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レバニラ炒め

更新日:

前回、地区の清掃作業が行なわれたことについて触れたが、
その日、友人と一緒に、餃子の王将へと昼飯を食べにいった。

メニューをパラパラとめくりながら、
何を食べようかと、頭をひねる。
友人の方は、チャーハンが食べたい、という欲求があったらしく、
早々に注文するメニューを決定していたが、
こちらの方は、何も考えていなかったので、
ひととおり、メニューに目を通すことになった。

この時期、中華料理チェーンのメニューの中には、
夏向けのメニューが登場し始める。
「冷やし中華」や「冷やしラーメン」などである。
そろそろ気温も上がり、夏日になることも多くなってきているので、
そんな日のランチには、この手の「冷たい」メニューというのは、
ピッタリくる。
実際、朝方に地区の清掃作業で草刈りをしていたときにも、
気温はドンドンと上がり、
思わず頭がボーッとしてしまうこともあった。
だから、そういう「冷たい」系のメニューにも、
気持ちが動いたのだが、何よりも肉体労働の後だったので、
身体はガッツリとした栄養を求めていた。
そこで目についたのが、「レバニラ炒めセット」である。
丸い皿の上に、薄切りにされた焦げ茶色のレバー、
鮮やかな緑色のニラ、白く太々しいモヤシ、
さらには、ほんの申し訳程度に
オレンジ色のニンジンの細切りが入っている。
いかにも、スタミナがつきますよ、という雰囲気がある。
いかにも、疲労回復しますよ、という雰囲気もある。
この「レバニラ炒めセット」には、ライスとミニラーメン、
それにお新香がついてくる。
迷わず、「レバニラ炒めセット」を注文した。

さて、ここまで「レバニラ炒め」と表記してきたが、
餃子の王将のメニューを見てみると、
「ニラレバ炒め」と印刷してある。
え?じゃあ、「レバニラ」は間違いで、
「ニラレバ」が正しいんじゃないの?と、思ってしまうが、
調べてみると、どちらが正しいというようなことはなく、
両方の呼び方が、普通に使われている。
本場・中国での呼び方は「韮菜炒猪肝」となっている。
この表記を見る限りでは、ニラの方が最初にきているようだが、
よくよく見てみると、これはニラとレバーを炒めたものではなく、
ニラを炒めたものと、レバーを合わせたもののように見える。
実はそれももっともな話で、
この「韮菜炒猪肝」という料理は、
ニラとレバーを炒めたものではなく、
油で揚げたブタのレバーに、
炒めたニラを合わせた料理なのである。
そういうことになると、「韮菜炒猪肝」と「レバニラ炒め」は、
微妙に違う料理ということになる。
レバーに片栗粉の衣をつけ、油で揚げて、
さらに別に炒めておいたニラをのせるというのであれば、
どちらかといえば、「酢豚」や「肉団子の甘酢あんかけ」の
調理方法に近いといえる。
しかし、毎回、レバーに衣をつけ、
油で揚げるというのは手間がかかる。
どうせなら、ニラを炒める際に、一緒にレバーも炒めて火を通せば、
「レバーを揚げる」というひと工程を、
まるまる省略してしまうことが出来る。
日本に「韮菜炒猪肝」を持ち込んだ人間が、
そういう風に考え、調理方法を改良し、
それが日本において、一般化したのではないだろうか?

……。
話がそれた。
「レバニラ」表記と、「ニラレバ」表記の話に戻ろう。
本場・中国での表記が「韮菜炒猪肝」であることから、
本来は「ニラレバ」と表記する方が、正しかったはずである。
では、どうしてアベコベである「レバニラ」表記が生まれたか?
インターネットで検索をかけてみると、
「ニラレバ」よりも「レバニラ」の方が、
ヒット数が多いほどである。
いつの間にやら、アベコベ表記である「レバニラ」の方が、
日本ではメジャーになってしまっている。
果たして、その理由は一体何なのか?
調べてみると、いくつかのサイトでこの理由について
述べられていたのだが、
それらは全て、1つのTVアニメを指していた。
「天才バカボン」である。
何故、「バカボン」?と、思われるだろうが、
これに出てくるバカボンパパの大好物が「ニラレバ炒め」であり、
それを彼が「レバニラ」と呼んでいたことから、
「レバニラ」というアベコベ表記が始まったというのである。
「天才バカボン」のオープニングでは、
「西から昇ったお日様が、東に沈む」となっている辺り、
赤塚不二夫は世間一般の常識をわざとアベコベにして、
それをギャグとしていたような節がある。
で、あるならば「ニラレバ」を「レバニラ」としたのも、
彼流のギャグだったのではないか?
「天才バカボン」の大ヒットにより、「レバニラ」という言葉が
日本中に認知されることとなり、
それはついに、オリジナルである「ニラレバ」をも
上回ってしまったのだろう。

「韮菜炒猪肝」が日本に伝わったと考えられるのが、明治時代。
ただ、それまで肉食ですら禁忌とされていた日本において、
内蔵を食べるという「韮菜炒猪肝」は、
あまり一般的ではなかったものと思われる。
日本において、「ニラ」は古来より存在しており、
これを食べてもいたのだが、それは食料としてではなく、
薬草として用いられることの方が、一般的であった。
また、「ニラ」の栽培にしても、
古来より行なわれていたのは確かだが、
傷みやすい性質のためか、
流通に乗って商品とされるようになったのは、比較的最近のことで、
それまでは、自家消費する分だけを、
それぞれの家庭で栽培(自生?)していたようである。
これが流通に乗って、どこの家庭でも
手軽に入手できるようになったのは戦後のことで、
すでにそのころには、肉食はもちろん、
ホルモンを始めとする内臓食についても
一般的になっていたため、
手軽に調理でき、栄養のある「ニラレバ」は、
日本中で食べられるようになっていったと考えられる。
やがて、「天才バカボン」がTVで放送されるに至り、
「ニラレバ」から「レバニラ」へと、名前の変遷が起こる。
もっとも、完全に名前が変わってしまうことはなく、
2つの呼び方が並立することになった。

さて、餃子の王将で注文した「レバニラ炒めセット」だが、
友人の注文した「チャーハン」よりも早く、
テーブルへと運ばれてきた。
これは、「レバニラ炒め」が「チャーハン」よりも
素早く調理できる、ということであろう。
よくよく考えてみれば、ニラもモヤシも
さっと火を通すだけで大丈夫な食材だし、ニンジンは極細切りだ。
レバーは、あらかじめ調味液につけ込んでおいたりと、
下準備があるのかもしれないが、薄切りにされているため、
火の通りは早い。
そう考えてみると「レバニラ炒め」というのは、
かなりスピーディーな料理でもあるのだ。
手早く作れて、栄養もある。

存外、「ニラレバ炒め」というのは、
現代向きの料理なのかも知れない。

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