた。
肝心の「料理勝負」にしても、
原作とは異なった結末になったり、
原作で登場した料理が、全く別のエピソードで使われたりもした。
普通に考えれば、これだけでも
原作と全く異なった作品になっているのだが、
このアニメ「ミスター味っ子」には、
それらが全て霞んでしまうほどの大改変が存在した。
それが、料理を食べた人間のオーバーアクションである。
原作「ミスター味っ子」においては、
極めて普通であった料理を食べるシーンが、
あり得ないほどのアクションを持って描かれたのである。
例えば、味見役(判定人)を務める味皇が、
「うまいぞぉーっ!」と叫びながら、
「巨大化したり」、「口から光線を吐き出したり」、
「津波の中を泳いだり」、「宇宙へ飛んで行ったり」、
「車いすで階段を駆け上がったり」した。
この原作に無い、強烈な美味の表現はたちまち話題になり、
アニメ「ミスター味っ子」の人気を決定づけた。
これらの表現は、現在でもパロディとして、
様々なアニメ・マンガなどで使われている。

面白いのは、あくまでも原作に忠実だった
アニメ「美味しんぼ」も、
これでもかというほど、原作を変えた
アニメ「ミスター味っ子」も、
絶大な人気を得ていた、ということである。
「味っ子」など、当初は25話程度で終わる予定だったものが
人気のあまり延長に延長を重ね、全99話となっている。

原作に忠実に作られたものが、
原作ファンに評価を受けるのは当然のことである。
アニメ「美味しんぼ」は、まさにこの典型だろう。
しかし、原作に散々改変を加えた「味っ子」が、
なぜ、これほどの大きな人気を得ることが出来たのか?
恐らくは、散々原作に改変を加えたとはいえ、
人気の「核」となっていた部分は、
そのまま残っていたからではないだろうか。

昨今、原作を改変して不評をかっているアニメやドラマも多い。
恐らくは、人気の「核」となっている部分が
改変によって変えられてしまったためだろう。
そういうアニメ・ドラマ制作者たちは、
アニメ「ミスター味っ子」に、学ぶべきであろう。

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