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トロロを自分で作ったことはありますか?

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前回は、ジネンジョの見つけ方、
見分け方、掘り方などについて書いた。
今回は食べ方、つまりトロロ汁の作り方である。

ジネンジョを掘ってきた場合、これを食べなければならない。
もちろん、人にあげてもいいのだが、
余程、たくさん掘れた場合でないと、
人にあげようという気は、起こらない。

ジネンジョというのは、土から掘り出した状態では、
長時間、保存することが出来ない。
1~2日ほどは、まだしっかりとしているのだが、
3日目くらいからイモがヘタリ始める。
シャキッと固さのあったイモが柔らかくなり、
ともすれば、ヘナヘナになってしまう。
そうなってくると、擂り下しにくくなるし、風味も落ちる。
長期間、保存したい場合は、
乾燥を防ぐために、袋などに入れ、冷蔵庫の中で保存する。
うまくすれば、1ヶ月ほどは持つ。

このようにすれば、そこそこ保存のできるジネンジョだが、
やはり掘りたての新鮮なものを擂りおろし、
「トロロ汁」にして食べてしまうのが1番だ。
なんといっても、ジネンジョ掘りは心身共に疲れる作業だ。
この疲れは、やはりジネンジョで癒すべきだろう。

「あまり大きなイモが掘れなかった」
「細いイモしか掘れなかった」

ということもあるだろう。
しかし、それほど卑屈になることはない。
ジネンジョは擂り下ろすだけではなく、
それにダシ汁を加え、のばすことによってトロロ汁になる。
その過程を経ると、たったこれだけのイモから、
これほどの量が?と驚くほどのトロロ汁が出来る。
親指ほどの太さのイモが30cmもあれば、
3~4人ほどの家族であれば、1杯ずつくらいは、
トロロかけご飯が食べられるはずだ。

まずはイモを洗う。
掘り出したジネンジョには、たっぷりと土がついているはずだ。
ある程度は山の中でも落とせるが、
とりあえず一度、水洗いしなければならない。
ジネンジョの生えていた場所の土質によっては、
粘土質な土が付着している場合もある
そういう場合、くぼみなどに詰まった土は、
なかなか落ちにくい。
歯ブラシなどを使って、土を残さないように洗い落とそう。
洗う際、下手に力を入れすぎると、イモが折れることがある。
そんなことにならないよう、丁寧に優しく洗おう。

イモを洗い終わった。
ジネンジョの場合、イモから無数のヒゲが生えている。
土を落とした後は、このヒゲを取り除いていく。
よく、ガスレンジの炎でヒゲ根を焼く、と書いてあるが、
天然のジネンジョの場合、これが意外と難しい。
天然のジネンジョは凹凸も激しいので、
ガスレンジの火であぶるのも、微妙な加減が必要になる。
下手に長時間、火にあてていると、イモの質が変わってしまうこともある。
ちょっと面倒だが、手でつまんで取り除くのが、一番だと思う。

ヒゲを取り除いたら、いよいよ擂り鉢でこれを擂っていく。
あれ?
料理本などでは、皮を剥くと書いてあるよ、
という人がいるかもしれない。
栽培ものの太いイモなら、皮を剥いてもしっかりと身が残るが、
天然物のジネンジョの場合、細く凸凹していることが多い。
これの皮を剥けば、下手をすれば身が無くなってしまう。
天然物のジネンジョの場合、その皮は薄く、
擂り鉢で一緒に擂り下ろしたとしても、
食感を悪くするようなことはない。
ここは余計なことはせず、皮と一緒に擂り下ろしてしまおう。

