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液体ミルク

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先日、インターネットのニュースサイトを見ていると、
こんな見出しが目に入った。

『被災地支援の液体ミルク使われず
 東京都が千本提供 道、各町に「利用控えて」』

内容はこうだ。
今月、北海道で発生した震度7の地震の後、
北海道から要請を受けて、東京都が支援物資として送った
「液体ミルク」が使われていなかったという。
北海道が各町に対し「国内で使われた事例がない」として
使わないように指示したという。

何故、わざわざ使いもしないものを要請したのか?と疑問は残るが、
自分がこのニュースを見て、一番最初に持った疑問は
「液体ミルク」って、何だ?というものであった。

「粉ミルク」というのがあり、こちらはミルクを粉末状に加工したもので、
保存性を高めたものになる。
液体状のミルクを粉末状にして、お湯で溶くことによって
元のミルクの状態に戻すことが出来る。
(といっても、赤ちゃんが飲んでも大丈夫なように加工はしてあるが……)
自分には子供がいないので、「粉ミルク」を使ったことはないのだが、
甥っ子が赤ん坊のころには、妹がこれを作っていたのを覚えている。
まあ、粉末状のミルクということになるのであれば、
自分がインスタントコーヒーを飲むときに入れるスキムミルクなども
これに含めてもいいかも知れない。
(成分的な加工はされているが……)

では液体状のミルク、ということになると、これはどういうことになるか?
そう、要は普通のミルクである。
スーパーの牛乳売り場で、1ℓパック100〜300円ほどで
販売されているあれだ。
少なくとも、我々の多くは「液体ミルク」という単語を聞くと、
あのスーパーに並んでいるパック入りの牛乳を
思い浮かべるのではないだろうか?

もちろん、このニュースに書かれている「液体ミルク」というのは、
いわゆる普通の牛乳のことではない。
この「液体ミルク」は、赤ちゃん用のミルクを液体状のまま
常温で一定期間保存できるようにしたもので、
「粉ミルク」のように、わざわざお湯で溶かして、冷ます必要もない。
もともと常温なのだから、そのまま赤ちゃんに与えることが出来る。
例えるのならば、いわゆる普通のカルピス(濃縮してあるもの)に対する
カルピスウォーターの様なものといえばいいだろうか?
いちいち分量を量り、水を加えて混ぜなければならないカルピスに対し、
ペットボトルのふたを開けるだけで、
すぐに飲むことが出来るカルピスウォーター。
発売当初は、カルピスを水で割ることを面倒がる人なんて……と、
わりとその存在に否定的な人も多かったのだが、
実際に販売が開始されてみると、これが驚くほどの売れ行きを示した。
なんのことはない。
皆、カルピスを水で割るようなことさえ面倒がっていたわけで、
水で割って飲める状態にしてあるカルピスウォーターは、
これを飲む人の手間を大いに減らしてくれたわけである。
この「液体ミルク」という商品にしても、
それに近い便利さを感じることが出来るのだろう。

もっとも、この「液体ミルク」の製造・販売が認可されたのは、
今年の8月になってからである。
国内の各メーカーは、現在、規定をクリアした商品の開発に
取り組み始めたばかりで、実際に「液体ミルク」を商品化した
国内メーカーはまだない。
ただ海外などでは、ずいぶんと早くから「液体ミルク」が商品化され
販売されていたようで、海外などでこれらの商品を
使用したことのある人からは、その便利さを喜ぶ声も上がっていた。
そのようなことから、日本国内においても
「液体ミルク」の製造販売を認可してほしいという声が上がり、
今年、ようやくその声が実現することになったわけだ。

