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イトメン とり野菜みそらーめん

更新日:

イトメンの「チャンポンめん」という商品は、
売る店を選ぶというか、売る店に選ばれる商品である。

地元たつの市のメーカーの商品でありながら、
地元たつの市のスーパーやドラッグストアの中には
この商品を取り扱っていない店も存在している。
少なくとも、たつの市においてインスタントラーメンの人気投票をすれば、
間違いなくトップに輝くであろう商品なのだが、
全国的なチェーン店の中には、たつの市内の店舗であっても
この人気商品(というかイトメンの商品全て)を扱っていない所もある。

自分がよく行くドラッグストアもそういう店の1つで、
イトメン関連の商品を全く置いていなかったのだが、
先日、自分が店の中を見て回っていると、インスタントラーメンのコーナーに
「チャンポンめん」の5袋入りパックが並んでいた。
ひょっとすると、地元の客の熱望により
新しく「チャンポンめん」を扱うようになったのかも知れない。
そのことを強く客にアピールするためか、
「チャンポンめん」は売り場の中でも特に目立つ、
棚のサイドの部分に山の様に積み上げられていた。

問題はその隣である。

5袋入りの「チャンポンめん」の黄色い袋の横に、
やはりフタの黄色いカップラーメンが積み上げられていた。
当然、普通に考えれば、そこに積み上げられているのは
カップタイプの「チャンポンめん」ということになるはずなのだが、
よく見てみると、そのパッケージは
いつものカップタイプの「チャンポンめん」のものではない。
「イトメン」のロゴと、イメージキャラクターである「トビッコ」が
印刷されているのは「チャンポンめん」と同じだが、
そこにはどこかで見たようなロゴで
「とり野菜みそらーめん」と印刷されていた。
そして、そのロゴの左下には、
「みそ鍋家族 まつや とり野菜みそ」という味噌の写真が印刷されている。
ご丁寧にその写真の横には「石川県のご当地みそ」という説明もついていた。

ここに印刷されている「とり野菜みそ」という商品は、
地元のスーパーで何度か目にしたことがある。
どちらかといえば、普通に商品棚で見かけるよりは、
投げ売りコーナーのワゴンの中で見かけることが多かったように思う。
赤と緑の商品名のロゴの他に、レトロ風(というか実際にレトロな)な
女性のイラスト、そして野菜がたっぷり入った鍋の写真が印刷されていた。
袋の中に入っているのは、どうやらダシや調味料を配合済みの
「調味みそ」のようなのだが、パッと見にはごく普通のミソにしか見えない。
先に書いたように、投げ売りコーナーで見かけることもあったのだが、
結局、一度も購入してみたことの無い商品である。

このパッケージから察するに、どうやらこの「とり野菜みそらーめん」は、
その「とり野菜みそ」を味付けに使った、いわゆるコラボ商品の様である。
地元のスーパーでは全く目にしたことがなかったので、
ひょっとしたら新商品なのかも知れない。
イトメンの新商品、ということになれば、
とりあえず買って試してみたくなるのが、正しいたつの市民の性である。
迷わず「とり野菜みそらーめん」を1つ手に取って、レジに持っていった。

家に帰り、「とり野菜みそらーめん」を食べる前に、
イトメンのホームページをチェックしてみることにした。
新商品ということであれば、恐らくホームページ上で
大きく特集しているはずである。
以前の「ブラックチャンポンめん」のときの様に、
特設ページが作られているかも知れない。
そう思ってイトメンのホームページにアクセスしたのだが、
そのトップページでは、相変わらず「ブラックチャンポンめん」が
大々的に特集されており、「とり野菜みそラーメン」については
全く触れられていなかった。
その成り行きに首をひねりながら、
今度は「とり野菜みそ」について調べてみた。

こちらは石川県かほく市に本社を置く食品メーカー「まつや」の商品で、
この「とり野菜みそ」がは、その看板商品の様だ。
この会社のルーツは古く、江戸時代まで遡ることが出来る。
初代の松屋和平は、北前船を運航する回船問屋を営んでいたという。
当時の北前船の航海は厳しく、その厳しさから体を壊す船乗りが続出していた。
そんな状況を見た松屋和平は、船上で船乗りたちに栄養価の高い食事を
摂らせるために「とり野菜みそ」を考案したという。
この商品名にある「とり」というのは、「鳥」や「鶏」のことではなく、
野菜や栄養を摂るという意味の「摂り」から来ているらしい。
ヨーロッパから世界の海へと漕ぎ出していった、
大航海時代の船員たちも、長期間の航海の中でビタミン不足に陥り、
脚気を患ってしまうという事例も多かったそうだから、
航海中の栄養補給というのは、洋の東西を問わず重要なものなのだろう。
海の上で新鮮な野菜というのは、
ちょっと状況にそぐわないような気もするが、
江戸時代の北前船は、日本海、瀬戸内海、太平洋の岸沿いを
あちこちの港に寄港しながら航海をしていたので、
その度ごとに、地元の野菜を船に積み込んでいれば、
船上で野菜を摂ることも、出来なくはなかっただろう。
ただ、「まつや」のホームページ上で紹介されている
「とり野菜みそ鍋」のレシピは、
肉、白菜、人参のみを使ったものになっているのだが、
このうち、肉と白菜が一般的に食べられるようになったのは
明治時代以降のことなので、初代「まつや」が「とり野菜みそ鍋」を
作っていたとしても、現在のものとは大きく異なるものだったに違いない。

