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マーラーカオ

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「パン」というものは、西洋のものである。

もちろん、この「パン」に類するものは世界中にあって、
厳密なことをいえば、「パン」=西洋というのは
ちょっと極論に過ぎるのだが、
現在、我々の身の周りで「パン」として認識されているものは、
そのほとんどが、西洋の「パン」か、それをルーツに持つものである。

日本のパン屋を覗いてみると、それこそ多種多様なパンが置いてある。
さらにスーパーやコンビニの棚を見ると、袋詰めされた工場製のパンが
大量に並べられている。
パン屋(ベーカリー)などで並んでいるパンは、
外国からもってきたような、本格的なものの他にも、
あんパンやクリームパンなど、日本で独自に作り出されたパンが
入り混じっている。
中には、パン屋が店オリジナルのパンを作り、置いている所もある。
一方、スーパーやコンビニなどで販売されているパンには、
外国からもってきたような本格的なものはほとんど無く、
そのほとんどが、日本で生み出されたり、
日本流にアレンジされたものばかりである。
ただ、この多種多様なパンのルーツとなっているのは、
そのほとんど全てが、西洋から持ち込まれたパンであり、
そこ以外から持ち込まれたパンというのは、
非常に珍しいものになっている。
今回取り上げる「マーラーカオ」というパンは、
その非常に珍しい、非西洋のパンである。

「マーラーカオ」は、中国風の蒸しパンである。
「蒸す」という調理技術自体、西洋では
ほとんど使われてこなかった方法で、蒸しパンそのものが
東洋的なものなのだが、そういう技術的な問題からか、
一般的なパン屋(ベーカリー)では、ほとんど作られることがない。
だから、この「マーラーカオ」を食べようと思えば、
パン屋ではなく、スーパーやコンビニへ行った方がいい。
数や種類自体は少ないものの、大手パンメーカーが
袋入りの「マーラーカオ」を製造しており、
ある程度の品揃えのある店であれば、きっとどこかに置いているはずだ。
形状は、紙製のカップで作られた茶色い蒸しパンで、
その表面にレーズンなどが乗っていることもある。
一袋あたり3〜5個ほど入っていて、
大体100〜200円ほどで購入することが出来る。
スーパーのパン売り場では、この「マーラーカオ」以外に
日本風の蒸しパンも置いているが、
「マーラーカオ」は、そのどれとも違った独特な色合いをしている。
(日本の蒸しパンも、基本の白、黒糖の茶、抹茶の緑、チーズの黄など
 様々な色をしている商品がある)
パッケージなども、「マーラーカオ」が中国のものであることを強調し、
ラーメン丼風の文様や、中国風のイラストなどが配されており、
「マーラーカオ」という名前も、漢字で「馬拉糕」と表記されている。
「馬拉(マーラー)」というのは「マレーシアの」という意味で、
「糕(カオ)」というのは「ケーキ」という意味になる。
直訳すれば「マレーシアのケーキ」。
……。
思わず、全然、中国関係ないやん!と、突っ込みたくなるが、
この「マーラーカオ」の由来には、2つの説があり、
そのどちらにも「マレーシア」が関わっている。

1つは、そのものズバリ、マレーシアから伝わったという説だ。
かつてマレー半島をイギリス人が支配していた時代、
彼らのアフタヌーンティーの時間に、このケーキが供されたという。
ミルクの代わりにココナッツミルクを使い、オーブンがなかったため
蒸し器で蒸し上げることによって、ケーキを完成させたらしい。
もともとはパンダン(?)の葉を加えた緑色のケーキだったらしいが、
どうやら中国に渡った際に、卵を強調した
黄色いケーキに変わったようだ。

もう1つは、もともと「マーラーカオ」は
中国の広東地方で作られたもので、その色合いが
マレーシア人の肌の色に似ていたことから、
この名前がついたというものだ。
しかし、基本的にマレーシア人もアジア人種であり、
その肌の色は日本人や中国人などを変わらない。
緯度が低いため、肌が良く焼けて褐色の人も多いというだけである。
恐らくこの説では、この褐色の肌の色に似ていると言いたいのだろうが、
それだと、第1の説の色とは、微妙に異なっていることになる。
(日本で見られる「マーラーカオ」の色からすれば、
 こちらの色の方が近いのだが)

いずれの説が正しいのかは、ハッキリとしていないが、
どっちにしても、これが中国南部から東南アジアにかけての一帯の内、
どこかで誕生したというのが、正しいようだ。
そして、もし、第1の説が正しいというのであれば、
「マーラーカオ」は、イギリス人が材料や器具に恵まれない中で、
本国で食べていたようなお茶菓子を求めたことが、その発端であり、
そこから考えてみると、ある意味これも、
西洋のパンをルーツにもっているといえるのかも知れない。

現在、「マーラーカオ」はベーキングパウダーなどの膨張剤をつかう、
無発酵の蒸しパンということになっているのだが、
調べてみた所、原初の「マーラーカオ」は
小麦粉、卵、ラード、バターを混ぜ合わせたものを、
24時間以上発酵させて作っていたようである。
現在の生地には欠かせない、砂糖の類が入っていないことからも
イギリスのティータイムに欠かせないパン、
スコーンとの類似も見られる。
これが後に、生地に砂糖・膨張剤を入れて、無発酵の生地を
蒸し上げるものへと変化していったようだ。

ただ、ここで1つ疑問が生まれる。
小麦粉・卵・ラード、バターなどによって作られた生地では、
これを蒸し上げてみた所で、現在のような茶色がかったケーキはできず、
精々が、やや黄色味かかった蒸しパンが出来るだけである。
どうして、これに茶色味がかかるようになったのか?
これはどうも、生地に加えられた砂糖に秘密があるようだ。
この生地に加えられた砂糖は、真っ白な砂糖ではなく、
ブラウンシュガーであったらしい。
ひょっとすると当時、真っ白な砂糖(上白糖)は、
一般的なものではなかったのかも知れないし、
あるいはイギリス人が食べていたスコーンの色に、
少しでも近付ける意図があったのかも知れない。
この茶色味を帯びた蒸しケーキというのが、
「マーラーカオ」の1つの定番みたいになってしまったのか、
これ以降、「マーラーカオ」は生地に黒糖やブラウンシュガーを混ぜた、
茶色味がかった出来上がりのものが大半を占めている。
(今回、自分がスーパーで購入してきた「マーラーカオ」の
 原材料表記では、普通の砂糖ではなく、三温糖が使われていた。
 この三温糖は、上白糖(白砂糖)を精製した残りの部分で、
 茶色味を帯びた砂糖である。
 さらに、原材料表記の中には醤油の名前もあり、
 自分が買ってきた「マーラーカオ」の茶色味は、
 三温糖と醤油によって、作られているようだ)

さて今回、記事を書くにあたって、「マーラーカオ」を一袋買ってきた。
5個入りで、160円ほどの商品だったのだが、
1個あたり200kcalオーバーと、なかなか高カロリーだ。
調子に乗って、パクパク食べていると、
あっというまにかなりのカロリーを摂取してしまうことになる。
くれぐれも食べすぎには気をつけよう。

さらに1つ追記。
原材料表記の上の欄を見てみると、そこには名称・和生菓子とあった。
さすがにここは、中華生菓子としておかないと、
中国からクレームが入るのではなかろうか。

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