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巨人の星〜その4

更新日:

前回、自らの球質の軽さに苦しんだ飛雄馬が、
苦心の末に生み出した「大リーグボール1号」とその活躍、
そしてその最後までを書いた。
今回は、「大リーグボール1号」敗北の挫折から、
物語の最後までを一気に書いていく。

一徹・オズマコンビによって
完璧に敗れ去った「大リーグボール1号」。
球質の軽さという、致命的な弱点を補ってくれていた
「大リーグボール1号」の敗北は、
同時に飛雄馬のプロ生命の終わりを意味する。
だが、ライバルたちによって
「大リーグボール2号」を作り出すよう
叱咤激励された飛雄馬は、毬をつく少女の姿からヒントを得て、
「大リーグボール2号」の着想を得る。

ここで、飛雄馬の極端な性格の一端が現れる。
(これまでにも散々現れていたが……)
彼の「大リーグボール1号」は、
公式的には、まだたった1人に敗れただけである。
それも、一徹の「大リーグボール打倒ギプス」によって鍛えられた
オズマの「見えないスイング」がなければ、
まともな攻略は出来なかったのである。
ここは、どう考えても「大リーグボール1号」に
さらなる改良を加えるべき場面である。
だが、飛雄馬はそうしようとはせず、
あっさりと「大リーグボール1号」を放棄してしまうのだ。
なんとも、もったいない話である。

「大リーグボール2号」の着想を得た飛雄馬は、
監督に逆らい2軍に落とされてまでも、その開発にのめり込む。
やがて完成したのが、
あの有名な消える魔球「大リーグボール2号」である。
この「大リーグボール2号」の威力は凄まじく、
1号にとどめを刺したオズマをはじめ、左門、花形を
次々と退けて、巨人優勝の大きな助けとなる。
日本シリーズ、ワールドシリーズと勝利を収めた巨人だったが、
ライバルたちは着々と、消える魔球の研究を進めていた。
そんな中、中日のオズマがカージナルスに戻ることになり、
彼の代わりに一徹は、巨人から伴宙太をトレードする。

ついに魔球の代名詞、
消える魔球こと「大リーグボール2号」が登場した。
ライバルたちは「消える魔球」の謎の解明に取りかかるが、
実は、これは読者たちもそうである。
この時点では、消える魔球のメカニズムは全く明かされておらず、
読者たちも「何故、ボールが消えるのか?」という点について
全くの謎だったのである。
ライバルたちによって、1枚、また1枚と
秘密のベールがはがされていくのは、読者たちにとっても、
「消える魔球」の謎に迫っていくことでもあった。
消える魔球は「風」に弱いこと。
消える魔球は「水」に弱いこと。
消える魔球は、魔送球を縦に変化させたものであること。
しかし、魔送球を縦に変化させただけでは、
ボールは完全に消えないこと。
これらの情報が明らかになっていったが、
最後の秘密はまだ明かされていなかった。

親友であった伴宙太をトレードによって奪われ、
孤立無援になった飛雄馬は、
迫る「大リーグボール2号」の敗北におびえる。
花形、一徹と、「消える魔球」の謎を解き明かし、
左門も自らのバットスイングを持って、
「消える魔球」最後の秘密を、目にする。
完全に「大リーグボール2号」の秘密は解明され、
敗北を待つだけになった飛雄馬。
まず、中日の一徹・伴コンビとの対決を迎えるが、
一徹の指示ミスによって、辛くも飛雄馬はこれに勝利する。
続く阪神・花形満は、幾重にも用意した
「大リーグボール2号」打倒策を用いて、ついにこれを打ち破る。
「大リーグボール2号」の完全な敗北を喫した飛雄馬は、
自らマウンド降り、夜の雑踏の中へと消えていくのであった。

ついに「消える魔球」の秘密が、完全に明かされる。
ライバルたちが予想していた通り、
「消える魔球」は、魔送球を縦に変化させたものであった。
ホームベース前で大きく沈んだ球は、土埃を巻き上げる。
だが、これだけではボールは消えない。
完全にボールを消すためには、投球の際、
高く上げた足先のスパイクから落ちる土埃を、
ボールの縫い目に巻き込ませる必要があったのだ。
縫い目に土埃を巻き込んだ球は、ホームベース前で沈み込む前に
その土埃を吐き出し、ボールを包み込む。
結果として、ボール自身のまとう土埃が保護色となり、
地面から巻き上げる土埃の中で、
完全に見えなくなっていたのである。
やがて魔送球の軌跡によって、ボールは再び浮き上がる。
そのときには、すでにボールのまとう土埃も無くなり、
巻き上げた土埃のからも飛び出すことによって、
ボールがいきなり出現したように錯覚するのである。
……。
ちょっと聞いただけでは、なるほど、と思ってしまうが、
もちろん一度沈んだボールが浮かび上がるなんてことは
あり得ないし、ホームベース前でそこまで激しく軌道変化すれば、
たとえボールが見えたままであったとしても、
誰も打つことなど出来ないだろう。
カーブやフォークにしたって、
もっとずっと早くから変化しているのだ。
それでも上手くタイミングを合わせることが出来ず、
空振りしてしまうのだから、
ホームベース前でそれだけ大きく変化されたら、
どんなバッターでも、ミートすることは出来ないだろう。

