先日、コメを買いにスーパーへ出かけていった所、
いつもの見慣れた銘柄に混じって、変わったコメが置いてあった。
新商品なのか、手書きのPOPが貼りつけられており、
それによると、この変わったコメは「カリフォルニア米」らしい。
「カリフォルニア米」というと、自分などは
あのグルメマンガの草分け「美味しんぼ」を思い出す。
たしかコミックス36巻の「日米コメ戦争」というエピソードの中で
「カリフォルニア米」が取り上げられており、
コメの輸入自由化を巡っての、ストーリーとなっていた。
手元にある「美味しんぼ」のコミックスを見てみると、
1992年の11月に初版第1刷発行となっているので、
実際にこの「日米コメ戦争」がビッグコミックスピリッツ誌上に
掲載されていたのも、そのころのことだろう。
ストーリーの中では、アメリカ政府が日本政府に対し、
強硬な態度でコメの輸入自由化を求めてきており、
その是非や、安全性を巡ってのストーリーが展開されていた。
このとき、アメリカ政府が日本に売り込もうとしていたのが、
カリフォルニアで作られている「カリフォルニア米」であった。
作中において「カリフォルニア米」を食べてみるシーンがあるのだが、
そこでの味の評価は決して悪くなく、美味しいという評価が下されていた。
(主人公の山岡は、「ちゃんとした炊き方をすれば、
あえてマズいとは言いません」という、非常に持って回った言い方で
「カリフォルニア米」の味をけなしていたが……)
結局、作中においては、味は日本の特級米に比べれば落ちるものの
それほど悪くなく、むしろ輸出の際に振りかけられる
ポストハーベスト農薬の方を問題視している様であった。
(しかも農薬の問題については、アメリカ産のコメだけではなく
日本産のコメに関してもこきおろしていた)
だが実際には、作中に出てきた「カリフォルニア米」を
正式な機関での検査にかけて、残留農薬の度合いを調べることも無く、
(作中では、アメリカでポストハーベスト農薬の実態を調べた
日本の消費者団体が危険を指摘した、とだけある)
「カリフォルニア米」がどれくらい危険なのか?いや、それ以前に
本当に危険なのかを明らかにしないまま、ストーリーは終わってしまった。
作中では、本当に「カリフォルニア米」が危険かどうか、
全く調べもしていないのに、かなり危険なシロモノであると
受け取れる様な表現を使っていたため、
マンガでこの話に触れた読者たちは、「カリフォルニア米」=超危険、
コメ=危険というイメージを持ったに違いない。
このときのコメ輸入自由化がどういう結末になったのかは知らないが、
それ以降も、日本の市場に「カリフォルニア米」が
大々的に出回ることは無かったので、輸入自由化自体がポシャったか、
あるいは外食産業などで使用される形になったかだと思う。
その「カリフォルニア米」が、20年以上の時を経て、
今、自分の目の前に陳列されているわけである。
(実はこれ以前にも、別のスーパーで「カリフォルニア米」が
陳列されていたことがあった。
そのときは、家の米櫃が一杯だったため購入しなかったのだが、
家の米櫃が空になることには、すでにそのスーパーでは
「カリフォルニア米」の取り扱いが無くなってしまっていた)
値段を見てみると、国産のもっとも安いコメよりも
さらに安価である。
国産のコメと同じように、厚手のビニール袋に入っており、
中に入っているコメを見てみると、いつも買っているコメよりも
やや粒が細長い。
袋にはカタカナで「カルローズ」と書かれており、
説明書きを読むと、これは「カリフォルニアのバラ」という意味らしい。
国産米に代表される短粒種と、タイ米に代表される長粒種の間となる
中粒種というタイプのコメであるようだ。
「軽い食感と、アルデンテともいえる歯ごたえが楽しめる」
とも書いてあるのだが、軽い食感はともかく、
アルデンテの歯ごたえというのは、ちょっとイメージできない。
料理マンガなどでは、スパゲッティなどで
中心部に髪の毛1本分の芯を残した湯で上げ方、などと紹介されているが、
やはりこのコメも、炊き上げると中心部にわずかな芯が残るのだろうか?
興味をそそられるのと、値段が安いという条件が合わさって、
迷わずこのカリフォルニア米「カルローズ」を購入した。
一袋あたり5kg入りなので、一人暮らしの自分だと
おおよそ20日分ほどのコメということになる。
正直な話、外国産米を買うのも食べるのも初めてのことなので、
これが果たしてどのような味のコメなのか、想像もつかない。
気分的には、好奇心80%、不安20%というところか。
買って帰って、早速、その日のうちに炊いて、これを食べてみた。
結論から言ってしまえば、これはもう国産米と
全く変わらないといってもいいだろう。
正直、パサパサした炊きあがりになるのかな?とか、
変わった匂いがするのではないかな?という気持ちもあったのだが、
いざ食べてみると、これまで食べていた国産米と変わらない。
パサつく様なことも無く、おにぎりだって普通に作れるだろう。
匂いについても不快なものは無く、国産米と比べても違和感が無い。
(といっても、自分の場合、押し麦と一緒に炊いて麦飯にしているので
コメの匂いよりは麦の匂いの方が強く出ていて、
普段の麦飯と匂いが変わらなかったのかもしれない)
まあ、自分自身、普段から安価な国産米しか食べていないので、
それも大きな理由の1つかもしれない。
インターネットで「カルローズ」について調べてみると、
主な用途として、サラダ、リゾット、スープ、ピラフ、ドリア、
チャーハン、カレー、スープカレー、パエリア、ナシゴレンと、
洋風、中華風のメニューが並んでいたが、恐らくは麦飯や
炊き込みご飯、雑炊やちらし寿司などに用いても、違和感は無いだろう。
ひょっとすると、普通にご飯として食べてみても、
言われなければ「カリフォルニア米」と気付かぬ人もいるのではないか?
このレベルのコメが安く販売されるということになると、
なるほど、ブランド米などを作っていない普通のコメ農家にとっては
大きな脅威になってくるのは間違いない。
先に書いた「美味しんぼ」は、「カリフォルニア米」に厳しい。
一番美味しい「カリフォルニア米」の味は、政府標準米よりは上だが、
コシヒカリなどの銘柄米には遠く及ばない。
その程度の味のコメが、安いからといって
そんなに売れるとは思えない、と言ってのけている。
この作者はアホではないか?
政府標準米よりもうまいコメが、安く買えるというのであれば、
これはもうバカ売れするに決まっているではないか。
そもそも、コメを輸入自由化にしても売れず、
国産米がバンバン売れるというのなら、コメ農家たちが輸入自由化に
反対するわけが無い。
コメ農家が頑強に反対しているということ自体が、
商品として日本のコメが、外国のコメに勝てないという
何よりの証拠である。
スーパーのコメ売り場に姿を現し始めた「カリフォルニア米」。
正に日本のコメ市場にとっての「黒船」のようである。