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ぼっかけ

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ひと月ほど前、大手菓子メーカーであるカルビーから、
ポテトチップス鮒ずし味」なるものが、
11月13日から発売されることについて書いた。

カルビーでは、地元に根付いた、いろとりどりの特別な美味しさを
ポテトチップスとしてお届けする「JPNプロジェクト」を行なっており、
今回の「鮒ずし味」の発売も、その一環であるわけだ。
発売される地域は、それぞれの「味」の地元を含む地方限定で、
滋賀県の「味」として発売される「ポテトチップス鮒ずし味」は、
近畿地方のみでの販売となる。

あらかじめこの情報を得ていた自分は、
11月13日以降、スーパーやコンビニに出かけていくたびに
お菓子売り場をチェックし、この「ポテトチップス鮒ずし味」が
販売されていないかを確認し続けていた。
しかし、たつの市近隣にあるスーパーやコンビニでは、
一向にこれが入荷されることは無く、一体、いつになったら、
店頭に並ぶのだろうか?と、思っていた。
が、つい先日。
そのことを知っている友人から、市内のスーパーで
「ポテトチップス鮒ずし味」が販売されている、という連絡があった。
自分はその日のうちに、そのスーパーへと出かけていき、
「ポテトチップス鮒ずし味」を入手することに成功した。
期間限定の商品ということで、ちょっと割高だったりするのかな?
と思っていたのだが、実際に店頭に赴いてみると、
問題の「ポテトチップス鮒ずし味」は、
安売りワゴンの中に積み上げられており、
一袋の価格も78円と、通常のポテトチップス商品よりも
割安なくらいであった。
当然、早々に一袋を確保して、カゴの中に放り込んだのだが、
その安売りワゴンの中を見てみると、問題の「鮒ずし味」の他にも
もう一種類、地方限定のポテトチップスが積まれていた。
それが「JPNプロジェクト」兵庫県の「味」である、
「ぼっかけ味」であった。

以前、「ポテトチップス鮒ずし味」に触れた際には、
兵庫県の「味」は、まだ販売されていなかったのだが、
今回、「鮒ずし味」の発売と同じタイミングで、
兵庫県の「味」である「ポテトチップスぼっかけ味」も発売されたようだ。

さて、今回、兵庫県の「味」として選出された「ぼっかけ」。
しかし、これを読んでいる人の中には、
「ぼっかけ」って、何だ?と、思っている人もいるだろう。
「ぼっかけ」とは、牛すじ肉とコンニャクを甘辛く煮込んだものである。
神戸市長田区周辺では、これを特に「ぼっかけ」と呼び、
地域のB級グルメ、地元の味として、町おこしに活用している。
ただ、牛すじ肉とコンニャクを甘辛く煮込んだ料理については、
「すじこん」という名前で、存在しており、
こちらは関西各所で食べられている。
「ぼっかけ」の地元である神戸市長田区では、
戦後の食料不足の時期に、それまで廃棄されていた牛すじ肉を
美味しく食べる方法として考案されたといわれている。
(ただ、関西地方では、限定的ではあるものの
 明治時代から牛の内蔵・ホルモンが食べられていた。
 その経緯を考えると、牛すじ肉についても
 これ以前から食べられていたと考えるのが自然である。
 ホルモン食が、食料不足の戦後に一気に広まったのと同じく、
 すじ肉食も、同時期に広まったのではないだろうか?
 事実、牛すじ肉を使った「どて焼き(どて煮)」などは、
 戦前から食べられていたという記録も残っている)

