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蝋梅

更新日:

図書館から借りてきた小説を読んでいると、
事件の真犯人が「花」を使って、主人公に自分の存在を
アピールする(?)という場面が出てきた。

以前、このブログでも取り上げたことのある
料理人・季蔵捕物帳控」というシリーズでの話で、
このシリーズについては、現在、出版されている
30作品以上の全てを読んでいるので、いい加減に作者の作風も分かり、
その真犯人が誰か?という点については容易に想像がついた。
(自分の予想通り、真犯人が誰か?という点ではあたっていたのだが、
 その真犯人の正体と、主人公の関係については
 今までに語られていなかった部分がほとんどだったため、
 サッパリ分からなかったのだが……)

そう、その真犯人が自分をアピールする際に使った花というのが、
今回のタイトルにもなっている「蝋梅」である。

作中で「蝋梅」という名前が出てきたとき、
自分の頭の中に、ツヤのある黄色い梅花状の花が浮かんできた。
これは実際の「蝋梅」そのものの姿であるといっていい。
だが、一通り小説を読み終わり、改めて「蝋梅」について調べ、
自分の頭の中のイメージと、現実の「蝋梅」が一致したのを確認した後、
自分の頭の中に、何ともいえない違和感が生じた。
自分は一体、どこで「蝋梅」の知識を得たのか?という点である。

自分の人生において「蝋梅」という花に興味を持ち、
これについて調べてみたというのは、今回が初めてのことである。
「蝋梅」の姿形については、これを庭先などに植えている家も多いので、
今までに何度も目にする機会はあったはずだし、
「蝋梅」という言葉自体にしても、
どこでその名前を聞いたのかは思い出せないが、
今回の小説の中で初めて知った言葉というワケではない。
だが、自分は今まで、あのツヤのある黄色い花を「蝋梅」だと
教えられたり、そう認識する様な出来事はなかったはずである。

そんなワケで、この小説を読み終えた後、
自分の中には、なんとも例え様のない
ミョーな違和感が生じてしまったのである。

「蝋梅」は、クスノキ目ロウバイ科ロウバイ属に属する
中国原産の落葉樹である。
花の形が似ていたり、「」という名前がついていることから
「梅」の仲間だと思われがちだが、
「梅」はバラ目バラ科サクラ属の樹木になるため、
系統的には全く違うといってもいいだろう。
「梅」が2月から4月にかけて花を咲かせるのに対し、
「蝋梅」は12月から2月にかけて花を咲かせる。
つまり2月ごろには、咲き終わりの「蝋梅」と
咲き始めの「梅」が同時に見られるということになる。
「梅」と同じように、香りの高い花が咲くのだが、
花の色に関しては一様に黄色(花の中心部が暗紫色になるものもある)で、
その花びらには「蝋」のような鈍いつやがあり、
「蝋梅(ろうばい)」という名前は、これに由来しているとされる。
(他の説では、陰暦の12月を「臘月(ろうげつ)」と呼び、
 この「臘月」に咲き始める梅だから「臘梅」になったとされる)
花や蕾からは「蝋梅油(ろうばいゆ)」がとれ、
これは薬として使用される。

「梅」などは、まず、花が咲いた後に葉が生え始めるが、
「蝋梅」の場合は、葉が散った後に花が咲く。
そういう意味では、全くの正反対の性質を持っている。
どちらも、花の後に実をつけるが、丸くふっくらとした「梅」の実と違い、
「蝋梅」の実は、細長い独特の形をしており、
この果実の中にある種子は、有毒なアルカロイドを含んでいる。
(「梅」の方も、青梅そのままの状態だと青酸が含まれており、
 これを食べた場合には、最悪、死亡するケースもある)

中国では、冬の寒い時期に花をつける貴重な存在であるため、
同じように寒い時期に花をつける「梅」、「水仙」、「椿」とともに
「雪中の四花」として、尊ばれている。
日本に持ち込まれたのは、江戸時代の初期とも後期ともいわれる。
どちらが正しいのかは、ハッキリとは分からないが
江戸時代に日本に持ち込まれたことは、間違いなさそうだ。
日本でも、他の草木に先駆けて、香りの良い花を咲かせることから
生け花や茶花、庭木として利用されており、
和風、洋風のいずれにも用いることが出来ることから、
重宝されているようである。

品種としてはかなり丈夫な部類に入り、
日陰に植え付けても、わりと問題なく育つ。
植え付けは、枝などを地面に挿し木するのが一般的だが、
先述した果実から種子を採取し、これを植え付けてもよく育つ。
寒さに強く、害虫や病気の心配もほとんど要らないのだが、
湿気の多い場所は苦手なので、植え付けには
水はけの良い場所が適している。
種子からこれを育てた場合、花がつくまでには5年ほどかかる。

先に「蝋梅」は、本来の「梅」とは基本的に別種であると書いたが、
実は我がたつの市の「世界の梅公園」にも、この「蝋梅」は植えられている。
園内には国内外の品種、併せて350種、
1350本の梅が植えられているが、このうちの50本が「蝋梅」である。
毎年、2月11日から3月25日までが有料となっており、
それ以外の期間は無料で開放されている。
先述の通り、「蝋梅」は12月ころから咲き始めるので、
これだけを目的で梅公園に行くのであれば、
12月〜1月くらいの無料期間を狙って見に行くことも出来る。

まだ人の少ない冬の梅公園で、咲き誇る「蝋梅」を楽しむというのも
結構、オツなものかもしれない。

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