イモを擂り下ろすといっても、
実際にやることは、擂り鉢の内側にイモを擦り付けていくだけだ。
このとき、イモの頭側(ツルに繋がっていた方)ではなく、
イモの尻側から擂り下ろしていこう。
というのも、ジネンジョの頭側は固く、
上手く擂り下ろせないからだ。
尻側から擂り下ろすと、少しずつではあるが、
確実に擂り下ろすことが出来る。
擂り下ろされたイモには、かなりの粘りがあり、
我々がよく目にするトロロ汁とは、
大きくかけ離れたものが出来上がる。
もっちんもっちんとしていて、まるでお餅のようだ。
このお餅のようなものを、すりこぎでさらに擂っていく。
これが結構な重労働だ。
擂り鉢の下に、ふきんか何かを敷いておかないと、
擂り鉢が動いて、作業がし辛い。
この状態で、丁寧に擂ることによって、
トロロ汁の出来上がりが滑らかになる。
ただただ、ひたすらにゴリゴリと擂っていこう。
ジネンジョには、確かに強いスタミナ増強効果があるが、
イモ探し、芋掘り、擂り下しと、体力を使う作業が続く。
真面目な話、全ての行程を1人でやるのなら、
使ったスタミナと、トロロ汁で得られるスタミナ、
プラマイゼロではないかと思う。

擂り鉢の中で、ジネンジョが滑らかなペースト状(というよりは餅状)
になったら、かねて準備しておいたダシ汁を加えながら、
さらに擂り続ける。
一度にダシ汁を加えると、ダシ汁の割合が多くなり過ぎ、
イモの風味が弱くなってしまうこともある。
あくまでもイモの風味を失わないように、
少しずつ、加減しながらダシ汁を加えていく。

ちなみにここで加えるダシ汁だが、
あらかじめ用意しておき、冷ましておかなければならない。
間違っても、作り立ての熱々のダシ汁を加えたりしないように。
前回にも書いたが、
ジネンジョのネバネバ成分である「ムチン」は、熱に弱い。
熱々のダシ汁を加えてしまうと、
この「ムチン」の効果が無くなってしまう。
ダシ汁には、醤油や味噌などを使い、
あらかじめ味付けしておこう。
その際、あまり濃い味付けにしすぎると、
イモの味がわからなくなってしまう。

少しずつ、少しずつ、ダシ汁を加えながら、
もちもちのジネンジョをのばしていく。
意外にもちもち感はなくならず、
我々の知っているトロロ汁にするには、
結構な量のダシ汁を入れないといけない。
だから、ちょうど良い柔らかさに調整し終わるころには、
トロロ汁はかなりの量に増えている。
ご飯にかけられる柔らかさになったら、
早めにダシ汁を加えるのを止めるのがコツだ。
まだダシ汁が残っているから……、
なんてことを考えながらダシ汁を加え続けると、
イモの風味よりも、ダシの風味の効いたトロロ汁になってしまう。
そうなってしまっては、もう元には戻せない。
ダシ汁の加え方には、細心の注意を払おう。

さて、無事にダシ汁を加え終わると、
ついに「トロロ汁」の完成だ。
後はこれをご飯にかけて、ズルズルとかき込むだけだ。
あまりお行儀の良い食べ方ではないが、
トロロかけご飯は、やはりズルズルとかき込むのがウマい。
熱々のご飯にかけられた、ひんやりとしたトロロ汁。
それを口の中に流し込むと、口の中一杯に、土の香りが広がる。
イモを掘っていたときに嗅いでいた、
あの山の土の香りだ。
「大地のフレーバー」とでも言おうか。
これだけは、他のものを食べても味わうことの出来ない、
まさにジネンジョだけの味わいである。

さて、効果の方についても、ちょっとだけ触れておこう。
「トロロ汁は、身体に精をつける」というのは、
よくいわれていることであるが、
ギンギンといきり立つということはない。
ただ、身体はポカポカと暖かくなり、
肌寒い秋の夜中にも関わらず、布団を蹴っ飛ばしてしまう、
……くらいのことである。
この辺については、個人差もあることだし、
詳しく書くことは避けよう。

ただ、自分がトロロ汁を食べるときは、
ジネンジョを掘る、トロロ汁を作る、
という重労働をした後でのことである。
疲れている身体でも、
それだけの効果があると言うことは……。

後は、各々がジネンジョを掘り、確かめてほしい。

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