雑学、雑感、切れ味鋭く、思いのままに。

Falx blog 2

食べ物

桜餅

投稿日:

桜餅というのは、季節のお菓子だ。

もちろん桜咲く季節、『春』の和菓子である。

最近は季節感もなくなってきて、通年売られていることもある。

スーパーの和菓子売り場に行けば、いつでも購入することができる。

これは、桜餅の人気が高い証だろう。

今回は、この桜餅について書いていく。

和菓子通の人には、広く知られていることだが、

実は桜餅というのは2種類ある。

それぞれ「長命寺」と「道明寺」と呼ばれている。

これには地域性があり、ざっくりいうと東日本では「長命寺」、

西日本では「道明寺」が作られている。

「長命寺」は薄焼きされた生地で、小豆餡を包んだもので、

「道明寺」は道明寺粉を蒸して餅を作り、小豆餡を包んだものだ。

両方とも、生地や餅が食紅で桜色に染められており、

さらに出来上がったものを、塩漬けの桜の葉で巻いてあるのが特徴だ。

日本の大部分では、このどちらかしか売っていない。

つまり日本人のほとんどは、「長命寺」か「道明寺」、どちらかの桜餅しか

知らずに生きていることになる。

桜餅はもともと「長命寺」が元祖だ。

今から約300年前、江戸向島の長命寺の門前で売り出したことが、

「長命寺」の名前の元になっている。

「道明寺」の桜餅は、この「長命寺」が元になっているといわれる。

が、この2つは外見上に大きな違いがある。

餡を包む生地の違いだ。

「長命寺」のほうは小麦粉の薄焼きで、挟むように餡を巻いているが、

「道明寺」は道明寺粉で作った、粒の残った餅で、餡を完全に包み込んでいる。

ここでまず、道明寺粉とはどういうものなのか、簡単に説明する。

道明寺粉とは、もとは道明寺糒といい、米を使った保存食の一種だ。

水につけた粳米を蒸し上げ、それを乾燥する。

乾燥のさせた米を粗く砕き、そのまま保存する。

これを食べる時には、もう一度吸水させ蒸し上げる。

蒸したり、干したり、水を吸わせたりを繰り返す、誠に手間のかかるものだ。

保存食であるわけだから、基本的には蒸しもどし、そのまま食べたり、

餅に加工して食べたりしていたのだろう。

現在では、菓子原料として使われている。

この道明寺粉を使った和菓子の中に、「椿餅」というものがある。

道明寺粉を使って餅を作り、これを椿の葉で挟んだものだ。

さすがに桜餅とは違い、椿の葉は食べることができないが、

その点を除けば「道明寺」の桜餅によく似ている。

ちょっと見には、白い桜餅のように見える。

これは平安時代から作られている菓子で、もとは餡は入っていなかった。

「道明寺」の桜餅は、「長命寺」の桜餅にヒントを得て、

椿餅をアレンジしたというのが、実情ではないだろうか?

正式な桜餅というのは、ちょっと家庭で作るのは面倒だ。

まず塩漬けの桜の葉が、なかなか手にはいらない。

それでも、季節によってはスーパーなどでも扱っているので、

その時を逃さずに購入したい。

さらに「長命寺」の生地は比較的簡単に作れるが、

「道明寺」の道明寺粉を使った生地は、まず材料である道明寺粉が手に入らない。

だから普通の家庭で作る場合、餅米を蒸して、

半搗きの状態にして代用したりする。

ちょうど、おはぎの餅を作る要領だ。

これを食紅で着色すれば、何とか道明寺粉の生地の代用になる。

この生地で小豆餡を包み、塩漬けの桜の葉を巻けば、なんとか桜餅が出来上がる。

かつて、ある立食パーティーのデザートに、桜餅が出てきたことがある。

それぞれが料理を持ち寄る、ホームパーティーの大きいやつ、

くらいの規模だったので、誰かが作って持ってきてくれたのだろう。

それが、ピンク色のおにぎりに、塩漬けの桜の葉を巻いたものだった。

もちろん、おにぎりの中にはアンコが入っている。

アンコのまわりの生地だけが、従来の桜餅と違っていた。

見た目にはかなり違和感のある桜餅だったが、

食べてみると味は普通の桜餅だった。

たしかに生地の食感がずいぶんと違っていたが、それもあまり気にならなかった。

個人で和菓子を作る場合、面倒な手順をばっさりと無視することがある。

なるほど、確かに本来のレシピ通りに作れば、本来の味がするだろう。

しかし、原材料の入手が難しいような場合、本来のレシピはなかなか守れない。

ならばと、手軽なアレンジをして作るのも、そう悪いことではない。

何といっても、こちらは個人だ。

別段、何百年続く和菓子の伝統を背負っているわけでもない。

そんなのは、和菓子屋に任せればいい。

個人はただ、作ることと食べることを、楽しめばいい。

お菓子は食事とは違い、楽しむためのものなのだから。

Related Articles:

にほんブログ村 その他生活ブログ 雑学・豆知識へ
にほんブログ村

スポンサーリンク
スポンサーリンク

-食べ物

Copyright© Falx blog 2 , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.