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「液体ミルク」騒動

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自分は時折、このブログの中でニュースを取り上げる。

取り上げるニュースについては、インターネットのニュースサイトを見て、
自分が興味を持ったものを、ということになるのだが、
前回取り上げた「液体ミルクが使われなかった」というニュースも、
同じく、そのニュースサイトで見つけたものであった。

前回の記事は、「液体ミルク」が使われなかったという点ではなく、
「液体ミルク」というアイテムそのものに注目したため、
「液体ミルクが使われなかった」というニュースについては
詳しく触れなかったのだが、この件でその後、動きがあった。

時系列順に書いていこう。

まず、「液体ミルクが使われなかった」という記事を最初に書いたのは、
ニュースサイトで確認した所、北海道新聞であった。
9月23日の10時過ぎに、北海道新聞の名前で配信されている。
このニュースを読み返してみると、
「液体ミルクは国内で使用例がない」という関係者の言葉や、
「とても住民に提供できるものではないと思った」という町の担当者の
言葉が掲載されており、全体的な論調としては、
『「液体ミルク」は安全で、使用例もすでにあるのに、
 北海道の職員の頭が古いせいで全く使われなかった』
という風なものであった。

同じニュースサイトで、翌24日8時過ぎに、
先の北海道新聞の記事を元にした記事を、
ある女性ジャーナリストが配信した。
彼女は「食品ロス問題専門家」を名乗っており、
時折、ニュースサイトに配信される記事を見ても、
食品ロス問題に絡んだ記事が多い。
今回の記事では、23日の北海道新聞の記事を引用し、
さらには8月28日の読売新聞における、西日本豪雨被災地へ
「液体ミルク」が届けられたという記事も併せて引用して、
災害時の「液体ミルク」使用促進のため、
もっと関係者に「液体ミルク」について知ってほしい、
という趣旨のことを書いていた。
今回の一件では、彼女の専門である
「食品ロス」そのものが起きたわけではないが、
使われるべき機会に使われなかったということは、
これも形を変えた「食品ロス」と見えたのかも知れない。
東日本大震災における彼女自身の経験も踏まえ、
災害現場で起きる需要と供給のズレにも触れて、
色々と考えさせられる記事になっていた。

しかし、さらに翌25日正午前、また別の所から
「被災地支援の『「液体ミルク」使われず』報道は誤解か
 北海道庁「(利用を控えるよう)連絡したつもりはない」
との記事が配信された。
北海道新聞の記事が配信された後、実際に道庁に確認をとった人がいたらしく、
「それによると報道はデマであることがわかった」と
SNSで発信し、情報が拡散されたらしい。
そのSNSの情報のウラを取るべく、実際に道庁に確認をとった所、
「ミルクの確保や調理が難しいときに使用すること」
「飲み残しは捨てること」といった注意事項とともに
被災地域に「液体ミルク」が届けられた、とのことであった。
また、東京都からの支援物資(液体ミルク)が届いた時点で
すでに水道が回復していたり、給水車が出動しており、
普通の「粉ミルク」を作ることの出来る環境が、
かなりの範囲で回復していたようである。
わずかながら、必要に応じ「液体ミルク」は使われていたらしい。
なるほど、そういう事情であれば、使える時は「粉ミルク」を使い、
「液体ミルク」は本当にヤバい時までとっておいて欲しいというのは、
行政側としても当然の指示だろう。
ただ事実として、書き添えた情報の中に
「国内での流通例がない」というものがあった。
あくまでも「使用例」ではなく「流通例」である。
たしかに「液体ミルク」は8月に認可されたばかりで、
現在ではまだ国内では、全く流通していない。
東京都が送ってくれた分も、災害用にと大手小売業者に依頼して
特別に買い付けてもらったものらしいので、
同じものを国内で購入するのは不可能である。

この記事が出た同日18時、先の女性ジャーナリストから
先の記事の修正記事が配信された。
彼女の記事を読んだ省庁の人間が、
「(「液体ミルク」を使わなかったという記事が)誤報ではないか?
 という情報が出ているので、北海道庁に取材した方が良いと思う」
と連絡を入れ、それを受けて、改めて北海道庁地域保健課に取材した所、
先の状況を改めて知らされた、ということであった。
さらに彼女は読売新聞の記事も引用していたのだが、
その部分についても「事実と異なる」という話が読者から寄せられ、
改めて倉敷保健所に話を聞いてみた所、
「東京から送ってもらった「液体ミルク」は7月25日に到着したが、
 その時点ではすでに水もあり、「粉ミルク」もあるので
 「液体ミルク」は使わなかった。
 避難所に子供はいなかったし、母親の母乳は出ていた」
という回答を得た。
つまり、使われなかったはずの北海道では、実際には使われており、
使われたはずの岡山では、実際には使われていなかったわけである。
彼女はこれら一連の流れを記事にして配信し、
その中で刻一刻と変化する被災地の需要と供給について触れている。
さらに自身の反省として、新聞記事を鵜呑みにしてしまったこと、
自治体が休みの日に記事を書き、配信してしまったこと、
一日待ってでも、自治体に確認の連絡を取るべきであったことをあげている。

これら一連の流れを見て、彼女を責める人はいないだろう。
記事の配信を急いで、情報のウラ取りを怠ったという点はあるが、
指摘を受けた後、ただちに取材を行ない、一連の流れをありのまま、
恐らくは何も隠さずに修正記事に載せている。
ミスはミスと認めて訂正し、後の反省材料としている。

問題は「新聞記事は鵜呑みにしてはいけない」という一言だ。
もちろん、そう書いた彼女が悪いのではない。
悪いのは「新聞記事は鵜呑みにしてはいけない」という事実である。
北海道で地震が起きたのは9月6日、
北海道新聞に記事が載ったのが9月23日。
西日本豪雨が発生したのは6月末から7月の頭まで、
読売新聞に記事が載ったのが8月28日。
両者とも、災害と新聞記事掲載までの間に充分すぎるほどの時間がある。
彼らはこれだけの時間があったのに、自分の記事として書くネタについて、
行政に確認をとらなかったのだろうか?
だとしたら、その取材姿勢は適当すぎるといわざるを得ない。

これらの記事は、それぞれ災害現場における
「液体ミルク」の扱いがテーマだ。
別段、緊急性を擁する記事ではないし、
むしろしっかりと丁寧な取材をして、まだまだ認知度の低い
「液体ミルク」というものについて
読者への周知を広めていかねばならない大事な記事である。
そんな記事が、キッチリとした行政へのウラ取りも行なわれないまま
提供されているのだとしたら、これは大変残念なことだ。

奇しくも、災害時の「液体ミルク」への取材で
取材力不足が露呈した2つの新聞社。
昨今、「若者の新聞離れ」なんてことが囁かれているが、
この辺りをどうにかしないことには、歯止めをかけるのも難しそうだ。

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