牛すじ肉とコンニャクを煮込むわけであるから、
これを「すじこん」と名付けるのは理解できる。
問題は、どうしてこれを「ぼっかけ」と名付けたのか?である。
この点について調べてみた所、「ぼっかけ」というのは
「ぶっかけ」という言葉が変じたものだ、という話が見つかった。
早い話、「すじこん」を何かに「ぶっかけ」るから
「ぶっかけ」となり、それが変じて「ぼっかけ」になったというわけだ。
この説を信じる限り、「ぼっかけ」とは
もともとそれ単体で成り立っていたものではなく、
何か「ぶっかけ」られたものと合わさって、成立していたのである。
では、「ぼっかけ」は、一体、何に「ぶっかけ」られたのか?
現在、「ぼっかけ○○」として販売されている食べ物は、多岐に渡る。
そば、うどん、カレー、ラーメン、パン、オムレツ、お好み焼き、
焼きそば等々……。
これらの中で、パン、オムレツ、お好み焼き、焼きそばについては
「ぶっかけ」るではなく、混ぜ込む(内包する)という形がとられている。
そうなると、残るはそば、うどん、カレー、ラーメンだが、
戦後の物の無い時代に、カレーを作っていたとは思えない。
残ったのは、そば、うどん、ラーメンである。
時代的にいえば、ラーメンが現在の様に広く普及するのは
戦後のことなので、これも外していいだろう。
残ったのは、そば、うどんである。
これらはそれぞれ、上に様々な具材をのせて、
数多くの派生メニューが誕生している。
このうち、関西という場所柄を考えれば、
やはりこれはうどんの上に「ぶっかけ」られた、と考えるのが自然である。
(実際に、そういう話がいくつか残っていた)
……。
だが、ここで1つ、疑問を持つ人がいるかも知れない。
たしかにうどんやそばの上に、何かを「ぶっかけ」ることは多いが、
日本人が「ぶっかけ」るとなれば、
もう1つ、肝心な物を忘れていないか?
そう、ご飯である。
日本人は、様々な物をご飯の上にのせて、「丼」というものを作ってきた。
「すじこん」を何かに「ぶっかけ」るというのであれば、
まず何よりも、第1の候補に挙がってくるのは、ご飯ではないのか?
実際に現在では、「すじこん」をご飯に「ぶっかけ」た
「ぼっかけ丼」というのも、多くの店で提供されている。
どうしてご飯より先に、うどんに「ぶっかけ」られることになったのか?

実はこれも、戦後という時代が関係している。
戦後、日本人の主食であるコメの収穫量はしばらく回復しなかった。
そのため、米国は当時、自国で余っていた小麦を日本へと持ち込み、
これをコメの生産量回復までの食料にあてさせた。
(そのため、この時代ごろから、お好み焼きやたこ焼き、
 パン、ラーメンなどといった小麦を使った食品が
 急速に普及していくのである)
そう。
この戦後という時代、米がなく小麦が多かった時代だったからこそ、
「ぼっかけ」はうどんの上に「ぶっかけ」られることになったのである。
ただ、「ぼっかけ」がその名を知られるようになったのは、
もっと後になってかららしい。
一説によると、TVの番組で、神戸の商店街の食べ物対決というものがあり、
その際、長田の商店街は「(牛)スジのお好み焼き」を出したのだが、
どうもこれではインパクトが弱いということで、
「ぼっかけお好み焼き」として紹介されることになったという。
時系列的にいえば、

・「すじこん」がうどんに「ぶっかけ」られ、「ぼっかけ」になる。
・同じように「すじこん」が、様々な料理に混ぜられるようになる。
・TVで「すじこん」のお好み焼きが取り上げられた際、
 うどんで使われていた「ぼっかけ」がお好み焼きに冠された。
・以降、「ぼっかけ」というのは「すじこん」を指すことになった。

という感じだろうか。
「ぼっかけ」の名前を広げるきっかけになったのが、
「ぼっかけ」本来のうどんではなく、お好み焼きだったというのは、
なんともミョーな話である。

さて今回、兵庫県の「味」として選出された「ぼっかけ」。
兵庫県の中でも、かなり限定的な地域での「味」なので、
大方の兵庫県民にとっては、
あまり馴染みの無い「味」ということになる。
……はずなのだが、
牛すじ肉とコンニャクを煮込んだ「すじこん」自体は
それほど珍しいものでもないため、
意外とその「味」を知っている人は多いという、
面白い性格をもった「味」である。

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