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オクラ

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よく、スタミナをつけたいときには
ネバネバしたものを食べろと言われる。

動物類、植物類、海藻類、
どれも独特の粘りを持っている食品には、
それなりのスタミナ増進効果があるようだ。
ウナギのヌルヌル、卵のヌルヌル、
ジネンジョのネバネバ、ナメコのヌルヌル、
メカブのヌルヌル、納豆のネバネバ。
このヌルヌル、ネバネバが、
タンパク質の吸収を促進し、
スタミナ増進に役立つのである。

そんなヌル・ネバ野菜の中、夏の暑い盛りに旬を迎え、
夏バテ防止に役立ってくれるものがある。
それが今回のテーマ、オクラである。

ここの所、夏の暑さは天井知らずだ。
これは地球温暖化の影響だとも、
何百年、何千年周期の気温の変動だともいわれている。
我々一般人には、
その辺りの専門的なことはわからないが、
夏の気温が、昔よりも大幅に上がっていることだけは、
イヤというほど実感させられている。
当然、その暑さにやられ、食欲は落ちる。
食欲が落ちれば、体力も落ちる。
スタミナも落ちる。
そうなってくると、ますます食欲が落ち……、
という悪循環に陥ってしまうことになる。

これを打破する1番の方法は、
やはりスタミナのつくものを食べることだろう。
土用の丑の日に「うなぎ」を食べるのも、
夏の暑さに負けないスタミナを得る、というのが、
大きな目的になっている。
しかし、あまり知られていないことだが、
夏はウナギの旬ではない。
元々、ウナギ自体が脂っこいために、
ウナギの脂ののり方というのは、問題にされないが、
実は天然物のウナギの場合、
一番脂がのって美味しくなるのは、冬なのである。
つまり我々は、「土用の丑」という宣伝文句に騙されて、
時期外れのウナギを食べさせられていたのである。

では、暑さのキツい夏、
旬を迎えるヌルヌル、ネバネバとは何か?
メカブは春が旬だし、ジネンジョは晩秋が旬である。
ウナギは冬が旬だし、ナメコも秋が旬である。
納豆と卵は、季節を選ばないように思えるが、
実は両者ともに冬場が旬なのである。
納豆に関しては、原料となる大豆が新鮮なのは
収穫直後の冬だし、
卵は、冬の間に栄養価の高い有精卵を生む。
こうしてみると、ヌルヌルネバネバを
ウリにしている食品で、
夏が旬、といえるものは意外と少ないのである。

その夏場に旬を迎えるヌルヌル食品が、オクラだ。
暑い夏、さっと茹でたオクラを輪切りにし、
鰹節をたっぷりまぶし、醤油やポン酢をかけ回して食べる。
食べる前に冷蔵庫ででも冷やしておけば、
夏の晩ご飯の一品として、最高だ。
これ以外にも、天ぷら、煮物、和え物、酢の物など、
オクラを使った料理は、実にバラエティに溢れている。
オクラは夏の日本料理には欠かせない、
最高の食材なのである。

しかしそんなオクラが、実は外国産の野菜であることは
あまり知られていない。
しかも日本に入ってきたのは意外に遅く、
江戸時代の末期である。
しかもこのときは、日本に定着せず、
明治時代の初期に再び、再移入されている。
ここに来て、ようやくオクラが
日本で本格栽培されはじめるのである。
しかし問題はここからである。
このとき、日本に持ち込まれたオクラは
食用ではなく、観賞用にされていた。
つまりオクラは栽培されているものの、
これを食べるということをしなかったのである。

日本人が、一般的にオクラを食べ始めたのは
1970年代に入ってからである。
え?そんなに最近のことなの?と、
驚かれるかもしれないが、事実である。
ある程度、年齢のいった人なら、
そういや、俺等の若いころは
オクラとか無かったな~、なんて風に
思い当たるかもしれない。
全く自然に、様々な日本料理に使われているために、
日本古来の野菜のように思われているが、
オクラはれっきとした、外来の野菜なのである。

「オクラ」という名前にも、問題がある。
日本人にも発音しやすい単語であるため、
全く普通に日本語である、と思い込んでしまいがちだ。
実は「オクラ」というのは、英語である。
「オクラ」の日本語名は、「アメリカネリ」となる。
「ネリ」というのは、
「トロロアオイ」の粘液のことをさしており、
このトロロアオイは「オクラ」に似た花を咲かせる。
トロロアオイにも実はつくのだが、
こちらはオクラとは違って味も悪く、
食用には適していない。
中国が原産の植物で、その根から採れる粘液を、
和紙作りに使ったり、蒲鉾や蕎麦を作る際の
つなぎにしたりする。
「オクラ」の原産地はアフリカ大陸の北東部、
ナイル川からエチオピアにかけての一帯である。
エジプトでは、2000年も前から
オクラを栽培していたといわれている。
西アフリカでは、この野菜を「ンクラマ」と呼んでおり、
ここから「オクラ」という名前が生まれた。
それが18世紀にアメリカに伝わり、
アメリカから日本へと入ってきたのだ。
そのため、アメリカで呼ばれていた
「オクラ」という名前そのままで、
日本へと伝えられたのである。

オクラはβカロテンを豊富に含む、緑黄色野菜だ。
カロテン、ビタミンの他にも、
鉄やカリウムなどのミネラル分も含んでいる。
粘りの中には、タンパク質の吸収を助けるムチン、
脳の組織を活性化させるガラクタン、
整腸作用のある食物繊維・ペクチンなどを含んでいる。

ひとつ、注意しておかなければならないことがある。
当たり前のことであるが、ムチンのスタミナ増進効果は、
タンパク質の吸収を促進することによって発揮される。
ところが、それ自体が豊富なタンパク質を含んでいる
納豆やウナギ、卵などと違って、
オクラ自身には、ほとんどタンパク質が含まれていない。
つまり、オクラだけを食べても
スタミナ増進効果は得られない。
オクラを食べてスタミナ増進を図るには、
何か他に、タンパク質をふんだんに含んだものを
一緒に食べる必要がある。

さらに重要な注意点として、
ムチンは熱に弱いので、
火を通してはいけないということだ。
火を通すにしても、ネバネバがなくなるほど加熱せず、
さっとゆがく程度にしておこう。
オクラは生でも食べられるので、
ムチンの効果を期待したいときは、生で調理しよう。
さらに何か、タンパク質を取れる食品と合わせることを
忘れないように。

日本の野菜にも、外来のものは多いが、
オクラほど、新参者なのに、
あっという間に日本料理に馴染んだものもないだろう。
我々はまるで、はるか昔から
オクラを食べ続けてきたように思い込んでいる。
オクラがレタス、アスパラガス、セロリに比べて、
はるかに新参者であるなどと言っても、
信じてもらえないかもしれない。
それだけの短期間で、
これだけ日本料理に馴染んでしまったということは、
よほど日本人の嗜好にあっていたのだろう。

知らないうちにやってきて、
いつの間にか、ずっと昔からいたような顔で、そこにいる。
そこがオクラの恐ろしい所だ。

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