夜の町を彷徨う飛雄馬。
彼はそこで左門とともにヤクザに絡まれてしまう。
不良少女・京子を巡る事件に巻き込まれ、
自ら再起を決意した飛雄馬は、
ふとしたことから「大リーグボール3号」のヒントをつかむ。
初めてのオールスターゲームにおいて突如、
アンダースローに転向した飛雄馬は、
パ・リーグの強打者3人を三振に仕留める。
打てそうなのに打てない、
謎のアンダースロー「大リーグボール3号」である。
飛雄馬は「大リーグボール3号」で、
かつてないほどの連勝を築き上げていく。

ここに来てのヤクザである。
まさか「巨人の星」の中で、飛雄馬とヤクザの
イザコザを見ることになるとは思わなかったので、
初めて読んだ時は、かなり驚いたものだ。
さらに自他ともに認める真面目人間・左門豊作の
都会の女豹・京子への恋。
ライバルとしては、常に花形満の影に隠れてしまっていた
左門だったが、ここに来ていきなりスポットライトがあたる。
そんな私生活のイザコザを乗り越えて開眼した
「大リーグボール3号」。
これまた、その原理については何も語られない、
謎に満ちた魔球である。
この「大リーグボール3号」の威力は凄まじく、
飛雄馬はかつてないほどの栄光を浴びることになる。
だが、それと同時にどこか沈んだ表情を見せる飛雄馬。
一体、彼の身に何が起こっているのか?
読者を不安にさせながら物語は、終末に向けて進んでいく。

「大リーグボール3号」は、まさに無敵であった。
左門、花形に完勝した飛雄馬だったが、その表情は暗い。
そしてついに一徹・伴コンビが、
「大リーグボール3号」に挑むも、全く太刀打ち出来ず、
完全に敗北してしまう。
伴は、ついに飛雄馬が父・一徹を越えつつあることを悟る。
そして迎えた、巨人ー中日の最終戦。
一徹は最後の秘策を考え出し、伴と飛雄馬を対決させる。
完全試合のかかった最終打席、
ラストボールを投げた飛雄馬の腕は破壊されたが、
これを打った伴も倒れ、混乱の中、試合は終了する。
一徹は飛雄馬に自信の負けと、親子の闘争の終了を宣言するが、
その日を最後に飛雄馬は失踪してしまう。
後日、都内の教会で行なわれた
左門と京子の結婚式を見届けた後、
飛雄馬は夜の町に消えていくのであった。

これにて物語は終わりである。
最終回、飛雄馬から左門への手紙の中で、
「大リーグボール3号」の謎が明かされるのだが、
それは下手投げで特殊な投げ方をすることにより、
ボールを漂わせるものだった。
これにプロのバッターの鋭いスイングが来ると、
その巻き起こす風により、ボールがふわりと逃げ、
空振りしてしまう。
……。
「大リーグボール」も3号まで来ると、
大分苦しくなってくるらしい。
これまでの1号、2号と比べても、荒唐無稽さが上がっている。
結局、この「大リーグボール3号」による、
不自然な腕の酷使が仇となり、飛雄馬の左腕は破壊されてしまう。
そうなると分かっていて、使い続けてきたのだから、
これを悲劇と言うのは釈然としない所もあるが、
結果、飛雄馬はプロ野球引退を余儀なくされる。

全編を通して気になるのは、
主人公・飛雄馬の極端な価値観である。
ホームランを打たれてしまえば、どん底のスランプに陥り、
「大リーグボール」を完成させて復活し、
また、ホームランを打たれてどん底に陥る。
彼のプロ野球人生は、まさにこれの繰り返しである。
「大リーグボール」なくして、彼の野球はあり得ないのだから、
常に新しい「大リーグボール」の研究を続ければいいのに、
勝っているうちは、そんなことも全く考えない。
この極端な性格では、どちらにしてもプロ野球界で
長くプレイすることは出来なかったであろう。
0か100かの極端な価値観。
これは、原作者・梶原一騎の価値観かも知れない。
「巨人の星」を読んで分かったことは、
このマンガは別に時代遅れなんかではない、ということだ。
歴史上、日本人がこれほど極端な価値観を持っていたことは無く、
そういう見方をすれば、どの時代の人間に見せたとしても、
「巨人の星」はどこかずれていて、時代遅れに映るだろう。

日本人の価値観に強い共感を与えながらも、
どこか乖離してしまっている価値観。
「巨人の星」は、過去・現在・未来を問わず、
永遠の時代遅れなのかも知れない。

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