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誤食

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5月に入ってから、「誤食」による事故が
ニュースで流れることが多かったように思う。

有毒な水仙を、ニラと間違えて食べてしまった。
有毒な水仙の球根を、ノビルと間違えて食べてしまった。
有毒なトリカブトを、シドケ(モミジガサ)と
間違えて食べてしまった。

特に、水仙とニラの間違いによる食中毒のニュースは、
何件も目にしてきた。
たしかに、水仙とニラは、葉の形だけを見ればよく似ている。
(もちろん、よく見れば形状は違っているのだが……)
我が家の庭にも、この2つが自生しており、
ニラの方はよく料理に使っているので、
あまり人ごとには聞こえない。

……。
いや、それって、お前もいつか誤食して死ぬんじゃないのか?
なんて風に思う人もいるかも知れないが、
ニラと水仙の違いはよく分かっているので、
間違えることは、この先も絶対無いだろう。
なんといっても、うちに自生しているニラと水仙では、
そのサイズが、全くといっていいほどに違っている。
うちの庭に生えているニラは、栄養状態が良くないのか、
背丈も低く、茎も葉も細く、
市販のニラの3分の1から4分の1ほどのサイズしかない。
それに比べると水仙は、背丈も市販のニラと同じくらいで、
太さも市販のニラの5〜6倍はある。
いくら形状が似ているとはいえ、
ここまでサイズの違っているものを、間違えるということはまずない。
さらにいえば、ニラの臭いは指に付着すると
まず半日は臭っているが、
水仙の方は、あの強烈な臭いが全く無い。
これでは、ニラと水仙を間違えろという方が無理である。

しかしこれは、ニラ、水仙の両方が身近に生えていて、
それに親しんでいる人間の場合だろう。
ニラについてあまり詳しいことを知らず、
あの強烈な臭いのことを知らなかった場合、
(果たして、そんな人がいるのかどうかは知らないが……)
ひょっとしたら、水仙を見て、
これをニラと間違えることもあるだろう。
「あら、こんな所にニラが生えているわ。
 やっぱり、野生のニラは栽培ものと違って、太くて、
 臭いもないのねぇ」
なんて風に思い込んで、水仙をせっせと集める、なんてことも、
全くあり得ないとは言い切れない。

ノビルに関しては、我が家の庭に自生していない上、
自分自身がこれを食べたことが、数回しかないので、
あまりはっきりとした違いを、示すことは出来ない。
しかし、ノビルの場合も、可食部である鱗茎部分には、
タマネギなどに似た独特の香りがあるので、
これを元にして判別するのが良いようである。

トリカブトは、非常に毒性の強い植物だ。
古くからトリカブトの毒の強さは知られており、
ミステリ小説などでも、これを用いて殺人を行なう話は、
数えきれないほどである。
食べて、数十秒後に死に至ることもある。
それだけ強烈なトリカブトであるが、
恐ろしいことに、これによく似ている植物というのは、
結構、数が多い。
「春の七草」としてよく知られるセリ、
草餅などに使われるヨモギ、
胃腸に効く薬草として、その名を知られているゲンノショウコ、
そして、よくトリカブトと間違えられる山菜、ニリンソウ。
これらは、時期によってトリカブトによく似た姿になるので、
うっかりと間違えてしまうこともある。
トリカブトといえば、「根」が有毒、と思っている人も
いるかも知れないが、実は「根」に限らず、
どこを食べても毒がある。
(ミツバチが集めた花の密にも、毒が含まれているほどである)
セリやヨモギなどは、比較的身近な野草として、
摘み草をして食べる機会もあるかも知れないが、
万が一にも、コロリと逝くことの無いように、
しっかりと事前の下調べをしておきたい。
ニリンソウなどは、山菜のことをよく知っている人と
一緒に採取する以外は、手を出さない方がいいだろう。

この他に、時折、間違えて誤食事故を起こす植物として、
ヨウシュヤマゴボウがある。
これは漢字で書くと「洋種山牛蒡」となり、
山牛蒡の一種である。
「ヤマゴボウ漬け」という漬け物もあるのだが、
実は使われているのは、山牛蒡ではなく、
普通の牛蒡や、モリアザミの根で、
山牛蒡自体は有毒なので、「ヤマゴボウ漬け」には使わない。
……。
じゃあ、なんでそんな紛らわしい名前を付けるんだ!と、
突っ込みたくなるが、どうもそういうものらしい。
「ヤマゴボウ漬け」があるんだから、
山牛蒡は食べられると、勘違いしてしまうと酷い目に遭う。
もちろん、これと同じようにヨウシュヤゴボウも、
牛蒡とよく似た「根」を持っているのだが、
これもまた、有毒植物なのである。
それだけならば、まだいい。
このヨウシュヤマゴボウ、
地中に牛蒡そっくりの「根」が伸びる他に、
地上部分には房状の、濃い紫色の果実がつく。
この果実が熟すと柔らかくなり、潰すと赤紫の果汁を出す。
色・形状的にはブドウに似ているのだが、
どういうわけか、これをブルーベリーと
間違える事故も起こっている。
改めて、ブルーベリーの写真と、
ヨウシュヤマゴボウの写真を見比べると、
「なんでこれを間違えるんだ?」というほどに、違っているのだが、
それでも誤食してしまう人がいるのである。
実を潰す→赤紫の果汁が出る→赤紫=アントシアニン
→ブルーベリー、という発想をするのだろうか?
ヨウシュヤマゴボウは、日本全国で雑草として繁殖しているため、
小さな子供が好奇心で手を伸ばしたりしないように、
大人が注意しておく必要がある。

先日、地区の清掃作業が終わっての帰り道、
どこかの畑を見ていて驚いた。
そこの畑にも、水仙とニラが一緒に生えてきていたのだが、
水仙は我が家のものに比べてグンと小さく、
ニラは我が家のものに比べてグンと大きかった。
早い話が、どちらもほぼ同じ大きさであった。
もちろん、葉のつき方などが違っているので、
ニラと水仙の見分けはつくのだが、
(で、なければ、その両者が混生していることにも
 気付かなかっただろう)
我が家の庭に自生しているものと違って、
ひと目でその違いを見分けるのは、なかなか難しそうである。
問題は、その2つが分けて植えられているのではなく、
混じり合うようにして生えてきていたのである。
恐らくは、水仙を栽培していた所に、
ニラが勝手に生えてきたものだと思われるが、
この畑から、ニラだけを選んで収穫して、と言われたら、
いくら両者の見分けに自信のある自分でも、
慎重にならざるを得ない。
1つ1つ、ニラを切り取っては、
臭いを確認することになるだろう。

この畑の持ち主は、間違ったりしないのだろうか?と、
考えてしまったが、もとより自生のニラを
わざわざ食べようとさえしなければ、
危険はしっかりと回避することが出来る。
ニラの方に収穫された跡がなかったことからも、
畑の持ち主は、危険を冒してまでニラを食べる気はないのだろう。

君子、危うきに近寄らず。
これこそが、「誤食」を避ける一番の方法であるようだ。

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