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ブリ

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By: gtknj

肉と魚において、その「脂」の扱いには大きな差がある。

肉の「脂」は、不健康の代名詞である。
大方の人間の感覚からすると、ウマいが体に悪いというのが
その一般的な認識と考えていいだろう。
昨今では、「肉は赤味こそが本当の味である」などということを
いかにも味が分かっていますというような顔でホザく輩が多いが、
これはもうどうしようもない半可通の戯言だ。
「脂」もまた、重要な味の要素の1つであり、
「脂」味と赤味の「旨」味、そしてそれを引き出すための
「塩」味の3つがあって、始めて味が立体的になり
「ウマい」というレベルに達するのである。
(最近では人間の健康を基準にして、脂のほとんどついていない牛などを
 有り難がるバカがいるがとんでもないことである。
 「脂」が体につくということは、それだけ食生活に余裕があるということだし
 「脂」が体につかないということは、まさにギリギリの食生活であると
 いうことだ。
 体に「脂」がつくだけしっかりとエサを貰えたということは、
 牛の精神面にも十分な安定感を与えられているということで、
 結果として赤味の質においても、ずっと質が良くなるわけである)
  
「歳と共に脂を摂るのがキツくなった」などということを言う者がいるが、
これも恥ずかしい戯言である。
少なくとも、肉体(この場合は消化器系)が健康を維持しているのなら、
歳と共に食べる量が減るということがあっても、
「脂」がダメになるなどと言ったことはない。
これがダメになったということは、その人間の食生活が悪く、
消化器系をダメにしてしまったというだけのことである。
早い話、歳と共に脂がダメになったということは、
それまでのその人の人生(というか食生活)がダメだったと
いうだけのことである。

肉の「脂」について、グダグダと書いてしまったが、
これが魚の「脂」ということになると、その評価が一変する。
いわく「魚の「脂」は健康に良い」といって、これを容認するのである。
実際に魚の「脂」は、体に悪いといわれる飽和脂肪酸の値が低く、
逆に体に良いといわれるオメガ3不飽和脂肪酸の値が高くなっていて、
肉の「脂」よりは、確かに健康には良さそうである。
最近では、魚の「脂」についても、マグロの霜降り部分(いわゆるトロ)
よりも赤身をウマいと主張する人間がいるが、
肉の場合に比べると、かなり数は少ないようだ。
恐らくは肉の場合と混同して、「通」ぶっているだけだと思われる。
いっとき、青魚などに含まれている「ドコサヘキサエン酸」を摂取すると
頭が良くなるなど言ってもてはやされたことがあったが、
この「ドコサヘキサエン酸」もまた、魚に含まれている
不飽和脂肪酸の一種である。

さて、改めて「脂」の多い魚、ということを考えると、
色々な魚が候補として上がってくる。
サンマ、ウナギ、サバ、イワシ、マグロなどなど。
マグロなどは赤味とトロの部分などで、
「脂」の含有量も大きく変わってくるが、
それ以外の魚については、どれも「脂」のノリ=ウマさと評価されることも多い。
サンマなどは落語「目黒のサンマ」などでも、その「脂」の多さについて
描かれており、また、そこがオチにも繋がっているのだが、
この「ブリ」もまた「脂」の多い魚の1つに数えられる。

「ブリ」はアジ科ブリ属に属する海水魚である。
主に北西太平洋に生息する大型の肉食の回遊魚で、
最大サイズのものでは全長150cm・体重40kgという大きさに
育つこともある。
姿形の似ている魚で、カンパチ、ヒラマサなどがおり、
これらをひとまとめにして「ブリ御三家」「青魚御三家」などと呼ぶ。
(ヒラマサは口の端が丸みを帯びているかどうか、
 カンパチは頭頂部から目を経て上顎まで続く黒褐色の帯模様などで
 見分けることが出来る)
また「ブリ」は出世魚であり、成長するに従って
その呼び名を変えることでも知られている。
関東ではワカシ(35㎝以下)→イナダ(35〜60㎝)→
ワラサ(60〜80㎝)→ブリ(80㎝以上)となるのに対し、
関西ではツバス(40㎝以下)→ハマチ(40〜60㎝)→
メジロ(60〜80㎝)→ブリ(80㎝以上)と呼ばれる。
もちろん、地方ごとにさらに別の呼び名がつけられていることもあり、
日本全国では合わせて100以上の呼び名があるともいわれている。
ただ、日本全国のほとんどの地域では、80㎝以上のサイズのものを
「ブリ」と呼ぶことが共通している。
また、流通の上では大きさに関わらず、養殖物を「ハマチ」、
天然物を「ブリ」と呼んで区別することもある。

