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日本を代表する果物「柿」

更新日:

いかにも「日本」らしい果物といえば何か?ということを考えてみる。

リンゴ。

ミカン。

ブドウ。

イチゴ。

バナナ。

メロン。

現在、スーパーなどで日常的に販売されている果物はこんなところだが、

どれも「日本」らしさという点では、微妙なものが多い。

この中で、「日本」らしさを感じさせてくれるのは、

ミカンくらいであろうか。

季節的なもの、ということになると、いくつか候補が増える。

スイカや瓜などは、いかにも日本的な果物だが、

こちらは販売される季節が限定される。

季節が限定されていると、当然、果物に季節感が付属してくる。

この季節感を、イヤというほど感じさせてくれるのが、

「柿」という果物だ。

この季節、田舎を車で走ってみると、

あちこちに柿の木を見つけることができる。

どの木も、これでもかというほど大量の実をつけている。

ちょっとくすんだ感じのする、オレンジ色の果実は、

ほとんど収穫されないまま、枝をしならせている。

スーパーなどでは、この時期、青果コーナーの隅で、

申し訳なさそうに陳列されている、柿を見つけることができる。

できる。

…できる。

……できる?

こんな風に、思わず疑問系になってしまうほど、柿は目立たない。

実際、柿を扱っているコーナーは小さく、

店によっては全く扱いのない所もある。

扱っている所でも、白い食品トレーにのせられ、ラップをかけられて

ぞんざいに陳列されている。

その姿からは、木でたわわに実っていたころの活力は感じられない。

柿は、カキノキ科の落葉樹である。

原産地は東アジアで、日本では縄文時代や弥生時代の遺跡から、

柿の種が見つかっている。

文献上でも、「古事記」「日本書紀」に柿の記述があり、

奈良時代には、すでに広く流通していたようである。

「万葉集」の歌人の1人に、柿本人麻呂がいるが、

彼の苗字が柿本なのも、その家の庭に、柿の木が植わっていたからである。

いかに柿が親しまれていたのかがわかる。

ただ、このころの柿はすべて渋柿であり、

これを食べるには、干し柿か熟柿に加工する必要があった。

特に干し柿は、保存のきく甘味であったため、

他の果物(甘味)の無い季節では、貴重な嗜好品であった。

栄養的にも、ビタミンやミネラルを豊富に含んでおり、

「柿が赤くなると、医者が青くなる」

といわれるほどであった。

現在、広く食べられている、生で食べても甘い柿、

つまり「甘柿」が誕生したのは、1214年、鎌倉時代のことだ。

神奈川県川崎市で、突然変異によって生まれた。

現在では「禅師丸」と呼ばれている品種で、

これは世界最古の甘柿である。

これが16世紀、日本にやってきたポルトガル人によって、

ヨーロッパに伝えられ、そこからさらにアメリカ大陸に広がっていった。

柿の学名は「ディオスピロス・カキ」となっており、

これを直訳すると、「神の食べ物」という意味になる。

なんとも、大げさな名前がついたものだ。

日本に様々な南蛮文化をもたらした、大航海時代。

しかし、決して一方的に文化をもたらされていただけではなく、

その裏側で「柿」は、ヨーロッパへと進出していったのである。

江戸時代に入ると、品種も増えはじめる。

「御所」「蜂谷」「西條」「祇園坊」といった品種は、

このころから栽培されていたという記録がある。

現在でも、よく見られる品種だ。

明治時代末から昭和初期にかけて、農商務省によって分類された所によると、

柿の種類は1000種類にも及んでいた。

見た目は似たような柿でも、実に多彩な種類が存在しているのだ。

柿の語源については、諸説ある。

実が固いことから、「固き(かたき)」が変化したというもの。

実がつやつやと輝いていることから、「輝き(かがやき)」が変化したいうもの。

実が赤いことから、「赤き(あかき)」が変化したというもの。

「固き」というのは、熟してくずれるほど柔らかくなる柿には、

いささかしっくりと来ないものがある。

「輝き」にしても、そこまでテカテカとしているワケでもない。

この3つの中では、「赤き」がもっともそれらしく聞こえる。

「赤き実」が変化していき、「かき実」、「かきの実」となったのでは

ないだろうか。

秋口、軒下に干柿を吊るすのは、秋の風物詩である。

もっとも最近では、柿を干している家も少なくなった。

自分の家でも、昔はたくさんの柿を干していたが、

これを食べるのは婆さんだけで、自分の親世代でさえ、

これを積極的に食べようとはしなかった。

子供たちに至っては、見向きもしない。

かくして、長い間、柿がうちの軒下にぶら下がることはなかった。

ところがここ数年、干し柿を作り始めた。

敷地内に2本ある柿の木に、たわわに実った柿が、

グズグズにくずれて地面に落ちる。

もちろん、渋柿なので食べて減らすこともできず、

そのまま庭に、くずれた柿の実を放置していたのだが、

さすがにちょっともったいない気がして、いくつか収穫して干してみたのだ。

ちょっと作るだけのつもりだっただのが、

柿の実が予想以上に多く、結局60~70個ほどを軒先にぶら下げた。

ほんの一週間も置くと、水分が無くなり、渋みも無くなる。

表面が軽く乾いたくらい、まだ水分が残っている状態でかぶりつくと、

中はどろりとしたクリーム状で、とろけるようにい甘く、実にウマい。

このまま干し続けておくと、中の水分が完全に抜けて、

あのカチコチの干柿になるのだが、こうなってしまってはウマくない。

乾物にありがちな、ひねたような匂いもある。

年中、果物が食べられる現代、保存のためだけに干柿を作る必要もない。

柿をよりウマく食べる方法としての「半熟干柿」、

毎年、柿のなる、わずかな期間中にしか作れない甘味である。

庭に無駄に実を落とす柿の木があるのならば、作ってみるのも面白い。

ちなみに干柿を作る際、その皮を剥くのだが、

このとき、野菜用のピーラーを使うと恐ろしいほど作業がはかどる。

密かなお勧めだ。

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