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餅花

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By: ume-y

前回の「元旦登山」から下山して来た帰り道。

そのまま家に帰ってもよかったのだが、
折角、ここまで出てきたのだからということで、
帰りにスーパーマーケットに寄って帰ることにした。
山から下りてくるのに、4〜50分ほどかかったので、
時間的には午前8時ごろだろうか。
はたして1月1日のこの時間に、スーパーが営業しているのか
やや心配な所はあったのだが、実際にスーパーに寄ってみると
全く平日と同じように店は営業しており、
いつもと同じように、商品も陳列されていた。

あー、元旦の朝から普通に営業しているんだなぁ、
などと感心しながら店の中に入ってみると、
店員さんたちも平日と同じく、忙しそうに働いている。
まあ、店内のディスプレイはすっかりお正月一色になっていたが、
それ以外は、全く平日の店のままである。
今年の正月は兄弟たちも帰省してくる予定が入っていないので、
その気になれば、全くの寝正月を決め込むことも出来るのだが、
さすがに3が日のうちには、どこかへ初詣にでも出かけたい。
それでもまだ、時間は余るだろうから、
どこか近場の山へ行ってもいいかな……と思ったのだが、
よくよく考えてみれば、たった今、山から下りて来たばかりである。
少なくとも、今日1日ぐらいは、
家の中でおとなしくしていてもいいだろう。
どうせ家に帰っても暇を持て余すのだから、
ちょっと時間をかけて、このお正月の店の中を見て回ってもいい。
そういうわけで、暇つぶしの意図もあり、
いつもよりじっくりと時間をかけて、店の中を見て回ったのだが、
ちょうど生花売り場の前を通りかかったとき、
そこに、いつもは置かれていない商品が並んでいるのに気がついた。
ビニール袋の中に入った、カラフルな半球状の物体と、
束ねられた柳の枝である。

これは、一般的に「餅花」と称される、正月飾りの1つである。
この半球状のものをくっつけて球状にして、
これを柳の枝に突き刺していく。
完成形は、垂れた柳の枝に、いくつものカラフルなボールが
ついている様な感じになる。
自分などは子供のころから、毎年、お正月にこの「餅花」が
飾り付けられているのを目にして来たので、
てっきりこれは全国区の正月飾りの一種だと思っていたのだが、
調べてみた所、どうやらこれは地方によってやったり、やらなかったり、
あるいは名前や形などが違っているものらしい。
自分の地元である関西では、タイトル通り「餅花」と呼ばれているが、
関東から以北では「繭玉」と呼ばれ、形も球状というよりは、
蚕の繭の形に似せて作られているという。
正式には正月(大正月)ではなく、1月15日あたりの小正月に
飾るものであったらしいが、現在では正月・小正月の区別が
なくなってしまっている所が多いようだ。
1年の五穀豊穣や、蚕の安全を祈願して飾られるが、
国内での養蚕がほとんど行なわれなくなっている現在、
蚕の安全という意味合いは、実質、
消滅してしまっているといっていいだろう。

この「餅花」で調べてみた所、インターネット上には
「餅花の作り方」なるホームページが多く見つかった。
ただ、それらをよく見てみた所、
どれも餅を木の枝に巻き付ける方法が書いてあるだけで、
市販の「餅花」を木に飾り付ける方法が出ている所は、
全く見当たらなかった。
それだけで断言してしまうのは、ちょっとアレかも知れないが、
市販の半球状の「餅花」が販売されているのは、
意外とうちの近所くらいで、ほとんどの地方では、
出来合いのものを使わず、自分の所で「餅花」を
自作しているのかも知れない。
(ちなみに市販のカラフルな半球状の「餅花」は、
 モナカの皮のような素材で出来ている。
 モナカの皮自体も、餅を加工して作られているので、
 これもまた「餅花」としても、意味合い的に間違いはない)
これらの「餅花」の中には、左義長(とんど焼き)の火で
焼いて食べるというものや、ひび割れて落ちたものを
桃の節句までとっておき、
ひなあられの代わりに食べるというものもあった。

この「餅花」が、いつごろから飾られているのか、
ハッキリとしたことはよく分かっていない。
ただ、京都府木津川市にある相楽神社では、
「神功皇后が来られたとき、花に見立てたお餅を差し出して喜ばれた」
という言い伝えがあるそうだ。
これが「餅花」のことかどうか、いまいちハッキリはしないのだが、
これが「餅花」だとすれば、「餅花」はほぼ、神話の時代に近いころから
日本に存在していたということになる。
ただ、我が家にある古い百科事典で「餅花」について調べてみた所、
これについての記載は一切なく、「繭玉」についてのみ記載があった。
この百科事典は、昭和40年代に発刊されたものなので、
そのころには「餅花」よりも「繭玉」の方が
一般的だったということになる。
「餅花」が極めて古いことを示す言い伝えと、
半世紀近く前の百科事典の中に、全く記載がなかったという事実。
これでは、「餅花」というものが古いのか、新しいのかすら判別できない。
「繭玉」も含めて「餅花」ということにするのであれば、
それなりの歴史はあるようだが、
「餅花」自体は、どうもその出所がはっきりとしていない。
あるいは、半世紀前の時点で「餅花」というのは
すでに完全に忘れ去られていた言葉であり、
その後、「繭玉」に通じる古い文化として
「餅花」が復活したということも考えられなくはないのだが、
それらを裏付ける様な証拠は見つからなかった。

さて、正月飾りの中でも、そのカラフルさから特に目立つ「餅花」だが、
実際にこれを飾り付けている家庭というのは、それほど多くない。
どちらかといえば、個人宅の飾りに使われるというよりも、
商業施設などの正月用ディスプレイに使われることの方が多いようだ。
もともと「注連飾り」と「鏡餅」くらいしか、
正月飾りを用意しなかった我が家では、
全くこれまでに縁がなかった「餅花」なのだが、
よくよく思い返してみれば、うちの周りの家でも、
正月飾りに「餅花」を用いていた所は、ほとんど無かった。

そんなことから、例年、折があったら作って飾ってみたいなー、
などと考えているのだが、結局、今年も「餅花」を飾ることはなかった。
(まあ、元旦登山の帰りに店先で「餅花」を見つけても、
 もう、これを買って帰ろうという気にはならないだろうが……)
来年こそは、という気持ちもあるのだが、
多分来年になるころには、その気持ちも忘れて
また来年こそは…と、考えているかも知れない。

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