標準和名である「ブリ」については、江戸時代の本草学者・貝原益軒が
「脂多き魚なり、脂の上を略する」と語っており、
「アブラ」が「ブラ」へと変わり、さらにこれが「ブリ」になったとされる。
この他にも「身が赤くてブリブリしているから」という説もある。
「アブラ」が「ブリ」に変わったという説も
「身が赤くてブリブリしているから」という説も、
正直、どうもしっくり来ない所がある。
また「ブリ」を漢字で書くと「鰤」となるのだが、
これは「師走(現在の12月)に美味しくなる魚だから」という説と、
「『師』は大魚であることを表すためである」という説がある。
「ブリ」の古い地方名の中には、特に大型のもの(1mを超えるようなもの)を
「オオイオ」と称するものもあり、これなどは「オオウオ(大魚)」が
変化したものなのではないかと考えられる。
「脂」がのっていることと、「大きい魚」であること。
「ブリ」をいう魚は、古来よりそういうイメージで見られてきたようだ。

かつて、この「ブリ」が大きな騒動を巻き起こしたことがある。
江戸時代の初期、1648年に丹波福知山藩で起こった
「ブリ騒動」と呼ばれる事件である。
その詳細はこうだ。
1648年、内陸の藩である福知山藩主・稲葉紀通が
丹後宮津藩主・京極高広に対して「寒ブリ」100匹をねだった。
この「寒ブリ」を幕府への賄賂に使われることを恐れた宮津藩では、
その対策として頭を切り落とした「寒ブリ」を進呈した。
このことに激怒した稲葉紀通は、福知山藩内を通行する宮津藩の領民を捕らえ、
次々と首を刎ねて殺害するという報復行為を行なった。
(なんでも「ブリは頭がウマいのに!」といってキレたらしい)
藩主同士の下らないイザコザで殺されたわけだから、
宮津藩の領民としては全く理不尽極まる事態である。
記録によれば、稲葉紀通自身が鉄砲で京極家の飛脚を狙撃しようとし、
誤って他家の飛脚を殺害してしまったことから騒ぎが大きくなった。
(もっともすでに、全く罪もない他藩の領民を捕らえて、
 片っ端から首を刎ねていたわけだから、
 その段階で大きな騒ぎにはなっていたと思うが……)
幕府は稲葉紀通に対し、江戸に参府して弁明を行なうように命じたが、
紀通は8月20日に福知山城内にて自殺した。
一説によれば切腹ではなく、鉄砲を使った鉄砲自殺だったともいわれる。
藩主がこんな不始末をしでかして、藩が無事なわけがなく、
福知山藩稲葉家も改易となってしまった。
この稲葉紀通という人物は、この「ブリ騒動」の他にも
色々な問題を起こしている人物だったので、
この事件がなくとも、早晩、改易切腹させられていたであろうことは確実だが、
「ブリ」が、1つの藩を潰すきっかけになったのは事実である。
さらに、宮津藩の思惑から考えるに、当時「ブリ」は
賄賂として用いることが出来るほど、珍重されていたことも分かる。

現在では1年を通じて、「ブリ」の切り身は
スーパーの鮮魚コーナーに並んでおり、季節感がすっかり無くなってしまったが、
やはり寒くなってくるこれからの季節が「旬」であることに変わりはない。
折角なので、こってりタップリとした「ブリ」の脂を摂って
寒い冬に備えていきたいものだ。

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