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子供の頃、習字教室に通っていた。

毎週土曜日に地区の公民館でやっていた、実に素朴な書道教室で、

そこで手本を見ながら、一所懸命に練習していた。

一応、段位制度らしきものがあり、月に一回発行される冊子に、

段位が発表される仕組みだった。

それを見れば、自分が今、どれくらいの段位にいるのか、

一目でわかるようになっていた。

普通、段位などというものは、一度、取ってしまえば下がりはしないものだが、

どういう仕組みだったのか、この段位は上がったり下がったりした。

記憶が確かならば、10級から始まり、最高でも4段とか5段位だったと思う。

この中で、いつも4級から2級の間を、行ったり来たりしていた。

段位の乱高下もなく、微妙なラインで安定していた。

正直に言ってしまえば、当時の自分にはつまらなかった。

以降は、中学になろうが、高校になろうが、書道というのは、

ただ作品を見るだけのもので、自分で実践してみるものではなくなっていた。

これにちょっと興味を持ったのは、篆書体の作品集を見てからである。

篆書体というのは、現存する漢字の書体の中で最も古いものだ。

この篆書体に到る前に、甲骨文字、金文というものがあった。

甲骨文字は亀の甲羅や獣骨、金文は青銅器などに刻まれたものだ。

これらが篆書体として、中国全土で統一されたのが、秦の時代である。

外見上の大きな特徴は、線の太さが均一で、字体が丸みを帯びていることだ。

現代では印鑑などに、この篆書体が使われている。

パッと見た感じ、ナスカの地上絵のようにも見える。

もとが象形文字だけあって、絵画的な雰囲気が残っているのだ。

この篆書体の後に作られたのが、隷書体である。

作られた、といっても全く新しい書体ではなく、篆書体を元にして

なおかつ書きやすく使いやすいように、という目的で改良されていった。

篆書体から一気に移行したのではなく、後漢の時代くらいまでの長い期間を経て、

徐々に変化していった。

外見的な特徴は、横線が長く、全体的に縦に短い字体である。

さらには左右の払いの際に、波打つような運筆をするのも特徴のひとつで、

これを波磔(はれき)と呼ぶ。

さらに隷書体から、楷書体が作られる。

現在、小学生が習字の時間に習っているのが、この楷書体で

我々には、一番見慣れている字体である。

歴史的にいえば、隋・唐の時代に、主に使われるようになった。

線を続けたりせず、一画、一画、丁寧に書かれているのが特徴で、

まさに小学生の習字の時間を思い起こさせる。

日本人が通常用いている字は、この楷書体である。

楷書体を、若干の続け書きをもって書いたのが、行書体だ。

基本的には、楷書体のアレンジバージョンといった感じなので、

読むのはわりと簡単だ。

文字をより速く書こうとした結果、誕生した字体だといえる。

普段、乱暴に字を書く人は、自然とこの字体に近くなっていることもある。

行書体を、さらに速く書くことに特化させたのが、草書体だ。

一説によると、楷書体を速く書くために作られたのが行書体、

隷書体を速く書くために作られたのが草書体、ともいわれる。

この草書体は、速記のために、もとの字形を大きく変化させており、

その法則や、ルールを知らなければ、読み取ることは不可能に近い。

草書体の厄介な所は、文字の崩し方が、ひとつではないことだ。

ひとつの文字に、複数の崩し方があるのも、めずらしくない。

それだけではなく、逆に全く別の文字を崩しているはずなのに、

全く同じ崩し文字になってしまっていることもある。

もうこうなってくると、まともには解読できない。

草書体には、「草書体を読み解く」というような本も出ている。

まるで暗号だ。

この手の解読本を読んでみても、よくわからない漢字に関しては、

文章の前後を良く見て、文脈から判断する、と書いてある。

ところが草書体の場合、その前後を見ても解読できないことが多い。

……どうしろというのか。

ここまで簡単に、書道で使われている5つの書体について書いてみた。

いわゆる、篆・隷・楷・行・草である。

書道展などで作品を見て、普通に読める作品は隷・楷・行のどれかだ。

字形が横に長く、縦に短ければ隷書の可能性が高いし、

きっちり、丁寧に書かれていれば楷書だろう。

やや字形は崩れているが、普通に読めれば行書体と考えていい。

問題は篆と草だ。

篆書体は、どことなく古代の絵文字の様相を残し、

なおかつひとつひとつの字の大きさが同じで、字と字の間もきっちりと一定だ。

形を覚えさえすれば、なんとか読めるようになる。

むしろ、どことなくパズルやクイズを解く感覚になり、楽しさもあるだろう。

草書体は、……読めない。

逆に読めなければ、それが草書体だと判断しても問題ない。

素直に、横に貼ってある解説を読んだ方がいい。

よく、へたくそな字のことを「ミミズののたくっているような字」などという。

草書体で書かれたものを見ていると、まさにそんな字のように見える。

しかしそこに書かれているのは、ただの「ミミズの、のたくっているような字」

ではなく、「高級なミミズの、のたくっているような字」なのだ。

もちろん、自分にはミミズの善し悪しは判断できない。

ただ、他人が読みやすい字を書こうと、反省するだけである。

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