世の中には、様々な戦いがある。
国と国が戦争をするのも戦いだし、
商店街とスーパーが売り上げを競うのも戦いだ。
スポーツもまたひとつの戦いだし、
小さな子供がケンカするのも戦いである。
戦いというのは、基本的には「勝ち」を目指すものだ。
もちろん、それだけが全てというわけでもないが、
最初から「勝ち」を目指さない戦いは、八百長だけだ。
戦いにおいて、何も考えず、
夢中になって戦うこともあるだろう。
しかし、大方の場合、勝負においては
勝てるように、勝負が有利に進むように考えながら
戦いを繰り広げる。
そうの勝つための戦法を「戦術」という。
今回はこの「戦術」について、書いていく。
実は「勝つ」ための戦術というのは、それほど多くない。
「勝つ」ための「戦術」というのは、たった3つだ。
戦争を例えにして、この「戦術」を挙げてみよう。
・敵の射程外から、敵より射程の長い武器で戦う
・敵より、多い兵数で戦う
・奇襲する
この3つだけだ。
え?たったそれだけ?と思われるかもしれないが、
これは事実だ。
この3つの「戦術」にしても、
必ず勝てるというわけではない。
勝てる確率が高くなる、というだけである。
それぞれの「戦術」で、
どれくらいの確率で勝つことができるのか、見ていこう。
・敵の射程外から、敵より射程の長い武器で戦う
理屈でいえば、この戦法を使う限り負けることはない。
敵の攻撃が届かないのだから、当たり前だ。
ただ、この戦法、負けることは無いにしても
必ず勝てるとは言い切れない。
これで勝てるのは、自分の武器が相手に効いている時だけだ。
もしこちらの武器の威力が弱く、
相手にダメージを与えられないのであれば、
負けることは無いにしても、勝つことも出来ない。
だからこの「戦術」、負けないことを勝ちとするのなら、
勝てる確率は100%である。
ただ、相手を倒すことを勝ちとする場合、
当然、これは100%勝てるとは言い切れない。
この「戦術」が、覿面にわかるのが、
戦艦大和の最後の戦いとなった、坊ノ岬沖海戦だ。
この戦闘において、戦艦大和は無数の航空機の
爆撃・雷撃により撃沈されている。
戦艦大和の最後を特集したTV番組などでは、
「戦艦」対「航空機」の戦いだった、と説明しているが、
これは坊ノ岬沖海戦の間違った見方だ。
この坊ノ岬沖海戦は、「戦艦」対「空母」の戦いなのだ。
「空母」に艦載されている航空機を、
「空母」の一部と考えた場合、空母の射程距離は、
航空機が爆弾を積んで、飛んでいける距離ということになる。
大和の主砲の射程距離は42kmなので、
航空機がこれ以上飛行することが出来るのなら、
「空母」は大和の射程距離外から、
一方的に攻撃できることになる。
そして、事実そうなった。
大和の主砲は、本当の敵である「空母」には届かず、
精々、敵の航空機を落とすことしか出来なかった。
航空機をいくら落とした所で、
本当の敵である「空母」には毛ほどのダメージも無い。
大和は自らの射程距離外から攻撃され、
「戦術」の上では、負けるべくして負けたのだ。
・敵より、多い兵数で戦う
これはもう、当然というか、当たり前のことだ。
この世の戦争のうち、ほとんどは兵力の多い方が勝つ。
いちいち説明するほどでもない。
「機動戦士ガンダム」において、
ドズル・ザビが兄であるギレンに、
「戦いは数だよ、兄貴」
と言っているが、これはひとつの真理である。
ただ、例外もある。
たとえば、日本の古い戦争などには多いのだが、
双方の兵力の少ない戦いの場合、
兵士個人の強さが、戦局を左右することがある。
しかし、兵力が多くなればなるほど、
兵士個人の強さは数に埋もれ、影響が少なくなる。
したがって、日本国内の戦争では、
意外と例外が多いのも、ひとつの特徴だ。
勝てる確率としては、90%というところだろうか?
・奇襲する
奇襲する、というのも勝てる「戦術」のひとつだ。
相手が油断していて、
全く予期していない所を攻めるのだから、
その攻撃効果は非常に大きい。
日本ではよく使われる戦法で、
この「戦術」の得意だった武将としては、
源義経や楠木正成が有名だ。
奇襲が使われた戦いで有名なものは、
やはり桶狭間の戦いだろう。
しかし織田信長は、桶狭間の戦いにおいて
奇襲によって大勝利を得たが、
以降は、奇襲戦法を使うことはほとんど無かった。
桶狭間以降の信長は、鉄砲を使った、
敵の射程距離外からの攻撃や、
圧倒的な兵力による戦いを、主な「戦術」とした
それだけ、この「戦術」には、
危うい所があるということだ。
というのも、奇襲作戦の場合、
それで決定的な勝利を収められなかった場合、
以降は奇襲作戦を読まれて、
ほとんど効果を出せないからだ。
桶狭間の戦いでも、今川義元を倒すという
決定的な勝利を得られなければ、
以降は、織田軍に全く勝ち目はなかったと思われる。
この悪い例が、太平洋戦争の日本とアメリカの戦いだ。
日本は初戦、真珠湾を奇襲して大成果を上げた。
しかしそれは決定的な勝利ではなかったため、
以降は自力で勝るアメリカに、
ジリジリと押し返されることになった。
日本軍はその後も奇襲に頼り、
特攻隊などの作戦を立てるが、
これもすぐに敵に対策され、
マトモな戦果を挙げることは出来なかった。
日本人は古来より、奇襲作戦を好み、多用してきた。
これがうまくいっていたのは、
日本の戦いは、少数対少数の戦いであり、
奇襲作戦によって、敵に決定的なダメージを
与えることが出来ていたからだ。
だから、強大な相手と戦う際にも、
同じように奇襲作戦に出てしまった。
この作戦に頼り切ったことが、
太平洋戦争の大きな敗因のひとつだったのだ。
この奇襲「戦術」、使い方には細心の注意が必要だ。
しかしその使用法さえ間違えなければ、
ほぼ70%は勝ちを収めることが出来るだろう。
さて、ここまでに挙げた、勝つための3つの「戦術」。
これは、何も戦争の場合だけでなく、
解釈を変えれば、商戦などにも応用できるだろう。
射程距離外からの攻撃、というのは、
相手の扱っていない商品、相手の商圏外で商売するなどと、
言い換えることも出来るし、
相手を上回る兵力というのは、
品数、在庫数、値段、サービスで相手を上回っていればいい。
相手に致命的なダメージを与える奇襲というのは、
商売ではなかなか難しい所だが、
状況によっては、何らかの手段がとれるかもしれない。
戦う上での「戦術」。
仕事であれ、なんであれ、勝負事の前には
しっかりとした、作戦を立てておきたいものだ。