さて、ここら辺で「とり野菜みそ」についての話は切り上げて、
「とり野菜みそらーめん」に話を戻そう。
ひと通りの情報を調べた後、早速、この「とり野菜みそらーめん」を
食べてみることにした。

カップのフタを半分ほど開けると、中にはかなり太目の乾燥麺と
乾燥野菜の小袋、そしてペースト状の「みそスープのもと」が入っていた。
フタには「とり野菜みそを50%使用」と書かれているので、
このみそスープの半分ほどは「とり野菜みそ」なのだろう。
乾燥麺の上に、乾燥野菜をのせて湯を注ぐ。
3分間、麺と野菜が戻るのを待ってからフタを外し、スープのもとを溶かす。
このスープのもとは、かなり柔らかく仕上がっているので、
少しかき混ぜるだけで、ダマも残らずにきれいに溶け切ってしまう。
途端に、味噌ラーメン特有のミソの香りが立ちこめる。
前の「ブラックチャンポンめん」は、
あくまでも「チャンポンめん」のバリエーションの1つとしての商品だったが、
この「とり野菜みそらーめん」は、「チャンポンめん」の名を冠していない。
従って「チャンポンめん」でお馴染みの、
乾燥えびと乾燥しいたけのかやくは入っていない。
あくまでも「チャンポンめん」とは関係のない、
オリジナル(?)の別ラーメンなのである。
乾燥野菜として入っているのは、白菜、人参、キャベツ、ねぎの4種類で、
これに加えて卵と豚肉が入っている。
「とり野菜みそ」鍋に比べると、ずいぶんと野菜の種類も多いし、
「とり野菜みそ」鍋には入っていなかった卵(乾燥状態だが)も入っている。
ただ、種類は多いものの、やはりどれも量は少なく、
「とり野菜みそ」鍋を彷彿とさせる、というようなことは無かった。 
ひとくち、レンゲでスープをすくって飲んでみると、
やはり普通の味噌ラーメンの様に感じられる。
実際、フタにも印刷してあったように、50%ほどの「とり野菜みそ」を
使っているのだろうが、普通の味噌ラーメンと比べて
明確な違いを見つけることは出来なかった。

さて、「とり野菜みそ」について調べていると、
そこに「とり野菜みそ」とコラボレーションした商品が紹介されていて、
そのコラボレーション相手に「イトメン」が入っていた。
だが、「とり野菜みそ(まつや)」と「イトメン」が
コラボレーションしたのは2013年12月ということになっており、
それを信じるのであれば、このコラボレーションからすでに
5年の歳月が過ぎていることになる。
つまりイトメンの「とり野菜みそらーめん」は、
5年前にコラボレーションで誕生して以降、ひとときだけの企画として
消え去ってしまうようなことも無く、定番商品として定着したわけだ。
長い間、イトメンのお膝元であるたつの市近辺で
「とり野菜みそらーめん」を見かけることがなかったのは、
ひょっとしたらその販売が、「とり野菜みそ」の地元である
石川県付近に限定されていたためかも知れない。
イトメンの「チャンポンめん」は、地元である播磨地域の他、
北陸地方を中心によく売れているとのことなので、
この商品の企画自体、「とり野菜みそ」を普段から食べている
北陸のイトメンファンへのサービスなのかも知れない。

さて、そんな「とり野菜みそらーめん」が積み上げられていた
某ドラッグストア。
別段、新商品でもなく、かつ、こちらのイトメンファンには
ウケがいまいちだと思われる「とり野菜みそらーめん」が
積み上げられていたということは、ドラッグストアの仕入れ担当が、
まだまだイトメンの商品の人気について、
正しく理解していない可能性が高い。

そうなれば当然、やがてこれは売れ残り、
かつての「とり野菜みそ」と同じく、投げ売りコーナーにて
投げ売りされる運命なのかも知れない。

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