ここで「?」となった人もいるだろう。
今年の8月まで、「液体ミルク」が認可されていなかったとしたら、
今回、東京から北海道に送られた「液体ミルク」は
どこから持ってきたものなのか?
実はこれは、これは東京都が支援物資として送りたいと考え、
ある大手小売業者に頼んでフィンランドから輸入したものだったのだ。
こうして輸入された「液体ミルク」は、
今年7月の西日本豪雨で岡山県と愛媛県に支援物資として送られていた。
先にあったように「国内では使用例がない」というのは、
事実ではなかったのである。
西日本豪雨の現場では、水道・ガス・電気といったインフラが
断たれた状態にあり、そういった中で、
水も必要なく、それを沸かす必要もなく、
ただそのまま封を切って与えるだけの「液体ミルク」は、
かなり喜ばれたようである。

確かによく考えてみれば、この「液体ミルク」という商品は、
水もガスも電気もないという状況にあっては、
とてつもなく、心強い商品である。
避難の際、たとえ粉ミルクを持って逃げることが出来たとしても、
それを作るための水と、水を沸かすためのガス・電気がなければ、
ミルクを作ることは出来ない。
避難所などに避難した場合、水くらいは備蓄があるかも知れないが、
お湯を沸かすための設備などが、備わっているとは限らない。
また、赤ん坊の場合、かなり頻繁にミルクをあげないといけない場合もあり、
お湯を沸かすための水と燃料を、結構、消費しなければならないが、
水が要らず、温める必要も冷ます必要もない「液体ミルク」であれば、
避難所における貴重な水、燃料等を
かなり節約することが出来るのではないだろうか?
さらに大勢の避難民が体育館などに避難している状況では、
深夜など、フタを開けるだけで飲ませることの出来る「液体ミルク」は、
素早く、静かに対応が出来るという点でも、
かなりありがたいのではないだろうか?

もちろん、それは災害時のみに限らない。
平常時でも、赤ちゃんを連れて外出する場合などは、
外出先でミルクを作り、これを飲ませないといけないような場合もあるが、
そんな場合、ミルクをいれるために様々な用具やお湯を持ち運ぶのは、
荷物が増えるし、手間もかかる。
その点、この「液体ミルク」であれば、
これを何本か用意しておくだけですむ。
便利なものである。
赤ちゃんを人に預ける時も、いちいち面倒なミルクの作り方を
説明せずにすむし、預けられる側にしても飲ませるだけでいい
「液体ミルク」なら、気を使うことも少なくてすむ。
いや、それどころか、家にいるときであっても、
夜中など、毎回、起きてミルクを作るのは疲れるものだ。
これを夜中の分だけでも「液体ミルク」に置き換えれば、
負担はかなり軽減されるのではないだろうか。

全く、画期的な商品の様に思える「液体ミルク」だが、
いくつかの課題も指摘されている。
1つは賞味期限が短いこと。
「粉ミルク」であれば1年半は保つが、
「液体ミルク」ではこれが6ヶ月〜1年と短い。
もう1つは、一度開封すると使い切らないといけない点。
これは開封したものをおいておくと、雑菌が繁殖する恐れがあるからだ。
ただ、公平な目で見た場合、これらはそれほど大きな問題ではない。
なるほど、災害時のために備蓄しておくのであれば、
短い賞味期限は不利ということになるが、
普通に家庭で使用する分には、6ヶ月も賞味期限があれば不便はない。
一度開封すると、使い切らないと
雑菌が繁殖する可能性があるという点についても、
それは「液体ミルク」に限らず、ペットボトル飲料など
ほぼ全般にいえることである。
どちらにしても、はっきりデメリットといえるほどのものではない。
賞味期限にしても、雑菌の繁殖の問題にしても、
これからのメーカーの努力によって、大幅に改善される可能性は高い。

そうなってくると、これはカルピスウォーターの再現になるかも知れない。
最初は普通の「粉ミルク」では厳しい場面で、と言うことから始まり、
やがてその便利さから、一気に「粉ミルク」の牙城を崩して、
「ミルク」の主流に収まってしまうのではないだろうか?
少なくとも、ここ5年から10年の間には。

そんな流れの中で、「粉ミルク」は生き残ることが出来るのだろうか?

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