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フキ

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先日、市内の田舎道を自転車で走っていて、
ふと道端の法面に目をやってみると、
そこに大きな「フキノトウ」が生えていた。

この「フキノトウ」は、「フキ」の花茎である。
これが出てくる所には、その後に「フキ」が生えてくる。
かつて婆さんが畑を作っていたころ、ちょうどその片隅の
微妙に陽当たりの良くない辺りに群生しており、
これが生えてくると婆さんがこれを刈り取り、
母親がこれを調理して、晩御飯の一品に加わっていた。
母親の作る「フキ」のメニューは一環して煮物だけで、
これは一口大に切った「フキ」を、
醤油味で炊き込んだ単純なものであった。
柔らかく煮込まれた「フキ」は、その中にたっぷりの煮汁を含んでいて、
これを噛むと、その煮汁の味が口の中一杯に広がった。
醤油味の煮汁と、「フキ」独特のほのかな苦みがご飯によく合って、
地味ながらも好きなオカズの1つであった。

今、思い返してみると、自分が子供だったあの当時、
「フキ」は、わりとどこにでも生えていた。
あくまでも個人的なイメージになるが、微妙に陽当たりの悪い場所だとか
微妙に湿気の多い様な場所に群生しており、
当時の自分の認識からしてみると、「フキ」は山菜というよりは、
そこら辺に生えている雑草という感じであった。
もちろん、田舎のことなので、我が家以外にも
これを採って食べている家も多かったと思うが、
それにも関わらず、「フキ」はいつでも
そこら中に生えていた記憶があるので、
当時の「フキ」は、相当な量が生えていたのだろう。
しかし、それから数十年。
水田や畑しかなかった我が家の周りは、住宅街に変化を遂げて
真新しい家が建ち並ぶようになり、
今では家の周りで「フキ」を目にすることも、全く無くなってしまった。

「フキ」は、キク科フキ属に属する多年草である。
日本原産の植物で、北海道、本州、四国、九州、沖縄と、
日本全体に分布しており、国外では樺太、朝鮮半島、中国などでも
自生しているのが確認されている。
ただ、これは我々が普段よく目にしている「フキ」の話で、
この近縁種に関しては、ユーラシア大陸極東部に限らず、
広く、大陸全体に見られるようである。
山では沢や斜面、河川の中洲や川岸、林の際などに見られ、
郊外でも河川の土手や、用水路の周辺などに見られる。
水が豊富で、風があまり強くない土地を好むようで、
この辺りは、自分が子供のころに抱いていたイメージと合致している。

茎は地上に伸びてくることはなく、地下で根塊となって横に伸びていく。
我々が目にする「フキ」は、茎の上に丸い葉の広がったイメージがあるが、
パーツ的にいえば、あれらは全て「葉」であり、
我々が茎の様に認識している部分は、葉柄ということになる。
まれに地下茎が地表に表出することがあり、
そうなると地下茎は光合成を行なって、緑色に変色することがある。
このため、これをワサビと間違って誤食する例があるのだが、
「フキ」の地下茎は毒を持っているため、注意が必要である。

春先、葉が出てくる前に生えてくるのが、
冒頭部分にも書いた「フキノトウ」である。
これは漢字で書くと「蕗の薹」となる。
「薹(とう)」というのは、いまいち聞き覚えのない言葉であるが、
これは「花軸」や「花茎」のことを指す言葉らしい。
(よく野菜などで「とうがたつ」といういわれ方をするが、
 これを漢字で書くと「薹が立つ」となる。
 野菜などの花茎が伸びて固くなり、
 食用に適した時期を過ぎるという意味である)
花が咲くときの草丈は5〜10㎝程度だが、
その後受粉して、タンポポの様な綿毛のついた種子を飛ばす。
このときの草丈は80㎝近くになるものもあるという。
ちなみに「フキノトウ」の食用に適している時期は
花が咲く前の蕾の状態のものであるが、一部の調理方法では
花が開いた状態の「フキノトウ」を、刻んで調理することもある。

「フキノトウ」が開花・受粉し、その種子を飛ばした後、
我々の良く知る、いわゆる「フキ」が生えてくる。
「フキ」という名前の語源には諸説ある。
それらを挙げてみると、

・冬に黄色の花が咲くことから「冬黄(ふゆき)」
 それが変じて「フキ」になった、とする説
・「フキ」は葉が大きく、傘などに用いたことから「葺く」とされ、
 これが変じて「フキ」になった、とする説
・「ハヒログキ(葉広茎)」、「ヒロハグキ(広葉茎)」、
 「ハオホキ(葉大草)」からきているとする説
・「フキ」の葉は大きく、少しの風でも揺れることから
 「ハフキ(葉吹き)」「フフキ(風吹き)」からきているという説

などとなる。
どれもいちいちもっともらしく、一様に「葉」が大きいことを
その理由の中に取り込んでいるが、さすがに普通の「フキ」では
傘の代わりに用いることは難しいかもしれない。
(一応、関東地方以北には2mほどにも伸びる
 「秋田蕗」という品種があり、これならば傘の代わりになる。
 この語源が正しいとすると、「フキ」はもともと「秋田蕗」のことを
 指していたのかもしれない)

1つ、これらとは一線を画するひどい説がある。
それが

・用便の後、お尻を拭く紙の代わりに「フキ」の葉を使用したことから
 「拭き」という名前になったという説

である。
これはあまりにひどい説で、聞いた途端に食欲の失せる話である。
キッチリとこの説を否定しておきたい所であるが、
非常に残念なことに、この説を否定し切るだけの材料はない。

現在、「フキ」はスーパーマーケットの野菜売り場などでも
販売されている。
これは葉柄の部分だけを切りそろえたもので、
もっとも市場に流通している「愛知早生」という品種だと、
その葉柄の長さは80㎝にもなる。
さすがにキッチリと栽培管理されているだけあって、
畑の隅に勝手に生えてきていたものとは比べ物にならないほど
見事なサイズの「フキ」に仕上がっている。

ただ、個人的な郷愁からいえば、「フキ」はやはり、
そこら辺に勝手に生えてきているものの方が、
「それらしい」気がしてしまう。

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